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弘益大清掃労働者、88万ウォン『老年』世代を見る

『非正規職』代案ない政府、高齢労働者雇用不安、低賃金代案もなく

ユン・ジヨン記者 2011.01.05 17:29

非正規職問題が青年と老年に限らず、全世代の問題に広がろうとしている。 2010年がドンヒオート、現代自動車、GM大宇などの非正規職問題で綴られたと すれば、2011年は弘益大学校清掃労働者の全員解雇が非正規職問題の最初の 信号弾になった。

すでに『88万ウォン世代』という青年非正規職の問題は社会的に公論化され、 弘益大事態は老年層まで『88万ウォン世代』に進入したことを如実に示した。 そのため今まで散発的に出てきた非正規職問題は、今や全世代の問題と認識さ れており、労働と社会に宿る憂鬱をさらに深めている。

貧しい老年の『生計型』非正規職雇用

非正規職アルバイトを転々とする青年労働者と同じように、老年労働者も雇用 不安を感じながら非正規職雇用を転々としている。2011年の元旦、すでに弘益 大学校所属の170人の清掃、警備、施設労働者が雇用を奪われた。その場は他の 労働者で埋められるが、追い出された労働者が別の仕事を見つけるのは容易で はないだろう。それだけ老年の雇用は限定され、老年を暮す人々は多い。

特に老年層非正規職労働者はほとんどが生計に責任がある。それでも賃金は低 く、労働環境は劣悪だ。弘益大清掃労働者も生計に責任がある人がほとんどだ。 2日に解雇通知を受け、座り込みに突入してから二日目。60代になる清掃労働者 たちは、自分たちの雇用を守るために地面で野宿して寝ている。生存のために 生計を立てる彼らにとって職場は切実にならざるをえないためだ。

「子供たちは早く結婚して、独立し、夫は酒が好きで金を使い果たし、今は別 に暮しています。弘済洞の貧民街で月貰部屋に一人住まいをしていますが、1か 月の部屋代は25万ウォンです。私は1か月75万ウォンを稼ぎますが、家賃、ガス 代、電気代を引けば食事代と副食代に35万ウォン程度が残ります。一日働き、 一日を暮らので貯蓄は夢に見ることもできません。」

弘益大清掃労働者のキム・ミョンジャ(仮名)氏は前途が暗いといった。60年の これまでの人生で、一度も安心したことない彼女だが、自分の生計も失う危機 に置かれたので心配は山のようだ。それでも一生貧しく暮してきたが、仕事を やめたことがないのでなおさらだ。今後の老後の対策も気持ちを暗くする。

「うちの事情がとても悪く、長男は小さかった時に大きな家に養子に出しまし た。息子には心の重荷があるので多くは望みません。末娘も中学校の時からア ルバイトで生計を立ててきました。こっそりお姉さんの住民登録証を持っていっ て働いていたんです。それでも今は自分の力で一家を切盛し、よく暮していま す。子供たちが来れば、お小遣もあげます。でもそれも限界があります。いつ まで働けるわからかず、金も貯めていないので苦しいです」

こうした事情はキム・ミョンジャ氏だけの特殊な状況ではなかった。キム・ミョ ンジャ氏の周辺の同年代は、ほとんど同じように生計を立てていた。特に50〜 60代の高齢の女性労働者ができる仕事は概して限定的だ。

「いや、周辺の友だちもみんな同じように働いています。ある友人はそれでも 事務職でしたが、用役会社から1か月に20万ウォン程度の仕事でした。本当に腹 立たしくて、やっていられませんよ。別の友人は私のように大学で清掃をして この前、H大学病院の介護人に替わりました。そこは清掃よりたくさん月給をく れるのですが、仕事はとてもきついです。そしてほとんどの友人は食堂の仕事 をしたり清掃をしたりしています。」

弘益大警備労働者のイ・ドンチョン(仮名)氏も警備の仕事をしながら一人で生 計を立てている。すでに60代だが、力が残っている限り仕事を続ける計画だ。 貯蓄も、誰の助けも受けられない状況で、その日その日の生存がイ・ドンチョ ン氏自身の手にかかっているためだ。

「やっていた事業が不渡りになり、警備を始めました。妻と娘は外国に出て、 ただ私が稼いだ金で一人暮しをしている形です。1か月に91万ウォン程稼ぎます が、月貰30万ウォンと各種の公課金、食費、タバコ代を払えば残りません。ギ リギリ暮らせますが、それでも働かなければなりません。周辺に事業が不渡り を出して、あちこちうまくいかず、野宿をする人々もたまにいますが、それで もそうして暮したくありませんでした。少なくとも自分自身が生きていくのに 必要な金は自分で稼ぎたいのです。弘大警備のおじさんの中には私のように、 月給でギリギリの生計を立てていく人は多いです。」

『老年層』の労働は『88万ウォン世代』の労働より苛酷だった

キム・ミョンジャ氏やイ・ドンチョン氏のように、自分の生計だけ責任を持つ 人がいるかと思えば、家族の生計にも責任のある人もいる。子供たちの大学の 登録金から生活費、家賃、税金、その上、子女結婚資金まで用意しなければな らない老年層の労働は、それこそ苦しみだ。もちろん家にいると退屈で出てく るという人もいたが、いずれにせよ彼らも『働けるまで働いて老後に備える』 と皆が話す。

だが一日10時間以上働いても、彼らが手に握る賃金は最低賃金にもならない。 弘益大清掃労働者の場合、1か月の賃金は75万ウォン、食費は一日に300ウォン が策定されている。1か月9000ウォンの食費は3月から支払われ始めた。

最低賃金にも至らない賃金問題を解決するために、労組は用役業者に賃金170% の値上げを要求した。だが学校はこれを受け入れず、逆に用役単価凍結を要求 した。公共労組ソウル京畿支部の関係者は、「労組が用役業者に賃金170%を要 求しても、実際に計算すれば時間当り5180ウォンにしかならない」とし「特に 用役会社が労組が提示した要求以外にも三つ程代替方案を学校側に要求したが、 すべて無視した」と説明した。

労働環境も劣悪だ。休む所もふさわしくなく食事ができず食事も十分ではない。 季節ごとに動員がかかり、その一方で解雇の威嚇に苦しむ。学校の教職員から 悲しい思いをさせられるのも日常茶飯事だ。

「本来食堂の仕事をしていました。一日12時間働いても休み時間もなく、年を 取ってつらくなり、こっちに(弘益大)に替わったのです。その時は1か月に二回 しか休めなかったんですよ。もちろんお金は食堂のほうが多く稼げますが、年 齢が60なのでからだがつらかったんです。それで清掃をして休みの日に町内に ある古紙を集めました。たくさん集めれば2万ウォンの金になりますね。

ところがそれももうできません。からだも痛くて時間もなくて... 考えてみれ ば食堂より学校のほうが時間をとられます。そして食堂はご飯ぐらいはちゃん と食べたのに、ここでは栄養不良です。汁やチゲもにおうからと、作って食べ ることができないので、水にご飯を入れて煮るのが汁の代わりです。おかずは キムチのようなものを家で包んできます。」

キム・ミョンジャ氏はこの前までは筋肉痛を病んできた。幸い鍼を打ってもら い治療したが、それでも体調が悪ければ、病院費を払うためにいつも心臓がド キドキする。だからご飯ぐらいはちゃんと食べたいが、環境がよくない。初め は何も知らずに魚を揚げてスープを煮て、所長から雷を落とされた。その後は 湯を沸かして汁代わりに食べ、おかずは家から持ってくる。仕事で感じるつら さは皆全く同じだ。

「1年に2回の真鍮磨きが一番大変です。水に洗剤を溶いて、手でゴシゴシこす るので、腕も痛くなって... 休む所はあるのですが、ただスポンジのようなも のを床に敷いて休む所です。私がここで働いて10年になりますが、当時の月給 は50万ウォン程でした。毎日毎日ただ働いて、もう10年がたちました...」

10年間、弘益大清掃労働者として働いてきたハン・ジョンスク(仮名)氏とイム・ ヨンスク(仮名)氏は、つらくて劣悪な労働を同じように感じていた。働いても 自尊心も持てず、憂鬱だ。特に警備労働者は、教授の引越荷物を運んだり下水 清掃、ゴミ清掃などの動員招集を体験し、生活の重さを実感していた。

「午後7時に動員がかかりました。教授が部屋を替わるので荷物を運べと。基本 的に引越荷物を運べと言うのなら、荷物を積んでおくものでしょう。それなの に、部屋をただ開けただけです。警備五人がそのまま物を持って運びました。 終わると夜11時20分頃でした。ところが仕事が終わると、その教授が警備員に 1万ウォン払うのです。私は警備も厳然な職場だと思って働いてきました。しか しとても自尊心が傷つきます。そうしてはいけないがトイレに入り、その金を 破って便器に捨てました。60の人生がとても佗びしくて...」

50代以上の2人に1人が非正規職

『非正規職』の代案ない政府、高齢者雇用対策もない

社会は青年求職者が『あふれている』と言う。退職した高齢層も急速に増加す る傾向だと誰もが話す。時には『世代交替』による老齢人口の雇用剥奪を話し、 社会の既得権勢力を確保した既成の世代を『鉄鉢』と非難したりもする。だが 彼らは社会の内外にあふれているのではなく、ただそこにいるだけだ。問題は 雇用市場の縮小と雇用政策のパラダイムが彼らを余剰化させていることだ。

政府が短期のインターン制だけを青年失業の代案に出しているのと同じように、 高齢層の雇用政策も不十分だ。昨年9月、保健福祉部は、『低出産高齢社会基本 計画』という高齢者雇用関連政策を発表した。この計画には転職支援奨励金制 度の改編による高齢者の転職と就職支援サービスの強化、高齢者雇用創出のた めの社会サービス雇用の充実と高齢専門担当者優先採用などが含まれている。

だがこうした高齢者雇用政策は、退職直後の労働者に焦点があわされている。 つまり清掃、看病、食堂などを転々とする脆弱階層の高齢労働者への代案がな い。低所得層の中高齢層雇用計画は、『低所得層就職成功パッケージ運営』だ けだ。また安定して持続可能な高齢者雇用の必要性を痛感しつつ、雇用安定の 対策が用意できずにいる。

その上、2008年から2010年まで、李明博政権は雇用創出事業に3兆ウォン以上を 投資したが、生まれた雇用は短期的な臨時職がほとんどだった。特に中、老年 の雇用で進められた雇用創出事業は、希望勤労プロジェクトと河川とゴミ浄化 事業、児童安全守備などだけだ。

雇用の質的な問題を別にしても、高齢労働者の雇用安定問題は、彼らの生計に 直接影響する。だが昨年9月、雇用労働部が発表した『労働市場動向分析』によ れば、50代以上の中高齢者の非正規職割合は48.2%になることが明らかになった。 全年齢帯の非正規職の平均割合が33.1%である点を考えれば、2人に1人の割合 で高齢の非正規職労働者が存在するのだ。その上、65歳以上の老齢者の非正規 職の割合は76.5%を記録した。

だが生計問題を解決するために労働を望む老齢人口は増えている。昨年の統計庁 の高齢層付加調査によれば、55歳から75歳までの高齢者のうち60.1%が勤労を望 んでいた。また彼らの56.8%は生活費など経済的理由で勤労を望んでいることが 明らかになった。

このように雇用を望みながらも、雇用不安、雇用不足、低賃金などに苦しむ高 齢労働者の問題は、88万ウォン世代の失業難を思わせる。昨年の初め統計庁が 調べた非正規職勤労者は549万8000人で、労働界は臨時職と日雇いを入れれば 800万人の非正規職労働者が存在すると見ている。今、非正規職、失業難、低賃金 の問題は、全ての世代の問題になっている。だから青年雇用問題、高齢者雇用 問題など、散発的に出される政策は、もう全世代的な『非正規職』問題を考え なければ解決できない課題になっている。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-01-06 10:15:25 / Last modified on 2011-01-06 10:15:26 Copyright: Default

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