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日ましに強まる中国のタクシースト

[闘う世界の労働者](6)中国タクシー労働者ストライキ

労働者運動研究所 2012.05.17 12:46

「一日12時間の運行時間のうち4〜5時間をLPG充填所に並ばなければならない。 そうでなくても収入が少ないのに、運行時間まで削られれば毎日の社納金220元 (約4万ウォン)と燃料費60元(約1万1千ウォン)、食事代20元(約3千6百ウォン)を 引けば何も残らない」。

メーデーだった5月1日、中国甘粛省の蘭州市で起きたタクシーストライキに参加 したあるタクシー労働者の言葉だ。蘭州市には6700台の許可されたタクシーが 運行しているが、ガス充填所は23か所に過ぎず、そのうち主要充填所3か所が 4月末から修理に入った。二日間のストライキには3000台のタクシーが賛同した。

▲ストライキで運行を中止したタクシー[出処:中国微博(ウェイボー)]

中国全域で起きるタクシー労働者のストライキ

今、中国ではタクシーストライキが日常になっている。昨年8月、浙江省杭州市 で大規模なタクシーストライキが起きた後、全国に広がったタクシーのストは、 落ち着くどころかバスのストライキと運送トラックのストライキにまで広がっ ている。今年だけでも、2月に四川省成都市と北京市でタクシーストがあり、 3月には四川省内江市と崇州市、浙江省温州市、山東省煙台市、甘粛省平涼市、 広東省汕頭市、4月には河南省開封市、5月には甘粛省蘭州市でタクシーストが 行われた。

2月27日と28日の二日間に行われた北京市のタクシーストは、現在中国で起きて いるタクシー・ストの性格をよく示す。26日、数人のタクシー労働者が中国版 ツイッターの微博(ウェイボー)にストライキを提案する文を載せた。タクシー 労働者の生計保障を要求し、運行を中断しようという内容の文は、あっという 間に広がった。次の日から行われたストライキには、北京市の営業用タクシー 6万5千台の60%以上の4万台が参加したという。中国国家発展改革委員会が2月 7日に消費者燃料価格を3.3%値上げする措置を取ったことによるストだった。 中国の燃料価格は2010年4月から約14%も上がったのに、北京のタクシー料金は 2006年から凍結されていた。

中国政府のタクシースト対応

主導者の一部が公安に逮捕されたが、北京市のタクシーストは中国当局の対応 を引き出す所期の成果をあげた。2月28日、中国の交通運輸部と人的資源および 社会保障部、全国総工会は共同で『タクシー業界の調和ある労働関係建設活動』 の規定を用意し、3月1日から施行すると発表した。この日に発表された規定は タクシー運転手の労働条件を改善するために、週1日の休業を義務化し、2年に かけてタクシー業界の慢性的な問題である駐車難と食事難、注油難、便所難を 重点的に解決するという内容と共に、現在の下請請負制の代わりに、通常の 労働契約による直接雇用制を推進し、社納金、社会保険、賃金、休息などを 労使が協議する団体交渉を強化する内容が含まれる。

しかし政府の対応は核心を避けていた。2人が一台のタクシーを共同で運行し、 24時間単位で交代する北京市の場合、休日規定は問題ではなかった。社納金と 運行料金をそのままにして一週間に一日を休めば、むしろ状況はさらに悪化す るのは明らかだった。会社と労働契約を結んでも、保証金を出して車両を貸り、 毎日社納金を払って運行する状況は同じだった。

▲公安に殴打された開封市の
タクシーストライキ労働者
[出処:中国微博(ウェイボー)]

その上、こうした措置の面目を失わせるように中国政府は3月19日に石油価格を 7%上げると発表した。2月7日に3.3%値上げして1か月半も経たない時だった。 政府は全国のタクシー労働者に300元ほどの補助金を支払うと明らかにしたが、 連続する燃料価格値上げの衝撃を挽回するには力不足だった。3月26日に四川省 内江市でタクシーストが起き、近くの崇州市でも二日間タクシーストが行われた。 27日には浙江省温州市をはじめ、山東省煙台市、甘粛省平涼市などでもストが 起きた。中国政府は公安を動員して強制解散を始めて暴力を行使し、ストに 参加する労働者と参加しない労働者の間でも衝突が起きた。

原油高と高物価、高い社納金そして不安な労働者の地位

中国では現在、全国に8千700のタクシー会社が100万台のタクシーを保有してお り、タクシー労働者数は200万人に達する。個人タクシーはなく、ほとんど会社 からタクシーを貸りて営業し、社納金を払う形で運営される。社納金の規模は 地域により異なるが、北京市ではおよそ一日200元(約3万6千ウォン)、杭州市と 蘭州市などでは一日220元(約4万ウォン)程度だ。タクシー労働者が社納金の他 にも燃料費と維持費、修理費をすべて負担しなければならない。

世界石油市場の不安定によるオイル価格値上げと中国の産業化、都市化による 物価値上げは中国タクシー労働者の生計に直接の打撃を与えている。全国的な タクシーストライキの出発点になった2011年8月の浙江省杭州市のタクシースト では、タクシー基本料金が8年間10元に凍結され、一日に使う燃料費は200元を 越えた。社納金などを除くとタクシー労働者の手取りは全収入の20%以下に過ぎ なかった。当時、2011年6月の中国消費者物価上昇率は前年同期比6.4%で3年ぶ りに最高値を記録し、14.4%上がった食品価格が物価上昇を主導した。タクシー 料金が凍結されている間、家賃は約300%上がった。

▲デモ行進をするタクシー労働者を公安が防いでいる[出処:中国微博(ウェイボー)]

中国のタクシー労働者は自営業者に分類され、労働者としての正当な権利さえ まともに享受できない。最低賃金保障と超過勤務手当てどころか、各種の社会 保障と福祉恩恵からも疎外され、労組設立でも差別される。

中国唯一の労組組織である中華総工会の地域組織は長い間、タクシー労働者の 労組設立を拒否してきた。企業の枠組みの中でのみ労組が設立できると主張し た。2008年に重慶市で大規模なタクシーストが起きた後、労組化推進の方向に 旋回したものの、相変らず直接雇用制への転換を前提としている。

中華総工会は2011年末現在、全国のタクシー業界の組織率は77.39%、労組加入 率は69.32%で、団体交渉は個別の都市ごとに行われていると明らかにしている。 また、2012年末までに全国タクシー企業の80%以上、省庁が所在する都市では 100%労組を組織する目標を提示した。しかし2011年8月の杭州市タクシーストの 時も、直接雇用に転換されないストライキ労働者は、相変らず労組設立を許可 しろと要求していた。

中国タクシー産業の雷管、タクシー免許

4月中旬、河南省の開封で1000人ほどのタクシー労働者がストライキを行った。 タクシー労働者は、鎮圧する公安に激しく抵抗し、多くの負傷者が出た。同月、 鄭州市ではタクシー労働者100人ほどが市庁前にタクシーを出して抗議デモを 行った。すべて地方政府がタクシー労働者に発給したタクシー免許を返却しろ と要求したことによるデモだった。

タクシー免許は中国の労働者にとっては最大の投資だ。一例として、開封市の タクシー免許は、1996年、車両と免許をまとめて19万8千元で交付され、四川省 成都市の10年分のタクシー免許は2002年に30万から40万元で取り引きされた。 中国が開放政策を始めた1980年代と1990年代には、タクシー運転が高所得職種 として人気が高く、大学教授職を捨ててタクシー運転になる人もいた。

10数年間、地方政府は個人に発給されたタクシー免許を回収する政策を固守し ている。回収されたタクシー免許は期間制契約方式で、一部の個人とタクシー 会社に配分される。労働条件が悪化したタクシー市場を規制するために、個人 よりもタクシー会社を通じた方が容易だという判断からだ。しかし、タクシー 免許回収の補償対策は提示せず、タクシー労働者の激烈な抵抗を呼んでいる。

タクシー免許の発給方式は、地方政府により異なる。温州市は少数のタクシー 運転手に永久免許を発給し、この免許を他人に貸す権限も付与した。この場合、 タクシー会社は事実上免許所持者の代理店になり、その契約関係の最後に実際 のタクシー労働者が置かれる。ほとんどが地方出身の農民工であるタクシー 労働者は収入のかなりの部分を代理店を通じ、または直接タクシー免許所有者 に支払わなければならない。温州市では2009年にタクシーストが起き、2012年 3月には連続して二回のタクシーストがあった。

タクシー労働者の闘争と政府の責任

中国タクシー労働者の苦痛と不満は極に達しているが、解決の道は見えない。 タクシー産業の規定や法規が地方政府により異なる上、それさえきちんと遵守 されずにいる。その中で、タクシー産業を規制しようとする政府の試みがむし ろタクシー労働者を刺激している。何よりも高物価と原油高が長期間続くと展 望され、タクシー労働者の苦痛はさらに加重しそうだ。

その上、労使政会議体制を通じ問題を解決することが急がれているが、現在の 中国タクシー労働者の立場を代弁する組織は明らかでない。全国総工会が直接 雇用制拡散を推進し、タクシー会社内に労組を設立して団体交渉をする体系を 作っているが、全国総工会に対するタクシー労働者の不信は小さくない。総工 会は自営業者に分類されるタクシー労働者を代表しないばかりか、これまでの 団体交渉でも大きな成果をあげられなかった。

中国のタクシー労働者はこの数年間、独自の抵抗運動を組織し、政府と使用者 側に自分たちの要求を示した。自主的に代表者を出す能力を見せ、政府や使用 者側と交渉する意向があることを明確にしてきた。問題は、中国政府とタクシー 会社がタクシー労働者を同等な主体と認めるかどうかだ。

特に石油価格とタクシー料金を策定し、タクシー免許の発給を管理し、タクシー 産業に関するすべての政策を主管する中国政府は、タクシー労働者の苦痛に 答える責任と義務が大きい。中国政府はタクシー労働者を堂々たる主体と認め、 協議にはいらなければならないだろう。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2012-05-17 17:19:58 / Last modified on 2012-05-17 17:24:48 Copyright: Default

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