衆議院選挙も最終盤ですが、この選挙の特筆すべき特徴は、大軍拡を強行している自公政権に対し、軍事費(「防衛費」)の削減を政策に掲げている政党(野党)が1つもないことです。
今年度当初予算の軍事費(防衛省予算)は7兆9496億円(前年度比16・5%増)で、10年連続過去最大(写真右は「防衛白書」に掲載された「防衛予算の推移」)。
一方、たとえば教育予算(文科省予算)は、5兆3,384億円(前年度比0.8%増)。いかに軍事費が異常に突出しているか分かります。
大学授業料の値上げが相次ぐ中、各党は一様に「高等教育の無償化」を政策に掲げています。しかし財源が不透明で、「各党は人気取りのため公約に盛り込むだけではなく、財源など具体的に明示すべきだ」(金子元久・筑波大特命教授、23日付京都新聞=共同)と指摘されています。
授業料値上げのほか、医療費の自己負担の増加、保険料の値上げなど、物価高の上の教育費、医療・介護費の増大で庶民の生活はいっそう逼迫しています。いまほど「軍事費を削って福祉・教育へ」の要求が切実なときはありません。
ところがそれを主張する野党がないのです。維新、国民はもとより望むべくもありませんから、他の野党について、「防衛予算」に関する政策を見てみましょう。
立憲民主…「防衛予算を精査し、防衛増税は行わない」
共産党 …「大軍拡をストップさせる」
れいわ …「5年間で43兆円の「軍事費倍増計画」を中止」
社民党 …「防衛力大増強に断固反対」
立民は「防衛増税は行わない」とするだけで、軍拡自体には反対していません。
共産、れいわ、社民はいずれも「大軍拡反対」で一致しています。
留意しなければならないのは、「大軍拡ストップ・中止・反対」とは、これからの膨大な軍拡(5年間で43兆円)に反対ということで、現在約8兆円に至っている軍事費の削減を要求・主張するものではないことです。今後の大軍拡に反対するのは当然ですが、それだけでは膨張している軍事費の現状を容認することになってしまいます。
とりわけ見過ごせないのは共産党の後退です。共産党は前回の総選挙政策(2021年10月11日発表)では、「大軍拡をやめ、軍縮へ転換します」としていました。「軍縮」とはすなわち軍事費の削減です。前回の総選挙で「軍縮」=軍事費削減を公約していた共産党は、なぜ今回それを降ろしたのでしょうか。
「軍事費削減」は福祉や教育の財源対策であるだけでなく、それ以上に日米軍事同盟による軍事国家化への道を許さず戦争をしない国へ根本的に方向転換することを意味します。
ガザやウクライナ、世界の紛争地域の現実の中で、日本の国政選挙が「政治とカネ・暮らし」一辺倒の内向選挙でいいのでしょうか。世界の平和実現へ視野を広げた選挙にするためにも、「軍事費削減」は大きなカギを握る主張です。