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【解説】9月15日から10月30日まで続いた全米自動車労組のビッグスリーに対する歴史的なストライキは終了し、11月にはいって三社ごとに全組合員により新協約の批准投票が行われた。11月中旬に三社とも批准されたが、批判票も多く、批准率はフォードとステランティスで68%、GMでは54.8％だった。レイバーノーツ誌はその創設者ジェーン・スロータ―が独立メディア「デモクラシー・ナウ」のエミー・グッドマンと10月31日に行ったインタビュー動画を掲載した。今回のストライキの意義を簡潔に紹介しているので、翻訳した。（レイバーネット国際部　山崎精一）＊毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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ジェーン・スローター『人生を一変させるビッグスリーの新協約』

問: ジェーン、デモクラシー・ナウへようこそ！今回の交渉結果について説明して下さい。

答：この妥結内容の実施には多額の資金が必要です。ビッグスリーで働く組合員の中で一番低賃金の臨時工、臨時工と呼ばれながら実際には何年も働いている人たちの、その生活を一変するような賃上げが実現します。現在時給17ドル、18ドル、19ドルの臨時工は、4年以内に時給40ドルを超えるようになります。全米自動車労組は低賃金の組合員の賃金を引き上げ、2007年、2009年以来、自動車産業の労働者を分断してきた極悪非道な二層賃金をなくすために大奮闘しました。

問：それはどうやって実現したのですか？

答：ストライキと組合員の組織化によってです。新執行部が本格的に発足したのは今年の3月下旬でしたが、すぐに、組合員をこれまでにない形で運動に参加させ始めました。ストライキを行う意思があること、賃上げのために闘う用意があること、長年にわたって続いてきた差別と闘う用意があることを企業に知らせることに着手しました。そのため、組合員は訓練ピケッティング（注1）に取り組みました。工場の外でデモを行い、工場内では全員が赤いシャツを着て、経営陣に対して「私たちはここで団結している」という意思表示をしました。(ストライキに入る前から)組合員が組織化され、自分たちの気持ちを企業に伝えるというのは、全米自動車労組では本当に前例のないことでした。

問: ショーン・フェイン会長とはどんな人物ですか？この新執行部がどのようにして権力を握ったのか説明してください。

答：はい。このようなことは旧執行部の下では起こらなかったでしょう。全米自動車労組の以前のトップは非常にひどい腐敗で捕まった。2人の会長を含む13人が、横領やその他の犯罪、会社側との無節操な取引で刑務所に入れられました。そして連邦政府が介入し、旧体制のように厳重に管理された組合大会でトップリーダーを選ぶのではなく、組合員がトップリーダーを直接選べるようにするか、組合員が決定する機会を与えた。そうして、組合員がトップ役員を選ぶ権利を得たので、組合員たちはこの新しい候補者リストを選出しました。

この候補者リストはUAWD（Unite All Workers for Democracy）と呼ばれ, 役員を直接選挙で選ぶ権利を獲得することを目的に、2019年に結成されたものです。UAWDは執行委員会に過半数の7人の候補者を擁立し、全員が当選しました。そして、過半数を占めたことにより、物事を上から変え始めることができ、組合員にも下から変えていくよう促すことができたのです。

問：このストライキで採用された戦略、スタンド・アップ・ストライキ（注2）について話してもらえますか？

答：ええ。これは企業側の不意をつく戦略でした。そして、それは完璧に決まりました。私には、経営側がこの新しい戦略にどう対応すべきか見当もつかなかったように見えました。経営者は非常に儀式的で儀礼的な交渉のプロセスに慣れていて、毎回同じでした。しかし今回は、ショーン・フェイン会長は「次に何をするかは知らせない」と言い渡したのです。

それで、どの工場でストライキが行われるかは誰にも分からないようにしました。最初は3つの工場だけで、それから小さな施設でのストが続きました。そして毎週、新しい工場が追加されていきました。企業が協力的で、交渉の席で実際に譲歩していれば、その週は追加ストライキから免れます。しかし、非協力的であればストライキが拡大されます。そして終盤になると、組合は最大の武器を取り出し、最も収益性の高い工場をストライキしました。

問：協約の批准投票はいつ行われるのですか?

答: 投票が行われるのは2週間か3週間先でしょう。

問: テスラ社のような組織化されていない企業はどうなりますか？

答: テスラではすでに組織化委員会が存在すると発表されました。全米自動車労組はもちろん、テスラだけでなく、現在存在する他の多くの未組織の自動車工場も組織化したいと考えています。ご存知のように、トヨタ、メルセデス、BMW、日産、その他多くの自動車工場が、主に南部で操業しているが、これらの工場はすべて未組織です。そして今、これらの労働者がビッグスリーの新協約の中身を知れば、全米自動車労組に加入する大きなインセンティブが生まれると思います。

注1）ストライキの際に行われるピケティングやデモ・集会などの練習をストライキ前に行ってスト準備態勢を築く行動のこと。

注2）1936年から1937年に掛けてGMのフリント工場で工場占拠のシットダウン・ストライキを敢行してUAWは組合承認を勝ち取り、初めての協約を勝ち取った。この歴史的なシットダウン・ストライキを念頭に、今回のストライキ戦術はスタンド・アップ・ストライキと名付けられている。