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LNJ Logo 米国労働運動:職場復帰を実現する方法/スターバックス労働者のたたかい
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【解説】レイバーノーツ3月号は、不当解雇と闘い職場復帰を勝ち取る重要性を取り上げた記事を掲載している。テネシー州メンフィス市で組合の組織化活動をしたため解雇された7人のスターバックス労働者が、昨年9月に全国労働関係局の職場復帰命令を勝ち取った。ニューヨーク市では条例により正当な理由のない解雇を制限する運動が進んでいる。「解雇自由」の国、アメリカでの解雇制限を求める動きとして注目される。(レイバーネット国際部 山崎精一)*毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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職場復帰を実現する方法

 2023年2月16日 ジェニー・ブラウン


 2022年9月に職場復帰を勝ち取ったメンフィス市の7人のスターバックス労働者たち

 数日後に、オースティン・ロックは7ヶ月前に解雇されたニューヨーク市クイーンズのスターバックス店舗に職場復帰する。そして、高額のバックペイと、民事上の罰金も手に入れるだろう。

 ロックはこの店で労働組合の組織化活動に参加していたため解雇されたのだが、その復職は全国労働関係局から命令されたのではない。ファストフード店での正当な理由のない解雇を違法とする2021年の市条例に基づいて、ニューヨーク市の消費者・労働者保護局(DCWP)が命令したものだった。

 DCWPのマイケル・ランザによると、ファストフード労働者を保護する2017年公正労働時間法と2021年正当事由解雇法により、230件の調査を行い、2万100人以上の労働者に罰金と返還金を合わせて約2710万ドル(約27億円)が支払われた。(メキシカン・フードの)チポッレ社は9月に2,000万ドルを支払った。

 現在、市議会は雇用保障条例を制定することにより、正当な理由のない解雇を違法とする雇用保障をファストフード産業以外に拡大することを検討している。イリノイ州では、労働組合と労働者センターの共闘が、同様の法律を州全体に制定するよう働きかけている。提案されている法律では、一時解雇に対する手当も規定されている。

 米国では労働組合との労働協約がない労働者のほとんどは「随意雇用被用者」とみなされ、ほとんどどんな理由でも解雇できる。

 ただし、いくつか重要な例外がある。それは人種差別、性差別、または年齢差別により解雇することは違法である。労働法はまた、労働条件を改善するために同僚と一緒に団体行動を行っている労働者を解雇すること禁止している。しかし、雇用主が労働者の髪型や態度が気に入らないという理由で合法的に解雇できるような仕組みの下で、雇用主の意図が(差別的あるいは組合弾圧目的だと)証明することは困難である。

 全米雇用法プロジェクト(NELP)のポール・サンは、「解雇に正当な手続きを要求する正当事由解雇法があれば、米国は世界の他の地域に追いつくことができるだろう」と語る。「カナダの多くの州、英国、メキシコ、コロンビアでは、解雇には正当な理由と事前通知が必要で、通常は解雇手当が保証される制度がある」。NELPが行った調査では、アメリカ人の3分の2が労働者を保護する同様の法律があるべきと考えている。

 正当な事由による保護が適切に実施されれば、すべての労働者が危険な労働条件、セクハラ、いじめ、スピードアップ、賃金未払などに立ち向かうための保障を得ることができる。

 しかし、ニューヨーク市の条例は、組合を望む労働者にも役立つ可能性があることを示している。「役に立つ」とロックは言う。「解雇しようとする企業と闘うために、あらゆる種類の手段を使用する必要がある。」

 ロックは、職場の暴力を偽って報告したことと、COVID19感染対策に一部違反したとして解雇された。最初の告発についてはビデオによって正当性が証明され、2番目の告発について他の従業員も違反していたが誰も問題にされていない。

 不当解雇の申立の手続きは簡単だった。書類を提出すると、あとは市がやってくれたそうだ。スターバックスはロックを他の店舗に配転しようとしたが、彼はそれを拒否した。その後、スターバックスは最終的に和解した。和解の一部として、全国労働関係局に対する不当解雇の申立は取り下げられた。

解雇戦略

 スターバックスの経営側は、2021年12月にニューヨーク州バッファローで始まった組織化の過程で、200人の労働者を解雇した。これまでに労働者は360店舗で組合認証を申請し、285店舗で勝利している。

 バッファローのバリスタで、現在は組織化キャンペーンを支援する全米サービス従業員労組(SEIU)傘下のワーカーズ・ユナイテッドで働いているケイシー・ムーアによると、スターバックスはすぐに労働者の解雇を開始したわけではない。しかし、組織化の波が始まってから3ヵ月後、経営側は「ああ、これは大変だ」と気づき考えた、と彼女は言う。「よし、この労働者たちを解雇することにしよう。法律的に問題になっても、労働者を震え上がらせる方が利益になる。」

 2022年2月8日、テネシー州メンフィス市のスターバックスのマネージャーは、7人の労働者を個別ミーティングに呼び、さまざまな口実で全員を解雇したが、そのうちの1つは、彼らが店内で記者会見を行ったというものだった。7人のうちの一人、ベト・サンチェスは、非番のときにマスクをしなかったのも解雇理由だと告げられた。しかし、規則は勤務中にのみマスク着用を要求している。 メンフィス市の労働者たちは、その3週間前のキング牧師誕生記念日に組合結成を宣言していた。この解雇は、組織化委員会の過半数を解雇することで、組合結成を阻止しようとしたものであった。 しかし、それはうまくいかなかった。スターバックスは新しい従業員を大量に採用したが、新規採用者も組合を支持し、組合は認証選挙で圧倒的な勝利を収めた。

 「完全に裏目に出た」とシフト・マネージャーのサンチェスは言う。「スターバックスは私たちを解雇して火を消し、従業員を脅そうとしたが、反対にさらに組織化するように刺激してしまった。」 7人が解雇された直後に、遠くの店舗で「メンフィス市の7人を復職させろ」という看板を持って、管理職に抗議したり、ストライキを打ったりする労働者の写真を見た、とサンチェスは言う。

 他の解雇事例は、組合が勝ったかどうかにかかわらず、組合認証の投票後に行われた。バッファロー市のイースト・ロビンソン店のシフト・スーパーバイザーであるビクトリア・コンクリンは、自分の店が組合認証を勝ち取った一週間後の6月22日に解雇された。ある朝、6人の同僚がコロナ感染して欠勤したとき、彼女は職場放棄を宣言した。当初、彼女の上司は店を閉めることを許可していたが、その後、撤回し、携帯電話による注文を受けるようを要求した。経営側は、コンクリンは数週間前に一度、30分遅刻したので解雇したと主張した。遅刻の原因は、早番が多く、夜に閉店し、翌朝に開店する連続勤務が多くて疲れていたからだ、と彼女は主張する。彼女は何度も別の勤務スケジュールを要求したが、拒否された。

 コンクリンは、解雇から9カ月後の4月中旬に全国労働関係局の審問を受ける予定だ。こんなに遅れたのは、スターバックスが「あらゆる手続きで組合側に抵抗して戦っているからだ」とムーアは言う。

時給15ドルへの闘いから生まれた

 ニューヨークの公正事由解雇法はSEIUが提唱し、時給15ドルを求める闘いから導かれたものである。ニューヨークのファストフード産業は現在、時給15ドルを支払うことを義務づけられているが、依然として不安定な勤務スケジュールを労働者に強い、賃上げのメリットが帳消しになっている。

 このような不安定勤務をなくすために、SEIUの巨大なローカル32BJはファストフード労働者と協力して、2017年に市の公正労働時間法を制定させ、勤務スケジュール変更の2週間前通知と、それに違反した場合の割増賃金を義務づけた。サンフランシスコやシアトルでも同様の法律が施行されている。

 割増賃金の効果は大きい。例えば、法律では1週間以内に勤務時間短縮の通告を受けた場合、45ドル支給される。夜に閉店し、翌朝に開店する連続勤務には100ドルの割増金があり、そのシフトを拒否することもできる。9月にチポッレは、同法に基づく労働時間違反で、ニューヨークのチポッレの労働者1万3000人に2000万ドルを支払うことで合意した。同チェーンの労働者は、ローカル32BJの支援を受けて組織化活動を進めている。

 2021年に成立したファストフードの正当事由解雇法は、労働者がスケジュール管理権や割増賃金を要求できるよう、支援をすることを目的としていた。また、公正労働時間法の抜け道である不本意な労働時間の短縮に対する罰則も規定されている。

 正当事由解雇法では、30日の試用期間を過ぎたら、警告、改善の機会、再教育を受けた後でなければ解雇できないことになっている。(労働者が同僚や公共の安全を危険にさらす場合には、例外がある)。また、解雇が不当なものであった場合は、バックペイを得て復職させることができる。

 「復職は、これらの法律を組織化に役立てるための鍵だ」と、長年正当事由解雇を求めて闘い、現在は「組合民主化を求めるチームスターズTDUで活動しているランド・ウィルソンは言う。

 モンタナ州は、正当事由解雇法がある米国唯一の州である。この州では不当に解雇された労働者は、最大4年間の賃金返還と訴訟費用の回収を勝ち取ることができるが、「復職した事例がないので、この法律はそんなに強いものではない」とウィルソンは言う。「解雇された人を職場に復帰させることができれば、組合に対する印象は大きく変わるだろう」とウィルソンは言う。

復職の力

 昨年9月にメンフィス市の7人が復職を勝ち取ったとき、その力は遺憾なく発揮された。スターバックスの行為はあまりにひどいので、全国労働関係局は、この事件の審理が裁判所で継続している間にも、復職を命ずるよう裁判所に求めた。

 「スターバックスの泣き言に耳を貸さず、全国労働関係局が真剣に取り組んでくれていることがうれしい」とサンチェスさんは言う。7人の賃金返還請求はまだ係争中である。

 7人が復職したとき、他の店でも不当解雇の申立が急増したとサンチェスは言う。

 サンチェスは、スターバックスの店舗と同じように、全国労働関係局も人手不足で、それが遅れにつながっていると指摘する。それでも、裁判はどんどん進んでいる。「少しずつだが、裁判は進んでいる。それぞれ裁判の日程が決まっている。全員が仕事を取り戻せるよう、ただひたすら準備を進めている」。

 バッファロー市のコンクリンは、もし全国労働関係局が良い決定を出し、職場復帰の機会が与えられれば、「必ず戻ります」と言った。「私は辞めません、あなたには止めることはできない、と会社側にはっきりと言ってやります。」


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