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豊かに文化的に人が学ぶこと〜映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』を観て

堀切さとみ

 2月11日、埼玉大学で『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(フレデリック・ワイズマン監督)を観た。埼玉大学ダイバーシティ推進センター主催。4時間近い上映の後に設けられた、感想意見交換にも参加した。

 映画は、図書館という場がいかに公共に開かれたものであるべきか。その無限の可能性を追求する人々を描き出していた。

 知りたいと思う市民の相談にのる司書。中国人を相手にパソコンを教える職員。講演会を立ち見する人々の、知的好奇心に満ちた表情。

 ニューヨーク公共図書館は4つの研究図書館と、地域に密着した88の分館があり、その中には「黒人文化研究図書館」「舞台芸術図書館」「点字・録音本図書館」などもある。自宅にネット環境がない市民、ホームレス、若者にどう応えていくか等、いくつもの討論の場面が映し出されていた。

 映画の後の意見交換では、20名ほどの参加者ひとりひとりが感想や自分の問題意識を語った。埼大ОB、現役の学生が多かった。それを聞きながら、なぜ図書館があるのか。その根底から考えさせられた。人は生涯かけて何かを学ぶ。それを支える社会教育の場であること。すでにそこに参加している人たちの話は、短いながらも興味深いものだった。

 日本の図書館はアメリカからの要請で始まったということも初めて知った。長く「無料貸本屋」のイメージが続いたが、ここ数年で随分変わって来たこともわかった。そして「図書館は人が集まる場でなければならない」という話に、深く共感した。

 私は学校教育現場が閉塞する中で、社会教育の現場が多様性に向けて開かれていることに感動したこと。その一方で、コロナ禍での一斉休校時に図書館が閉館になったのは残念だったことを話した。実は日本だけでなく、海外の図書館はもっと厳しかったことを知った。図書館協会でも議論になったが、感染防止を最優先にしたということだ。

 図書館は今、指定管理者制度が導入されて、人件費が削減されている。公共の場を担う職員の大半が非正規であることの問題は、ここにも表れていた。

 軍事費を増やして人殺し教育に金をつぎこむのでなく、豊かに文化的に人が学ぶことに、国は関心を持ってほしい。

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(付記)

 この企画で講師を務められた埼玉大助教授・渡辺志津子さん(図書館司書・図書館情報学修士)から、以下のご指摘をいただきました。筆者のあやふやな記憶を補足、修正してくださり、心から感謝します。

「日本の図書館はアメリカからの要請で始まったということも初めて知った。」についてですが、所謂、一般公共図書館(誰でも入れる、使える)の設置がアメリカの意向であったということです。  埼玉県立図書館も含め、全国には明治時代から由緒ある公共図書館が複数ありました。しかし、それらは誰でも使える図書館ではありませんでした。  天皇制を振興し、無駄な敗戦を迎えたのは、一般市民が自由に書物を読めず、幅広い知識を得られなかったということに大きな原因があるとアメリカは考え、公共図書館の設置振興を急ぎました。

「長く「無料貸本屋」のイメージが続いたが、ここ数年で随分変わって来たこともわかった。」についてですが、ほんのちょっと前まで、昭和30年代でも練馬区立図書館も含め、有料利用でした。それを無料にし、誰でも使えるようにしたのは日本ではそれほど遠い昔ではありません。

 ただ、これも諸処問題があり、映画の中でも示されていましたが、英語圏の図書館では督促課金は「普通」です。日本の公共図書館は、入場料を取らないだけでなく、督促課金もありません。果たしてこのままで運営が出来るのか?というのはここのところ問題になっています。


Created by staff01. Last modified on 2023-02-25 10:48:31 Copyright: Default

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