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【解説】レイバーノーツ誌2月号は前月に続いて労働組合が認められていない職場でも労働組合運動を進める戦略について報道している。それは「未多数派」組合と呼ばれる戦略であり、「少数労働組合主義」や「連帯ユニオニズム」とも呼ばれている。職場で労働組合員が少数派であっても諦めず、多数派を目指して組合活動を続けようとする積極的な運動である。アマゾン社やスターバックスでの大胆な組織化活動がその実例である。原語は "pre-majority”unionism で、少数派であることに甘んじずに多数派を目指そう、とする意味が込められていると感じて、あえて「未多数派」組合戦略と翻訳した。(レイバーネット国際部 山崎精一) *毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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組合オルグを待たずに、自分で組合を作ろう!
「未多数派」労働組合の勧め

 コレット・ペロルド/ エリック・ダーンパック(2023年1月30日)


*公務員労働者の団交権を否定しているノースカロライナ州で立ち上がりUE労組ローカル150を結成したシャーロット市従業員たち。賃金引上げと不当解雇撤回を勝ち取った。

 組合認証選挙に勝っても、労働協約を締結するまで道のりは長い。組合認証選挙に負ければ、労働者は闘いが終わったと思うかもしれない。

 しかし、組合認証選挙に勝っても負けても、あるいは選挙は遠い先の話であっても、あらゆる職場の労働者は、今ここで労働組合のために闘い、要求を勝ち取ることができる。これは「未多数派」組合戦略と呼ばれる戦略であり、緊急職場組織化委員会(EWOC)はこの戦略を広めるための組織である。

 組合認証選挙や労働協約の締結が全く見込めない場合、その職場の労働者を支える資源を持たない既存の労働組合はその労働者たちを無視することが多い。しかし、そういう労働者たちの組織化を続けることが、労働運動の成長を助けるための鍵であると考える。

 すぐに正式な組合認証や労働協約を勝ち取ることはできないかもしれないが、こうした労働者は、職場で労働組合を作り、改善を求めて闘い、勝ち取ることができるのである。このような未多数派組合戦略はすべての労働者に開かれており、経済の重要な部門での長期的な組織化の基礎となることも可能である。

未多数派組合戦略

 職場の多数を取れていない労働組合で、労働協約を締結することがすぐには現実的でないと思われる場合でも、労働者は労働組合のように組織化し、行動することができる。言い換えれば、雇用主が法的に交渉しなければならない労働組合として認めていようと、いまいと、労働組合として活動する、ということである。

 この考え方は、「少数労働組合主義」や 「連帯ユニオニズム 」と呼ばれることもある。このような考え方の支持者たちは、労働協約を締結することに原則的に反対することもあった。というのはほとんどの協約にはストライク禁止条項を含まれるので、団体交渉により労働協約を締結することは、労働者の闘争能力を阻害することになる、と考えていたからである。

 しかし、私たちが調べた未多数派労働組合のほとんどは、必ずしも組合認証選挙と労働協約締結に反対しているわけではない。その多くは、全国労働関係局(NLRB)を通じた組合認証選挙や、雇用主による自主的な認証を最終的な目標と見なしている。

 この未多数派組合戦略を取る労働者の主なカテゴリーを紹介する。
1 組合認証を勝ち取るには法律の改正が必要な、保守的な州の公共部門労働者。テキサス州やテネシー州のように、公共部門における団体交渉を禁止している州の公務部門労働者である。
2 反組合的な風潮と組織率の低さから、短期的には組合認証選挙で勝つことが難しい「労働権」州の民間部門労働者。例えば、サウスカロライナ州では組織率はわずか1.7%である。
3 チェーン店や離職率の高い職場など、全国規模または多国籍の巨大な雇用主の民間部門労働者で、企業全体を対象とする組合認証選挙の成功は短中期的にはあり得ないと労働者が判断している場合。その一例が、20万人近い労働者を抱えるグーグルの親会社で組織化しているアルファベット労働組合である。
4 NLRBによる組合認証選挙に勝利したものの、雇用主が何年も交渉を引き延ばしている民間企業労働者。例えば、スターバックスの組織化キャンペーンは多くの選挙に勝利しているが、スターバックスの国内9,000店舗で十分な力を蓄え、会社に労働協約交渉を認めさせるには時間がかかるだろう。

 労働運動が必要とされる規模にまで成長するためには、未多数派組合戦略が極めて重要な手段である。

異なる組織化過程

 多くの点で、未多数派労働組合組織化の日々の活動は、通常の組合組織化とそれほど変わらない。労働者は、仲間と話し合い、組織委員会を結成し、共通の要求を決め、想定される経営側の反撃に対して予防線を張り、時間をかけて力と自信をつけ、職場で改善を勝ち取るために集団行動をとるべきである。

 未多数派組合の労働者は、認証された労働組合と同じ組織化の権利をこれまでどおり持っている。民間部門では、これら権利は全国労働関係法(NLRA)によって保護されており、スト権や、苦情申し立てや管理職に対する集団申入れなどの集団行動が含まれる。公共部門では、労働者は言論と結社の自由という憲法上の権利によって保護されている。

 未多数派組合戦略が従来の組合組織化と最も異なる点は、組織化が時間とともにどのように発展していくかという過程の違いである。組合認証選挙や雇用主による自主的な組合認証に続いて正式な団体交渉が短期的な目標でない場合は、組織化は長期の忍耐を要するプロセスとなることを覚悟しなければならない。

 この組織化過程の違いは、労働者から良く聞かれる質問にも表れている。「労働協約がない状態で、どうやって労働組合を長期間維持するのか?労働協約が結ばれていないのに組合費を支払うよう、どうやって組合員を説得するのか?労働者を報復から守るために十分な力を身につけるにはどうすればよいか?」

 未多数派の直面する最大の課題は以下の通り。
1 その労働組合が 「本物」であるという信頼を十分な数の労働者から得続けること。
v 2 組織化の結果得られた成果を労働組合の手柄にすること。例えば、スターバックスとアマゾンは全社的な賃上げを実施したが、これが組合の組織化の結果であることを労働者が知ることが重要である。
3 労働組合が小集団にならないように、参加人数を拡大すること。
4 労働者が加入する労働組合からの補助金と、組合費徴収により、長期的な財政支援を維持すること。

 最初からこれらの課題と取り組む戦略を持っていないために失敗することが、未多数派組合が敗北する理由である。

 しかし、未多数派組合は利点も持っている。未多数派組合戦略は、敵対的な使用者と長期的に対抗するために必要な持続的な力を築く方法を労働者に与えることができる。労働者は、3年に一度の協約交渉時だけでなく、いつでも直接行動によって広範な利益を獲得することができる。また、組織化を阻害するような労働協約上の経営権条項やストライキ禁止条項も存在しない。

 交渉単位にどの労働者を入れるかについてNLRBや地域の経営者組織が下した決定に制約されないため、職種を超えて全て従業員を組織することもできる未多数派組合の労働者もいる。このような職種を超えた連帯が組織化に大きな力を与えたという報告が多くある。

歴史

 これまで労働運動の歴史と現在の組織化の具体例が未多数派労働組合戦略の可能性を示している。

 民間部門で最も長く続いている未多数派組合は、ノースカロライナ州の全米電機ラジオ機械工労組UE 傘下のカロライナ自動車・航空宇宙・機械労働者労組で、現在はカミンズ・ロッキー・マウント・エンジン工場と呼ばれている工場で 30 年以上存続している。1980 年代と 1990 年代に回りの地域の工場で NLRB による組合認証選挙で何度も僅差で組合側が敗れるのを目撃した後、そこの労働者たちは未多数派組合を追求することを決めた。

 1990年にマーティン・ルーサー・キング牧師の誕生日を有給休暇にすることを求めて運動し勝利したのが最初で、それ以来その組合は不当に解雇された労働者の復職、シフトの短縮、福利厚生と賃金の改善を勝ち取ってきた。また、組合資料を配布する権利を守るため、不当労働行為申し立てて何度も勝利している。

 最も活発で全国的な未多数派労組組織化運動は、全米通信労組CWA傘下の大学労働者連合で、公共部門の団体交渉を禁止している12州の公立大学で数千人の組合員を擁している。この労働組合は、民営化を阻止し、賃金を引き上げるなど、多くの大学で勝利を実現している。

 1989 年から 1993 年まで、UE労組のプラスチック労働者組織化委員会(PWOC)は 全国で100 のプラスチック工場を組織化さた。特にプラスチック部門には労働組合がないため、労働者がより大きな、より強力な運動の一部であると感じなければ、工場ごとの組合認証選挙は成功しないと、UEは考えた。そこでUEは信頼感を高める方法として、複数の使用者にまたがるキャンペーンを追求した。

 PWOCは「全面選挙」というアイデアを追求し、複数の職場で活動家のネットワークを構築し、職場をまたがる全面的な選挙勝利を呼び起こすような画期的な選挙を実現しようとした。PWOCは完全な「全面選挙」を達成する前に資金が尽きたが、NLRB選挙の勝利、時給1ドル引き上げをいくつかの工場で実現し、多くの職場での闘いに勝利した。

今すぐ始めよう

 労働者の組織化には法的にもその他の面でも多くの障害があるが、良いニュースは、すべての労働者が今すぐ組織化を始められるということである。組織化の権利を法的に認められているかどうか、公務部門で働いているかどうか、独立自営業者と見なされているかどうか、家族経営の零細企業で働くかどうか、大企業で働くかどうか、は関係ない。

 組合のオルグが現れるのを待つのではなく、今すぐ自分の力で組合を結成することができるのだ。EWOCに連絡を取り、話し合おう

(コレット・ペロルドとエリック・ダーンバックは、全米電機ラジオ機械工労組UEと民主社会主義者党DSAの共同プロジェクトである緊急職場組織化委員会(EWOC)のボランティア・オーガナイザーである。)


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