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反人権抑圧の国際連帯行動が必要〜(香港光復)「時代革命」を観て

森 健一

 東京でドキュメンタリー映画を少しでも多く観てから岡山に戻るのが夏のたのしみだ。 周冠威(キウィ・チョウ)監督の映画「時代革命」は、東京、NY、ロンドンで先行して上 映されている。表記であれ「香港光復」を唱えることは、2020年6月に香港にも施行され た「中国国家安全維持法」の処罰対象である。周監督ら「私は香港人だ」と香港に留まる 活動家がいる一方、2014年の「雨傘革命」以来、台湾、米国、カナダへと拠を移す若者も 多い。この映画の中でも反中国を象徴させて星条旗が振られている光景があった。

 同作品は3時間に及ぶが、2019年、逃亡犯を中国に移送する法案に反対する抗議活動「反送中」には、700万人の香港で200万人近い市民が参加をした。抗議活動は「和・理・非」(平和・理性・非暴力)と「勇武派」に分かれているが、互いがその方法の違いを認めている。また、SNSを利用して抗議活動の前方と後方、拠点と機能をネットで分散して、警察当局の規制を巧みに逃れている。しかし、抗議のためにビルから投身する若者や警察の実弾で撃たれる者、警察が見逃す香港マフィア(白シャツ隊)の乱暴狼藉を見、これが香港のつい数年前かと知らなさ過ぎた。

 1997年に「一国二制度」として香港は中国のもとに返還されたが、自由な自治的制度を求めて中国共産党の一党支配には強い拒否感をもつ「香港人」は多い。日本にいる私は、台湾の問題ともつながる香港、そして米中対立の問題では知人の間でも見解は分かれる。

A・・1972年の日中共同声明、「一つの中国」の承認が国是でもあるから東アジアの武力衝突に発展する内政干渉――政治的行為は慎むべきだ。これは中国の国内問題だ。
B・・「一つの中国」といえど香港、台湾の一人一人の市民が脅かされてはならない。国際人権条約、アムネスティ・インターナショナルなどの政治犯を救うキャンペーンや国際報道での自由の原則など、人権にかかわる国際公約を普遍化させる活動を拡げるべきだ。
C・・ロシアのウクライナ侵攻以降、東アジアに「第二のウクライナ」を現出させないためには、日米安保を軸に台湾、韓国、アセアン、豪などとNATO化を模索すべきだ。

 Cは、宏池会、岸田内閣である。米国との同盟により「台湾有事」が煽られ、軍事緊張から市民的な基本権が潰される道筋である。軍事費が拡大、そこで儲けを得るのは、双方にまたがる軍産複合体と国際金融資本である。彼らだけが統治の自由を手にする。

 私はBである。この映画の中でも若者らの「武勇派」に命の犠牲を出すなと慎重さを求めつつ、警察の横暴には「同じ香港を愛せよ」を激しく抗議する労農夫の「陳おじさん」の姿が象徴的だ。彼は早くから有機農法にいそしみ、政府の再開発、土地取り上げに反対してきた。新自由主義のグローバリズムに抗い、あらためて農と土地から市民生活を再生させる道筋である。

 2022年のウクライナ戦争後、背景に「帝国」ともいうべき大国の思惑がある以上、一方の主張に偏ることは危険だ。一つ一つの事実を確かめ、抗議を重ねるほかない。一方の旗を振ってはならない。互いの「国家」を相対化した、反人権抑圧の国際連帯行動だ。


Created by staff01. Last modified on 2022-08-22 13:37:00 Copyright: Default

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