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マイク・パーカー追悼 偉大な労働教育者

スティーブ・アーリー 2022年1月20日


*マイク・パーカーは長年にわたりレイバーノーツ大会のワークショップに参加した

 レイバーノーツから4冊の著作を出し、その43年の歴史を通じてレイバーノーツの力強い支援者であり、重要な戦略家でもあったマイク・パーカーが、1月15日に膵臓癌のため死去した。

 マイク・パーカーは30年間現役の自動車労働者として過ごしながら、他の労働組合の組合員に対して、フルタイムの労働教育者と同等かそれ以上の影響力を与えてきた。

 その好例が、1985年に出版した”Inside the Circle: A Union Guide to Quality of Work Life”とその与えた影響である。この本が出版された時期は、ひどい譲歩交渉やストライキの敗北、組合承認取り消しが続いた10年であり、経営側は組合のある会社でもない会社でも、労使協調を推し進めていた。

 「QCサークル」、「従業員参加」、参加型チーム方式、問題解決のための労使協議会など、さまざまな形で経営陣からの労使協調の誘いが行われていた。その結果、「労働生活の質」(QWL)の取り組みは、従来の「敵対的交渉」を「労使協力」に転換し、平和的な労使関係の新時代の到来を告げるものとして広く歓迎されるようになっていた。

 QWLはウィンウィンの関係になるはずであった。経営側は、従業員を巻き込んで、自分たちの仕事のあり方について議論することで、士気や効率を高めるというメリットが得られる。労働組合は、労働条件の具体的な改善を達成し、選出された役員が一般組合員からより支持されるようになるだろう。労働者側の学者や労働教育者は、QWLプロセスを促進する有料のコンサルタントとして新たな仕事を得ることになる。QWLは意思決定に対する職場のコントロールを強化するという形で、「産業民主主義」の方向への一歩だと思い込む人さえ一部には存在した。

 全米自動車労組(UAW)、全米鉄鋼労組(USW)、全米電気工労組(IBEW)などの組合幹部は、AFL-CIOと同様にこのQWLの大ファンであった。QWL制度が仕事のスピードアップや雇用の喪失、労働者の連帯感の低下、団体交渉の掘り崩しに利用される可能性があると警告した組合は、全米電機ラジオ機械工労組(UE)、国際機械工労組(IAM)、アメリカ郵便労組(APWU)などごく少数にとどまった。

ユニークな批評

 この議論に参加し、その流れを大きく変えたのは、45歳のデトロイトの自動車労働者、マイク・パーカーであり、彼はまたレイバーノーツを創立したグルーブの一員でもあった。

 「従業員参加」に対するパーカーの批判は、彼の職場からの視点に基づくユニークなものだった。Inside the Circleが出版された当時、パーカーはフォード社のリバールージュ工場で電気技術者として働いており、UAWローカル600の組合員であった。その本は、この問題に関する主要な学術文献の調査や、主要な産業企業でQWLプログラムに参加した数多くの労働者への彼自身のインタビュー結果に加え、自身の個人的な事例を多く含んでいた。

 「良い仕事をしたい、グループの一員になりたい、貢献したいという労働者の最高の本能」に訴えかけるものであるため、当初は経営側の「参加」の誘いが非常に好評であったことをパーカーは同書で認めている。歴史的に見れば、「労働生活の質を向上させ、労働者の仕事に対する支配力を高め、職場と経済全体を民主化」しようとしたのは労働組合であったと、彼は指摘する。しかし、労働組合の影響力が低下した職場や産業では、特に現場において、経営側が労働組合を巧妙に利用できる余地が残っていたのである。「QWLプログラムは、私たちに支配力や影響力を与えるどころか、組合を弱体化させることによって、私たちの持つ唯一の真の力をさらに奪っている」とパーカーは警告していた。

 パーカーの著書は、この脅威の本質を明確かつ説得的に説明している。正式な労使交渉の対象となるべき問題がQWL会議で取り上げられ、特に選出された職場委員や交渉委員が参加しない場合、団体交渉は簡単に力を失う。経営側が、どんなに些細な問題でも変更や改善する際に、組合との交渉や苦情処理よりもQWLの方を重視しようとする姿勢を見せたら、組合費を納入している組合員たちは、なぜ労働協約や苦情処理手続きが必要なのかと疑問を持ち始めるだろう。

 QWLプロセスは労働組合員の間に狭い「会社組合」の考え方を助長するという、重要な主張を”Inside the Circle” は行っている。協約交渉での譲歩や、同じ企業の他の職場や同じ産業のライバル企業で働く組合員との競争激化によって達成される労働コストの削減によってのみ、雇用を守ることができるという考え方への転換の一歩とQWLはなり得るし、実際にそうなったのである。

 「QWLの要点は、雇用の保障や将来が労働組合ではなく会社(または工場や部署)の成功に結びついていると労働者に信じ込ませることであり、その産業全体にわたって労働者の連帯を築く方法とは言い難い。」とパーカーは書いている。

優れた戦略提案

 労働左派のイデオローグの中には、労使協調に対する最善の対応は「絶対拒否」であると主張する者もいた。あたかもほとんどの労働組合がQWLをボイコットする組織能力や指導力を当時持っていたかのように考えていたが、実際にはそうではなかった。これに対してパーカーは、強制残業、労働のスピードアップ、その他ストレスの多い危険な状況といった問題に対して組合側の解決策を追求し続けることにより、職場の活動家たちが「QWLプログラムにできる限り抵抗する」方法について有益で実践的なアドバイスをたくさん提供していた。

 電信電話会社が「改善」「自己管理チーム」などを「品質改善の追求」という名目で提案していたが、アメリカ北東部のCWA第1地区の指導者が交代したことにより、この提案に対して批判が出来るようになった。そこで電話労働者の研修会や討論会にパーカーが呼ばれたが、彼がやろうとしたことはまさにこのような実践的アドバイスであった。

 ニューヨーク州とニューイングランド州で6万人のCWAとIBEWの組合員が参加したNYNEX社(現ベライゾン社)の4ヶ月に及ぶ譲歩拒否ストライキの後に、経営側がQWLによる懐柔攻勢を掛けきたのは不思議ではなかった。同社は、何百、何千人という従業員を2日間、4日間のトレーニングに参加させ、「顧客により良く、早く、安くサービスを提供する方法を見つけなければならない、さもなければ、競争に参加することはできない」というメッセージで送り始めた。

 この攻勢に対して労働組合が主催したローカルの役員や職場委員を対象とした研修にパーカーは参加し、経営側が提唱する「従業員参加」の長所と短所を引き出すための一連のグループ演習を指導した。また「作業工程に対する経営側の管理を強化する」ことで、「労働者たちが自分たちで定めていた作業量標準が奪われてしまう」可能性があることをCWAストライキの参加者や労働協約交渉の活動家が理解するのを助けた。

 また、NYNEX社に新しいサービス品質基準を課すようニューヨークの公共サービス委員会に求める労働組合の方針を作成する際にもパーカーが援助を行った。この基準は、技術者とサービス担当者の仕事を増やし、顧客によりよいサービスを提供することを可能にするものであった。CWA第1地区の会議で、マイクはNYNEXの地域社長と議論したが、その社長は会社の新しいQWL政策を主張し、”Inside the Circle”が主張するQWLへの批判に激しく反論した。

心に刻む

 しかし、組合内での議論が進むにつれ、パーカーの著書とジェーン・スローターとの共著『Choosing Sides: Unions and the Team Concept』の影響がより鮮明になってきた。ニューヨーク州北部のある小さなCWAローカルの委員長は、これらの本を読んだ後、執行委員会と協力して「経営側の品質と組合側の品質」と題する声明を作成したが、これはパーカーの本からの引用である可能性がある。

 このローカル1115による声明は、職場環境、訓練、技術、安全衛生を改善し、「顧客のために質の高いサービスを提供し、一方で多くの良い雇用を確保する」という組合独自の方針を概説したものである。ローカルは「労働者の利益を代表すると称して、労働組合を回避するような代替的な職場組織の導入」を拒否した。また、「会社が決めた目標に従うことを要求し、労働者を職場内や州内の競合するグループに対立させ、職場環境を悪化させ、組合の独立性を損なう組織」は「労働者の連帯」を脅かすものである、と警告している。

 マイク・パーカーに言及した箇所はなかったが、彼の影響はこの文書全体に反映されている。1980年代の重要な組合内部論争において彼が果たした非常に大きな役割、そしてそれ以前と以後の多くの労働運動と政治的闘争で彼が果たした役割のほんの一例として、この声明文は、私の埃まみれのファイルの中に残っているのである。

(スティーブ・アーリーは全米通信労組(CWA)の北東部の本部代表兼オルグを長年務め、電信電話産業で品質プログラムが導入された際の組合員教育などを担当した。)


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