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レイバーネットTV 第157号放送(2021年3月17日放送)

虐げられた時、人権に基づいた新しい労働運動が起こる

特集 文化の仕事とハラスメント―声をあげた者たち

アーカイブ録画(108分)

われら、流浪の民は3月の発信場所を、2月の発信会場から数百メートルしか離れていない「梨の木舎」に漂着しておこなった。梨の木舎は、コーヒーも飲めるし本も売っているし、さまざまな市民勉強会をしていて、昨年あたりからオンラインで発信も始めた。もともとは出版社、ということは発信している会社なのだ。その空間をお借りしてのレイバーネットTVが3月17日19時30分から始まった。(報告:笠原眞弓)

・司会 土屋トカチ・北穂さゆり
◆今月の一枚(レイバーネット写真部)より:ちょうど昨年の渋谷ハチ公前の桜の木の下でくつろぐ人々と、その考察。まる1年が経過してもコロナに翻弄されている私たち。新しい生活様式を身に着けて、今後どうなっていくのか。

◆北健一スラップ訴訟・その後

昨年5月に閉店した東京美々卯(7月15日151号で紹介)。フリーランスライターの北健一さんは当時東京美々卯の経営状況は正常で、雇用助成金も使っていなかった優良企業がなぜ閉店しなければならないのかを調べ、そのいきさつを「ダイヤモンドオンライン」で報道したところ、北さんのほか、掲載した社長らが「名誉毀損」で大阪美々卯の薩摩和男氏に訴えられた。請求はなんと1100万円。いわゆるスラップ裁判で、その経過報告である。

スラップ(口封じ、恫喝訴訟)とは、弱い立場の者を訴えることを言い、
・市民参加に対する戦略的訴訟、市民運動や労働組合、メディア・記者を「強者」の側が訴える
・名誉棄損訴訟 立証負担は被告に偏る
・社会運動や調査報道へのブレーキ
などが目的で行われる。
現在労組関連だけで主なもの5件の紹介があり、かなり頻繁に起きている裁判という。

北さんは「名誉棄損」で訴えられているので、それを証明するのは北さん側である。

裁判官は、訴えている大阪美々卯の薩摩和男氏が、この閉店にどれくらいかかわっているかだという。大阪と東京は、協力関係にあるが、薩摩氏は立場上、議決権持たない株主であるにも関わらず、絶対な権力を持っていたようだ。 

東京美々卯の元従業員たちは、現在も店舗再開を目指して組合を作り頑張っている。その彼らが、北さんのTV出演を聞き、応援に駆け付けた。そして、東京美々卯の3人の取り締まりも一方的閉店には、疑義を抱いていると彼らは語り、店舗再開のためにうどんすきの宅配も始めたという。

北さんから、大阪と東京のそれぞれの美々卯の株所有などの詳細が語られた。

さらに北さんは「一番つらいのは、反論の文章を書くこと、しかも、普段なら文章を書けば収入があるのに、1銭にもならない」ことの虚しさを訴えた。それでも必ず勝訴すると、決意を語る。

◆文化の仕事とハラスメントー声をあげた者たち

渋谷や吉祥寺で映画館を展開している独立系映画館、アップリンクのハラスメントの一応和解に終わった裁判闘争を労働組合のUPLINK Workers' Voices Against Harassmentのメンバー4人に話してもらった。

4人の職場は渋谷で劇場の運営や配給・宣伝、併設していたレストランのホール、2018年暮れに開館したアップリンク吉祥寺、イベントの企画運営などそれぞれ違い、直接の交流はなかったと錦織さん。しかし館長の浅井隆氏の自分へ、また他の人へのやり方を見ていて、かなりの問題が起きているのではないかと思い、周りに呼びかけ話し合いを通して訴訟を一緒にした仲間とともにした。

それぞれの被害について語ってくれた。例えばアップリンク吉祥寺の開館まで1カ月もないスケジュールで、過酷な仕事量を負わされた錦織さんは「仕事ができないと言ったから、正社員から有期契約社員に変える。呑めないなら辞めてもらう」の一言で辞めることになった。また清水さんは、次々辞めていくアルバイトや社員の仕事の穴埋めが大変で、休みもなかったという。

社員を自分の持ち物のようにこき使い、気分で首にする。話を聞いていて、思わず「従業員は奴●か?」と思ってしまった。そんな「社長」を何に譬えればいいのだろうか?

極め付きは「精神障碍者を雇ったのが間違えだった」という一言だ。この言葉を聞いたとき、言われた側もそれを知ったアップリンクの顧客もアップリンクへの評価がガラガラと崩れたのだった。

2019年8月に退職した錦織さんは、このまま退職は悔しいと、問題があったような元同僚に話すと、他の人もハラスメントを受けていた。そこで労働組合を介して弁護士とも相談し、元社員や契約社員などに声をかけて話し合い、訴訟に踏み切った。

昨年の6月に提訴して、10月に和解が成立した。しかし、彼らは満足していない。なぜなら、アップリンクに対してもわだかまるところがあり、また自分たちのようなハラスメントで苦しんでいる人たちが大勢いる。その人たちに声をかけて、「権利」を取り戻していきたいとの思いがある。そのために彼らは、次のステップに進んでいった。

(ここでジョニーHと乱鬼龍の休憩タイムが入り、話は後半へつづいた)

●「文化事業のハラスメント」は、かなりの場所で見られる

和解成立したとはいえ、その結果に満足していないと、彼らは記者会見の場で語り、ミニシアターや映画製作現場で同様なハラスメントに苦しむ人々のために闘っていきたいとTwitterやFacebook上に彼らのページを設け、宣言している。

彼らの大事な言葉「仲間がいたことでやってこられた」を、さらに広げていくために、現在この問題で苦しんでいる人や、今後苦しむ人がいないようにしたいと、強い思いで運動を続けていくという。さっそく、裁判闘争を知って、彼らに寄せられた同様の被害、数件が紹介された。

彼らが実際にしたことの一つに、闘いを始めた人たちの声を集めたり、「ジン」を発行したこと。私などは初めて聞く「ジン」だが、若者の間では浸透しているようで、出版社を通さない気軽な発信手段「マガジン」の「ジン」だけを取った名称だ。彼らの「ジン」のタイトルは「listen」(聴く)である。原告のエッセイやハラスメントにあった時の闘い方のフローチャート他など。現在は下北沢の本屋「B&B」で入手できるが、徐々に増やす予定。

ミニシアターで働いている人(過去一年以内)を対象としたアンケートも25日まで募集している。6月の「シモーヌ」で発表される。

視聴者からの「アップリンクの常連客からの非難や励ましはあったか」との問いに答えて、今の日本で声を可視化していく方法は訴訟しかなかった。結果、SNS上でさまざまな反応があり、アップリンクに行けなくなったというものや、発信力のある人が「映画に対する愛がペラペラなんだ」とか「映画には罪がないですから」とすり替えられたという。

司会者すかさず、これはハラスメントがなんであるか、事業(サプライチェーンなども含めた)とは何かがわかっていない人の声であって、それがわかれば、この問題は「経営者としての訓練ができていない」こととわかると。

◆途中の休憩タイム:ジョニーHさんの替え歌は映画の主題歌「銀座カンカン娘」。この歌は戦後、進駐軍が軍靴で我が物顔に街を闊歩していたころ、シナリオを担当した山本嘉次郎が、その世相に反発して当時の「パンパン」にかけてカンカンに怒っているという気持ちを込めた造語だという。知らない方はぜひ聞いてください。戦後復興の槌音が響いてきます。乱鬼龍さんの川柳は、「たたかうぞハラスメントを晴らすまで」でした。次回は、4月21日です。

↓この日初披露されたオリジナルTシャツ。2千円でお分けします。


Created by staff01. Last modified on 2021-03-21 21:15:54 Copyright: Default

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