本文の先頭へ
LNJ Logo 「格差・貧困・差別」の現状と協同組合/シンポジウムで活発な問題提起
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1603060795632st...
Status: published
View


「格差・貧困・差別」の現状と協同組合〜シンポジウムで活発な問題提起

北穂さゆり

10月18日『西暦二〇三〇年における協同組合』出版記念シンポジウムが、東京・文京区民センタ ーにおいて行われた。

第一部は「格差と貧困と差別と闘う各団体からの現状報告と問題提起」

路上生活者支援で注目される、反貧困ネットワーク事務局長・瀬戸大作さんは「テレビだと困 ってる人にお金を配って終わりのようですが、実際の活動はそれから」と言う。「アパー トに入りました、では何も解決しない。仕事がないことから孤立、鬱を発症する人が多い 」。体脂肪率で家賃を決めるなど笑い話のようなでたらめな脱法ハウスも彼らを悩ませる。 頼れるはずの行政にも任せられない。困窮者を子どものように管理する姿勢が行政には目 立ちすぎる。たとえば6か月間にわたって困窮者の家計管理を監視したのち、生活保護支 給を決定するなどは、救済の本来の姿ではない。生活保護の申請をすると、決定まで360 円で暮らせ、それ以外はフードバンクの食糧でしのげという行政もある。それはフードバ ンクのあるべき姿でもない。海外の貧困者支援では、先にアパートに転宅して適切な医療 を受け、それから生活改善していくほうが効率がよいとされている。

今後はコロナの影響で来年1月以降、家賃滞納者が相当数出てくるだろう。空き家を利用 すべきだが、そのときにサービス享受者から外国人を除外することは許されない。お金と お米の支援、そしてなによりも外国人に対しては医療支援が大切だ。「やっぱり殺しちゃ まずいですよ。路上生活者はみんな働きたいと言うのです。それなのに路上にいるしかな い人に対して何をすればよいか」救済の質が問われている。

次に移住者と連帯する全国ネットワーク事務局長・山岸素子さんが登壇。外国人貧困問題 について、定住している外国人でも言葉の壁から情報が得られず、新型コロナ支援金を受 け取れない場合があると指摘した。日本の難民申請の不備によって、観光ビザで入ってく るが観光ではないという理由だけで入管収容されてしまう実態もある。それに対し移住連 は「新型コロナ移民・難民緊急支援金」を創設。定額給付金対象外で生活にとくに困窮す る移民・難民・外国にルーツのある方に、一人3万円の現金支援をした。

現在、日本に滞在する技能実習留学生は40万人。コロナの影響で入管を仮放免になってい た外国人は、心身の病気にかかっている人が多い。移住連は、彼らに対する差別なき支援 金、医療、住まいなどについて要請をしていく。技能実習ホットラインで相談も受けてい るので活用されたい。菅政権のいわゆる“自助”を移民・難民に求めることはありえない。

3人目登壇者、NPO法人共同顧問・堀利和さんは、障碍者のための社会的協同組合法制定に ついて話した。障害は医療的観点から判断するだけでなく、社会が障害を作っているとい う認識を持つことが大切。津久井やまゆり園事件の犯人は、優生思想を人類みながこっそ り持っていると言っていたが、その視点で現状を見直すことは必要かもしれない。障碍者 は時間と金を無駄使いしているとの考えを持ってしまう社会にこそ問題がある。労働力が 商品化される資本主義社会においては、障碍者の労働力は“不良品”扱いをされている。 現在53万人の障碍者が働いているが、働く能力の低い障碍者は雇ってもらえないのが現実 で、しかも障碍者600万人のなかで高齢者が6割を占めている。

平等であるべき教育においても分離化教育(特別支援学校)は存在し、近所の学校に通え ない障碍者は地域からも排除される。障碍者は最低のサービスを受けながら、コロナ禍に 限らず平時から劣等処遇を受けているのだ。国会では今、労働者協同組合法が懸案されて いる。それよりも協同組合型の働き方、イタリアの社会的協同組合法制定のほうが期待さ れるが、それを日本でそのまま実現することは困難としても、その実現にこそ希望をもっ ている。

第二部は、パネリストによるリレートーク。レイバーネットでおなじみの反貧困ネットワ ークの白石孝さんは、日本全体からするとまだまだ見えない存在である協同組合がどうや って力を示していくかについて。たとえばソウル市は学校だけでなく施設も含めた有機野 菜の公給食を始めている。共助と公助が共同する社会が実現していこうとしている。日本 ではその萌芽はたくさんあるもののまだ一部の動きで全体に広がっていかない。

生活クラブ顧問加藤好一さんは食糧格差の問題について。“世界の飢えを満たす協同組合 ”として何をすべきか。必要なことは多国籍企業などに食べ物を奪われない、支配されな いこと、そして協同組合セクターの早期設立が大切と述べた。

全統一労働組合の鳥井一平さんは、協同組合はSDGsを真剣にやってるのか。だれ一人取 り残さない協同組合へ。これからの社会は労使対等が担保された多民族共生社会を形成す るべく、協同組合は保守的であってはならない。

その他のパネリストからも協同組合活動に関係する活発な問題提起と報告があった。さら に質疑応答ではオンラインで韓国と結び、「ベーシックインカム」の話題で、元ドゥレ生 協連合会・金専務理事との対話がはずんだ。


Created by staff01. Last modified on 2020-10-19 14:13:28 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について