75年前人類が手に入れた核の力とは〜映画『ひろしま』
笠原真弓
救護所に向かう船上で、娘を抱えて励ましている母親。目が見えなくなった娘さんがお弁
当を差し出し「母が作ってくれたけど、もう食べられませんから」と。そして自分の名を
名乗り、母に伝えてくれと言って息を引き取る。
『ひろしま』。これは75年前の8月の広島の「記憶」。全国の教職員組合がお金と8万人
のエキストラを出し合って、1953年に関川秀雄監督によって完成した映画だ。被爆者でも
ある広島大学の長田新教授が編纂し、51年に出版された『原爆の子〜広島の少年少女のう
ったえ』(岩波書店)をもとにしている。これは原爆投下前後を子どもたちが綴ったもの
で、被爆の記録がほとんどなかった当時の貴重な証言集でもある。
52年に公開された同じ本をもとにした新藤兼人監督の『原爆の子』があるが、私はいまだ
に見ていないのが残念だ。
51年に講和条約締結後、それまでの報道規制が緩和され、間隙を縫っての出版であり、
映画製作であったと聞く。その後再び厳しくなったのか、配給会社の松竹が忖度したのか
部分的手直しを拒否したために全国一斉封切り(いわゆるロードショー)はされなかった
が、2本立て館では、やっていたようだ。
実はその頃、学校から見に行くことになっていたが、事情があって見に行けなかった私
は、どんな映画かもわからずに、近所の中学生を誘って見に行った。彼女はオイオイ泣い
ていたのに、小学生の私は体が固まってしまい、覚えているのは銀行の階段の焼きついた
子どもの影のみ。涙一滴流れなかった。それが、最近チャンスがあって、また見ることが
できた。
物語は、戦後7年、赴任してきた原爆の惨禍を知らない高校の先生が、授業中にラジオか
ら流れる「0の暁 原子爆弾の発明・製造・決戦の記録」の朗読を生徒たちに聞かせてい
る。原爆投下直前の米兵の会話が流れて…。7年経っているとは言え、あの恐怖に突き落
とされても、何ら不思議はない状況で、生徒が鼻血と共に倒れ、白血病で入院。先生はそ
こから自分の生徒やその周りの人々が抱えている「広島」の現実を知っていく。
この作品は、DVDとしても販売されている。2013年にDVD化されていているが、相当に傷んでいるとか。
しかし最近はリマスター版での公開・上映活動が、助監督だった小林大平氏の孫、小林
開氏によって行われている。昨年の8月NHKや放送し、また各地で上映されたが、今年も各
地の映画館で上映が始まった。
今見れば、この映画の生い立ちから現在までが、私たちの核に対する思い、考え方を端
的に表しているともいえる。私たちが忘れてはいけないテーマでもある。
監督:関川秀雄 /104分
DVD:紀伊国屋書店3800+税
*現在の上映情報(リマスター)
・松山 シネマルナティック 7/31(金)〜8/6(木)
http://cinemalunatic.sx3.jp/kinjitu.html?fbclid=IwAR3TE7JzBgp613YqvDHKADKSqdDQL
3hSb9Eazj3rDX2EjH75zNeoXIqGxaE
・大坂 シネヌーヴォ 8/1(土)〜8/7(金) 11:00〜 15:15〜
http://www.cineno
uveau.com/
・群馬 高崎電気館 8/1(土)〜8/20(金)
https://takasaki-denkikan.jp/
・大分 シネマ5 8/1(土)〜8/7(金)
http://www.cinema5.gr.jp/
・浜松 シネマイーラ 8/7(金)〜8/20(木)
http://cinemae-ra.jp/
・広島 八丁座 8/7(金)〜8/13(木)
https://johakyu.co.jp/schedule/month.html
・名演小劇場8/8(土)〜8/21(金)
http://meien.movie.coocan.jp/
・横浜シネマリン8/15(土)〜8/21(金)
https://cinemarine.co.jp/
・シネマハウス大塚8/22(土)〜8/28(金)(24日休館)
・奈良市西部会館市民ホール 8/29(土)30(日)
https://www.nem-shiteikanri.jp/
Created by
staff01.
Last modified on 2020-08-04 21:22:30
Copyright:
Default