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吉原真次の「日々是雑感」〜新型コロナウィルス問題を考える

*元郵政ユニオンメンバー・吉原真次さんは「日々是雑感」というコラムを出している。吉原さんから編集部に最近のコロナ問題に関するコラム3篇が寄せられた。以下紹介する。写真は2017年5月のレイバーネットTVに出演中の吉原さん。(編集部)

 

●慣れることの恐ろしさ

 感染力の強い新型コロナウィルスが引き起こす肺炎に関する報道が新聞をはじめとする各マスコミを騒がす昨今、2月22日時点での感染者は7万6,288人、死者は2,435人となった。しかし、毎年10月から翌年3月にかけての流行期に多数の感染者、死者を出しているインフルエンザについては大きく報道されていない。

 米疾病対策センター(CDC)発表の2月15日付インフルエンザ感染推計値によると、2019年10月1日から20年2月15日の感染者は2,900万人、入院者は28万人、死者は1万6,000人に達している。さらにCDCは2017年から翌年の流行期には4,500万人が感染し、6万1,000人が死亡したと発表している。

 厚生労働省の人口動態統計によると2018年の日本のインフルエンザによる死者は3,325人で、過去最高となった1957年の7,735人の半分以下だが、1970年代から減少して1,000人以下となった80〜90年代の3倍以上であり、90年代からは大きく増加する年が目立つようになり、少子高齢化と相まって2010年代以降は65歳以上の高齢者が死者の大半を占めるようになっている。

 2017年の世界銀行の調査によると中国の人口は約13億8,000万人、アメリカは約3億2,000万人、日本は約1億2,000万人で大雑把に計算すると中国ではアメリカの4.3倍、日本の11倍の死者が出ることになる。にもかかわらずインフルエンザが各マスコミで大きく取り上げられないのは新型ウィルスでないこともあるが、毎年発生していることからくる慣れによるものだ。

 ちなみに、2019年の自殺者数は2万人を切って1万959人となったが大きく取り上げられることはなかった。いくらお金を使っても呼び返せない一人の命があるというのに。(2月23日)

●もはやマスゴミ

 新型コロナウィルスに関する各種マコミの報道に接し、もはやマスコミは正確で冷静な報道をする責務を忘れ、ただ騒ぎ立てるだけの存在=マスゴミに成り果てたと断じざるを得ない。

 私が見た限り、マスコミは新型コロナウィルスが引き起こす惨状を詳しく、そして自分好みの専門家を招いて報道したにすぎず、感染を覚悟して拡大を防ぐために努力している人たち、とりわけ感染者だらけの船内で働くダイヤモンド・プリンセス号の従業員に身近に接することなく報道した。その報道がどこか他人事のように感じられたのは自分が安心な場所にいるという安心感=奢りに他ならない。現場で感染を恐れず患者や感染者予備軍の乗客に接している職員の苦悩や悩み、そして恐怖は少しも報道されなかった。

 その結果、感染者の検査と治療そして仕事とはいえ乗客の面倒をみる英雄たちは貶められ、家族さえも忌避されるという本当に情けない状態が生み出されたのだ。社会の木鐸というなら、どうして新型コロナウィルスを正しく冷静に分析した上での報道ができないのか、私には全く理解できない。そもそも報道=ジャーナリズムとは自分の足で歩き回って伝えるべき真実を探ることにある。

 これは私が2017年3月末日の退職日までいた郵便局の仲間が手紙を区分し、届けるのと同じことだ。郵政労働者は豪雪時には腰まで達する雪をかき分けて郵便配達をするし、特殊郵便の通数が合わない時には休憩時間はおろか仮眠時間さえも返上する

 今やマスコミは事実を騒ぎ立てるマスゴミに成り下がった。ならば私たちはマスゴミの流す情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考えていくしかないし、それがフェイクニュースに惑わされない近道だ。(2月29日)

●三代続く傲慢と無責任

 2月26日、スポーツや文化の大規模イベントの2週間にわたる開催自粛を要請し、翌日には小中学校などの臨時休校を要請した安倍晋三首相は、ようやく29日に記者会見を開いて唐突に表明した全国一律の臨時休校について理解とお願いを繰り返し求めた。

 1月16日に政府が国内初の感染者の確認を発表してから1カ月半近く経って初めての記者会見であり、その間同月30日に自らを本部長とする新型コロナウィルス感染症対策本部が設置された時も、2月24日に政府の専門家会議が感染拡大・収束について「1〜2週間が瀬戸際」との見解を出した時も、翌日に政府が感染拡大防止を目指す基本方針を決定した時も記者会見を行わなかった。ようやく首相が会見を行った理由は連立を組む公明党の提言によるものだ。

 これら一連の安倍首相の行動の背後にあるものは傲慢と無責任だ。常識的に考えれば、最初に記者会見を開いて国民に新型コロナウィルスの感染について詳細に説明した上で、イベントの中止と臨時休校の要請がもたらす被害を最小限にする対策を打ち出して理解を求めるべきにもかかわらず、逆のことをして国民を混乱に陥れた。

 しかも要請という方を採ることで自分の責任を回避する逃げ道を作り、かつ自分への忠誠度を測ることができる。混乱や問題が起こってもそれは要請を受け入れた地方行政の不手際にできるからだ。

 新型コロナウィルスに関する報道を調べると、厚生労働省が武漢における感染の第一報を伝えたのは1月6日、その時点で中国から多くの人が入国している。2月3日の衆議院予算委員会で森雅子法務大臣は1月20日〜23日に武漢から約1,700人の外国人が入国したと発言している。

 北海道での感染拡大が報じられているが、北海道は中国人観光客に人気のある観光地で、当然武漢からも大勢の人が訪れたであろう。武漢での感染がわかった時点で入国検査を厳しくしていれば感染拡大を防げたかもしれない。中国人観光客の落とす金欲しさに対策を遅らせたと言うべきである。

 2月16日の対策会議に小泉進次郎環境相をはじめとする3閣僚が地元の後援会の行事を優先して欠席したことが問題となったが、安倍首相もマスコミが来た当初の数分間いただけにすぎない。

 安倍首相は責任を取ると言うが、自分に都合の悪い質問に誠実に答えず、そればかりか質問した議員に「無意味な質問だ」とのヤジを飛ばす人間が責任を取るはずがない。

 ちなみに、安倍首相が敬愛する岸信介は戦前には満蒙開拓団を送り出した中心人物でありながら、1959年の首相時代には残留孤児の「戦時死亡宣言」を出して孤児の戸籍を抹消した。三代続く傲慢と無責任と言うほかに言葉がない。(3月4日)


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