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LNJ Logo 米国労働運動 : ケンタッキーの炭鉱労働者、未払賃金を求めて出荷阻止
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〔解説〕9月号のレイバーノーツ誌はケンタッキー州で起こっている炭鉱労働者の倒産争議を伝えている。アメリカではまだ炭鉱が操業しており、そこで鉄道占拠による出荷停止の闘いが展開されている、というのは興味深い。しかも、この闘いを起こしている労働者たちは労働組合には組織されておらず、自発的な闘いであることに注目したい。(レイバーネット日本国際部 山崎精一) *毎月1日前後に「レイバー・ノーツ」誌の最新記事を紹介します。

ケンタッキーの炭鉱労働者、未払賃金を求めて出荷阻止

   アレキサンドラ・ブラッドベリー レイバーノーツ編集長

*線路を占拠して出荷阻止する炭鉱労働者たち

 ケンタッキー州ハーラン郡は1930年代と70年代の激しい炭鉱ストライキで有名である。今残っている炭鉱には労働組合はないが、炭鉱労働者の戦闘性と連帯は地元ではまだ生き続けている。

 この記事を執筆時点で2週間にわたって石炭の出荷を阻止するために炭鉱労働者とその家族は鉄道線路を占拠中である。要求は未払賃金の支払いである。

 7月29日、貨車に石炭を積み込み始めている、という情報が広まった。倒産したブラックジュエル社の炭鉱夫何人かが現場に駆け付けた。出荷を阻止することがその場で決められた。

●線路に座り込む

 炭鉱夫たちはできれば仕事を取り戻したかったが、とりあえず未払いになっている賃金を取り戻したかったのだ。三人の子持ちのキャメロン・コーネットさんは語る。「働いた分の賃金が欲しい。働いたのに、仲間や私の家族は賃金を奪われてしまった。」

「賃金が支払われないのなら、元社長のジェフ・ホープスに何らかの責任を取ってもらいたい」と四世代にわたる炭鉱夫のシェーン・スミスさんは訴える。ブラックジュエル社が倒産を発表した3日後に一番下の娘が生まれた。二人とも2か月分の4000ドルが未払になっていると言う。

 炭鉱夫たちによると、郡警察がやってきて線路から立ち退くように言ってきたが、抗議が平和的であれば問題ない、と言って立ち去って行った。

 鉄道会社は三日目に石炭を積んだ貨車を残して機関車を引き上げた。

 炭鉱夫とその家族は線路の占拠を続けた。その人数は変動したが、時には100人にのぼり、雨の降る夜中も貫徹された。支持者たちが水や食料を線路に届けるようになった。その内に、テント、移動トイレ、発電機も据え付けられた。

●消えた賃金

 ブラックジュエル社は7月1日に4州にある全ての炭鉱を突然閉鎖し、破産を申請した。従業員は直勤務の途中でこの悪い知らせを聞かされ、帰宅させられた。

 コーネットさんは閉山のニュースをフェイスブックで知ったが、「念のため」夜勤に出勤してみた。しかし、守衛以外誰もいなかった。

 さらにひどいことに一時解雇の通知は送られてこなかったので、失業保険を受けるにも離職している証明ができなかった。それは何とか証明できたが、会社の社会保険関係の事務が杜撰だったことが判明し、失業保険をなかなか受給できなかった。

 ブラックジュエル社の倒産により、地域で操業している炭鉱は2つとなったが、共に新規採用はしていなかった。そこで友人や地域の人たちはカンパを募って、職を失った炭鉱夫の家族の光熱水費を負担した。

●全国的注目

 この破産と1800人もの大量一時解雇はほとんどニュースでは報道されなかった。しかし、炭鉱夫たちが線路占拠を始めると全国のニュースが取り上げるようになった。

 ケンタッキー州労働部は遅まきながら同社に36万ドルの罰金を科した。それは2017年に炭鉱が開業した際に4週間分の賃金の保証金を預託しなければならないという州法に違反していたからである。州はもっと早くこの州法を適用すべきだった。

 占拠が始まって一週間後、トランプ政権が動きだした。連邦政府労働省は破産裁判所に対してブラックジュエル社の石炭を「州外出荷禁止物」に指定するよう働きかけた。つまり未払賃金が支払われるまで石炭を州外に運び出せないようにする措置である。

 この仕組みはhot goods(盗品)と呼ばれ、1938年の公正労働基準法で定められており、同法に違反して生産された製品の州外出荷が禁止されている。第一次ブッシュ政権以来、被服産業での搾取工場に対して適用されている。

 ブラックジュエル社の炭鉱はケンタッキー州ハーラン郡の6つ以外にバージニア、ウェストバージニア、ワイオミングの3州にもある。同社の職を失った炭鉱夫たちはフェースブックにより情報を共有し励まし合っている。

 連邦破産法では労働債権は最後の方に位置付けられている。しかし、炭鉱夫たちは未払賃金の支払いを優先するよう要求している。

 8月5日、ウェストバージニア州チャールストン市でブラックジュエル社の炭鉱のいくつかを売却するための連邦破産裁判所の公判に多くの炭鉱労働者が緑色のTシャツを着てバスに乗って詰めかけた。

 8月8日、コッパーグローという会社がハーラン郡とレッチャー郡にある炭鉱を買い取り、労働者の多くを再雇用して炭鉱を再開しようとしている、というニュースがあった。260万ドルの未払賃金の内、45万ドルを直ぐ支払い、さらに向こう2年間に55万ドル支払うと約束している。

 炭鉱労働者たちはこのニュースを歓迎している。しかし、最初の未払賃金が支払われるまでは鉄道占拠を解かないことを決定した。


Created by staff01. Last modified on 2019-09-01 16:33:01 Copyright: Default

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