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LNJ Logo 米国労働運動 : エリ―市の機関車労働者のたたかい
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〔解説〕レイバーノーツ7月号はラストベルト地域にある機関車製造工場でのストライキと労働協約の締結を伝えている。この元GEの工場での2月のストライキはトランプ政権になってから最大の製造業でのストライキであった。UEというAFL-CIOに加盟していない独立の戦闘的労働組合が勝ち取ったこのストライキによる勝利は、「雇用を守る作る」というトランプの空約束に対する、オルタナティブな回答をラストベルト地域の労働者に示している。(レイバーネット日本国際部 山崎精一) *毎月1日前後に「レイバー・ノーツ」誌の最新記事を紹介します。

エリ―市の機関車労働者、ストを回避して 新しい労働協約を獲得

   サウラブ・サーカー (レイバーノーツ副編集長)


*ペンシルバニア州エリ―市のワブテック社機関車製造工場前で。暫定合意期限切れ前に情報ピケをする労働者たち

 昨年、鉄道機器メーカーのワブテック社はゼネラルエレクトリック(GE)社の機関車製造部門を買収し、会社規模を倍にした。その結果、GE労働者を組織していた全米電機ラジオ機械工労組UEとGEの間の全国労働協約が失効した。GE社は既にこれまでに他の工場を企業分割や下請け化することにより労働協約の適用から外していた。その結果、機関車を製造していたペンシルバニア州エリ―市の工場だけがこの70年続いた全国労働協約の適用職場であった。

 今年2月にワブテック社との合併が最終的に決まり、ワブテック社は一方的に労働者の年金と健康保険の適用を止め、超過勤務の義務化や時給16.75ドルから始まる二層賃金制などの譲歩を組合に提案してきた。UEローカル506と618はこれに対して9日間のストライキを敢行した。その結果、これまでの労働協約の内容を復活して、新たな4年間の労働協約を交渉する、という90日間の暫定合意に達した。

 この3か月の間、UE労組は様々な活動を展開した。90日のカウントダウン数字を各自のロッカーに貼ったり、始業前のピケをやり、ワブテック本社にデモを掛けたり、ピッツバーグ市で開催された株主総会にピケを張ったりした。

 会社側は最終的に恒久的な二層賃金の提案を取り下げた。新しい提案は新規採用者は時間給17ドルから始めて18年掛けて元の給料表に達する、というものであった。最終的に、ストライキの再発を恐れて、一番低い職種の初任時給を20.47ドルとして10年で元の給料表に達することで合意した。現在の初任時給は31.49ドルである。

 自動車のビッグ3でも似たような仕組みがあり、新規採用者は8年掛かって既存労働者の賃金レベルに到達する。自動車労働者は8年を過ぎた後も年金や健康保険などの付加給付で差別が残るが、このワブテック社エリ―工場では全員が同じ付加給付を受けられ、賃金が低い間は掛け金率が2割低くされている。

 このワブテック社エリ―工場での2月のストライキはトランプ政権になってから製造業では最大のストライキであった。6月12日、1700人の労働者たちは期限4年の労働協約を批准した。新規採用者の賃金を引き下げる二層賃金を受け入れたが、10年掛けて元の賃金水準に戻ることを認めさせ、その他の合理化案も撤回させた。ワブテック社はGEとの合併に際して、賃下げを認めなければエリー工場を閉鎖すると脅かしてきていた。

 新しい労働協約は、雇用を確保しただけではなく、協約期間中に100人の雇用を増やすことを謳っている。超過勤務を義務化し、工場労働者の2割を非組の派遣労働者に置き換える、という会社提案も押し戻した。

 さらに既に一時解雇されていた460人の組合員も優先的に呼び戻されることとなった。ワブテック社はGE社によって一時解雇されている労働者は再雇用しない、と主張していた。しかし、先任権を認めて再雇用することになったが、以前の賃金ではなく、新規採用の低い賃金を適用することで合意した。

 ワブテック社は43あった職種を17に減らすことを提案していたが、31に再編することで合意した。UEは職種統合により労働安全が脅かされる、と主張していた。

 恒久的な一時解雇に結び付く下請け化や事業譲渡の場合と苦情処理が適切に行われない場合はストライキ権を行使できる、という協約条項は維持することができた。

「新規採用の賃金が10年間引き下げられるのは皆が反対したが、会社側が譲らなかった」とUE委員長のピーター・ノールトンは語る。もし組合が妥協しなければ2回目のストが避けられず、敗北しただろう、とノールトンは考えている。敗北すれば、組合は地域社会の支持を失い、一時解雇されている460人も職場復帰できなかっただろう。なぜならワブテック社は再雇用する義務はないと主張していたからである。

 ワブテック社のエリ―工場は良い賃金を支払っており、組合員と家族にとってばかりではなく、地域にとっても不可欠の存在である。エリー市はクリーブランド市に近くエリー湖に面しており、ラストベルト地域の中にあり、周りの町と同じ将来不安を抱えている。かつては製造業の中心地だったが、工場移転や閉鎖により雇用が奪われてきた。1950年の13万1千人だった人口は9万6千人に減った。住民は貧しく、家計の平均値は年間3万5800ドルに過ぎない。

 「ワブテック社はこの地域で最大の製造業の一つであり、まだ家族を養える賃金を支払っている。」とUEローカル506のスコット・スローソン委員長は語る。「この労働協約の締結により地域は安心できたと思う。エリー市とエリー郡の将来の方向性を見出せた。」

 新しい会社との初めての協約であり、ワブテック社に対しては気を緩めるわけにはいかないと委員長は語っている。「GEとは82年に亘たる関係を持ってきた。次の4年間、労使ともに痛みを伴う関係を経験するだろう。」

 しかし、工場は高い熟練を持った労働者がおり、広大な敷地には労働力を追加する可能性もあるので工場の将来には楽観している。

                         


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