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国鉄も国労も知らなかったけど〜シネクラブで『人らしく生きよう』上映会

 3月21日、東京・品川区の「戸越スペース」で、レイバーシネクラブ例会が開催され『人らしく生きよう−国労冬物語』(ビデオプレス制作・2001年・劇場公開版)が上映された。以下、3つの報告を掲載する。
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●今につながるたくさんの問題提起……堀切さとみ(主催者)

 シネクラブは3月21日、『人らしく生きよう〜国労冬物語』の上映会を行った。劇場公開されて20年近くたった映画だが、「前から観てみたいと思っていた」「会場までの地図がほしい」という問い合わせが多く、参加者は21名。映画を制作した松原明さん、佐々木有美さんの解説も交え、とても深い討論になった。

 私事になるが、春になると、ストライキで電車やバスが止まらないかなあとワクワクしていた小学生だった。「春闘」が記憶に残る最後の世代も知れない。しかし、大学に入り社会問題に目を向けようとする私に「国鉄労働者は怠けている」「働きたくないから組合をやっている」という親戚からの攻撃が襲いかかった。当時はその真意がよくわからず、私自身労働運動に関心を向けることもなかったのだが、時を経て2008年に「市民メディアセンターMediR」の3分ビデオ講座で講師の松原さんが制作した『人らしく』のダイジェスト版を観て、ものすごい衝撃を受けた。

 組合つぶしはモノを言う労働者をなくすこと。ともに働き、ともに闘う仲間を分断することだった。「国鉄清算事業団」がどれだけみじめな場所かということだけは、メディアも報じていたように記憶するが、「仲間を裏切らない」「間違ったことはしていない」という国労組合員と、彼らを支える家族がいたことを、この映画を観て初めて知った。以来、DVDで何度も観たが、観るたびに新たな思いがわいてくる。

 上映会に参加してくれた人たちの中には、この映画の中にも映っている当時の国労組合員もいて、差別の実態などを話してくれた。また「分割民営化の時は小学生(中学生)で、組合は怖いものだと思っていた」という人や「自分は日教組で活動していたが、日本の組合は産業別だから、国労が何をしているのかわからなかった。映画をみてわかった」という人もいた。

 はじめての参加者も多かったので、全員に感想を語ってもらったが、国労はおろか国鉄さえよくわからないという人も。それでもこの上映会に来てくれたのは「人らしく生きる」姿をみたいという気持ちからではなかったか。「当時、国鉄労働者といえば憧れの職業。映画に出てくる人たちは、仕事が好きで一生安泰と思われていたのに分割民営化で絶望に追い込まれてしまった人たちでもある」と松原さん。明日は我が身、自分がそうなったらどうするか。

 「私は3・11後に社会に対する見方が変わるようになった。この映画に出てくる人たちのように声をあげる側でありたいと思う」という感想があった。これは国労の「光」の部分。闘争団家族の藤保美年子さんの壇上演説は震えるほど感動的だ。でも彼女がそうせざるを得なかったのは、闘いを引っ張ってくれるはずの組合幹部が腐敗したからだった。こうした「影」の部分が、この映画の肝になっている。だから、その時代や運動に詳しい人の昔話に終始するのでなく、今にどうつなげていくかという討論ができた。これが一番よかったことだ。

 組合がいいか悪いかではなく、どういう組合をつくらなければならないか。人と人が助け合い、支えあうとはどういうことか。他にもジェンダーの問題やメディア操作など、討論になるテーマがたくさん籠められている。色あせるどころでなく、今につながるたくさんの問題提起をしてくれる映画だと思う。

●安倍独裁は中曽根「国鉄民営化」に端を発している……大塚考史(参加者)

 荏原中延近くのマンションの集会場のような地下スペースで行われた上映会に行ってきた。監督もやって来ての20人ほどの上映会。分割民営化とそれに伴う国労潰しの実態はリアルタイムで知っていた。しかし2000年に至るまでのJRによる国労組合員に対する過酷な仕打ちの実態にまでは詳しく知らなかったが、それが描かれているドキュメンタリー映画だった。

 中曽根康弘による労働運動潰しを意図した国鉄民営化がこうも易々と成功してしまった背景には、マスコミを抱き込む権力側の周到な準備があったと思っている。小泉純一郎の新自由主義、そして安倍晋三による大政翼賛会的世論操作、全ては中曽根康弘による国鉄分割民営化に端を発しているとも思っている。

 課題は今のその状況を如何にして打破して安倍独裁を葬るかということ。上映会のあとでの車座での意見交換、そして場を変えての2次会も有意義だった。新たにFacebookで繋がる人も出来た。こういう上映会は月イチでやったいるとのこと。次回の4月27日が楽しみだ。

●「一人ひとりが主人公の労働運動」とは……松原明(制作者)

 3月21日のレイバーシネクラブでビデオプレス制作の『人らしく生きよう−国労冬物語』を上映させていただきました。最近は上映の機会も少なかったのでありがたかったです。初めて見た人も多かったです。2001年の作品で社会状況も変わり、反応が気になりましたが、今につながる作品として受け止めていただきました。でも「総評」「地労委」「中労委」など組合用語も多く、そこで「なんのこと」とひっかかる人もいました。そもそも「国労」「国鉄」も知らない世界かもしれません。

 ディスカッションでは、この映画をこれからの時代にどう活かしたらいいのか?という問題提起がありました。この作品が問うているのは、労働組合運動のあり方でもあります。政府・当局に立ち向かい戦闘的と言われた国労ですが、いっぽう上意下達、幹部請負の運動になっていたことも事実です。国労の光と影といえます。それが被解雇当事者の意志を無視することになってしまいました。

 2000年の7.1国労臨時大会で闘争団・家族が立ち上がり「私たちの人生を勝手に決めないでください!」と叫び、演壇占拠をして本部の闘争終結を止めました。このとき、「一人ひとりが主人公の労働運動」を取り戻した瞬間でもありました。一人ひとりが主人公の運動がつくられたとき、権力に対してももっとも強い力が発揮できるのだと思います。

 日本の現代史、リストラの原点、労働運動の原点を描いたこのドキュメンタリーを、これを機会に多くの人に観てもらえればうれしいです。

〔追記〕ディスカッションでは本当にいろんな角度から、さまざまな感想・意見が出て面白かったです。この映画の育ての親でもある木下昌明さんは、短いコメントでしたが印象的でした。「ひさしぶりにみたが、きょうの上映でも参加者に好評でよかった。三人の映画の主人公が二人もなくなっている。あんなに頑張った人がなくなる。人生って何だろうと思った。それから『地の塩』もそうだったが、いざとなると男はだめだが女性はすごい、底力があることをまた痛感した」と語っていました。
 それからFBの大阪の友人からもメッセージがありました。「組合つぶし、民営化。ここから今の日本社会が一気に歪んでいった。まさに人らしく生きることが困難な時代になってしまった。その意味でも見て貰いたい作品です」と。

*作品の詳細は以下をご覧ください。DVDによる上映会は大歓迎です。 http://vpress.la.coocan.jp/hito.html

*次回のレイバーシネクラブは4月27日(土)。5月1日の新天皇即位を前に天皇の戦争責任を問う反戦映画を予定している。詳細は後日。


Created by staff01. Last modified on 2019-03-23 12:30:24 Copyright: Default

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