(抄訳)フランスの黄色いベスト運動:「エコロジー」「ネオ リベラリズム」「非政治性」の間 | |||||||
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小倉利丸です。以下に訳出したのは、Crimethincに掲載された「黄色いベスト」運動の分析で ある。この論文の後半部分を訳出しました。この運動への評価は様々ありますが、私の意 見とかなり近い立場の文章だと思います。これまでの経緯や、極右の介入の具体的な状況 、この運動への参加の是非についての議論などみの言及されています。この文章が書かれ た段階では、極右の介入を払拭できていないことにこの匿名の著者は危惧しています。わ たしも、やはり、赤旗も黒旗もない運動の奇異なことや、いくつかの宣言なども出される 一方で、この運動にはリーダーがいないとも称されているとすれば、誰がどのように文書 などの合意形成を行なっているのか、全体の行動の意思決定をしているのか、集団である 以上、デモであれ封鎖であれ、ステートメントであれ、意思決定の仕組みは必ずあると思 います。それが見えない不透明感に僕は違和感があります。この運動に好意的なご意見の 方や期待を寄せているであろう皆さんに水を差すつもりはなく申し訳ないのですが、率直 な感想として。 下記の文章は11月27日のものです。そのあとで、Crimethincには新たなレポートが投稿さ れています。 下記のサイトをごらんください。 https://crimethinc.com/ なお、わたしのブログには、写真なども含めてオリジナルのレポートの抄訳を掲載してあ ります。 https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/2018/12/08/yellow_vest_crimethi nc/ =================== 出典 https://crimethinc.com/2018/11/27/the-yellow-vest-movement-in-france-between-eco logical-neoliberalism-and-apolitical-movements 数週間前、マクロン政権は、2019年1月1日に再びガソリン増税をし、全面的にガソリン価 格を引き上げると公式に発表した。 この決定は、「グリーンエネルギー」への移行の一 歩とだと正当化された。 ディーゼル車は、通常のガゾリン車より安価なのでフランスの車の3分の2を占める。政府 は、何十年もの間ディーゼル車購入を促進する政策をとってきた後で、ディーゼル燃料は もはや「環境にやさしい」ものではなく、人々は車と習慣を変えるべきだと決めつけた。 マクロンは、政権当初、超富裕層の所得税減税を実施した。たとえ裕福層がエコロジー的 に有害な産業活動が生み出す利益から恩恵を受けていたとしても、エコロジー的に持続可 能な技術に移行するために富裕層の課税を利用することはなかった。その結果、マククロ ンのガソリン税に対するエコロジーについての議論はほとんど無視されてきた。多くの人 々は、貧困層に対するもう1つの攻撃として、ガソリン税増税の決定を理解したのだ。 フランス政府は、エコロジーと労働者のニーズとの間に、この誤った二分法を作り出した 責任がある。何十年にもわたる空間計画で、大都市圏では経済活動と雇用機会が集中して 公共交通機関が発達したが、農村部は隔離され、他に選択肢がなければ、多くの人々は現 在では、完全に車に頼って生活し、仕事をする状態になった。 Macronのガソリン増税の発表に対して、インターネット上での組織化が始まった。ガソリ ン価格上昇に反対するいくつかの嘆願がオンライン署名(https://www.change.org/p/pour -une-baisse-des-prix-%C3%A0-la-pompe-essence-diesel)でウィルスのように広がり、本 稿執筆時点で、100万の署名に逹っした。その後、2018年9月17日、運転手の団体は「燃料 の過剰な課税」を非難して、メンバーに課税を認めないことをしたためた手紙とともにマ クロン大統領にガソリン支払いのレシートを送りつける運動を始めた。2018年10月10日に 、2人のトラック運転手がFacebookのイベントを作成して、2018年11月17日にガソリン価 格の上昇に対して全国的な封鎖を呼びかけた。その結果、FacebookやTwitterで、大統領 の決定への攻撃が行なわれ、いかに自分達の経済状況が苦しいかを説明し、増税はこうし た状況を悪化させるだけだと主張した。 全国的な呼びかけの前夜には、全国の約2000のグループが、道路、有料道路の料金所、ガ ソリンスタンド、および製油所を封鎖する意思を表明したり、少なくともデモを実行した 。 この日、誰が参加者かがわかるように、デモ参加者は黄色の緊急用ベストを着用すること を決め、車にこのベストを表示することで、共感する人々に行動の支援を意思表示するよ う呼びかけ。このベストというシンボルの意味は、すぐに十分理解できるものだ。フラン スの運転手は、運転中に事故その他の問題が発生した場合に備えて、車内に緊急用ベスト を保管することが義務づけられている。自動車依存を考ると、生活条件が悪化する恐れが あることから、抗議者はこれらの緊急用ベストをマクロンの決定に対する抵抗の象徴とし て選んだ。そして、抗議者とメディアは「黄色いベスト」運動と呼ぶようになった。 11月17日の週末に何千もの行動が起きた。全国封鎖の最初の日(https://www.lemonde.fr/ societe/article/2018/11/17/mouvement-des-gilets-jaunes-une-manifestante-tuee-dan s-un-accident-a-un-barrage-en-savoie_5384852_3224.html?xtmc=gilets_jaunes&xtcr=4 )には、約288,000の「黄色いベスト」の抗議者が路上にいた。特に労働組合や他の主だっ た組織からの支援を受けていなかったことを考えれば、これは、この運動の成功だった。 残念なことに、 「黄色いベスト」と他の人たちとの間で争いが起きて事態が悪化した。 60代の女性で「黄色いベスト」の抗議者が、病気の子どもを医者に連れて行こうとして封 鎖を突破しようとした母親の運転手に殺され、黄色いベストの人々が車を叩き始めた。全 部で400人以上が負傷し、1人の抗議者が殺され、その週末に約280人が逮捕された。 こうした事件にもかかわらず、運動は依然として強く、参加は減少したが、封鎖は翌日も 続いた。政府への圧力を維持するために、「黄色いベスト」は、次の土曜日11月24日(土 )に全国行動を呼びかけた。再びFacebook上で、様々な「黄色いベスト」グループが、フ ランス全土での行動とデモを企画し、大規模デモでパリに集結するよう呼びかけた。 当初このデモは、エッフェル塔近くのシャン・ド・マルスで計画されたが、そこを法執行 機関が抗議者を取り囲んで閉じ込めた。しかし、この公式決定に満足しない一部の「黄色 のベスト」がおり、ソーシャルメディア上で別の呼びかけがなされた。11月17日のパリで のデモは、その目標である大統領府には到達できなかた。その結果、パリに集結していた 「黄色いベスト」たちは、11月24日に再度挑戦することを決めた。エッフェル塔下に集ま るよりもむしろ、人々は強力な象徴的地位をもつシャンゼリゼに結集して封鎖した。この 豪華な通りは、パリで最も訪れる人の多いところで、マクロン大統領が住むエリゼ宮殿は 、この道の終点にある。 彼らが前の週にやったように、デモ隊は大統領府にできるだけ近づこうとした。バリケー ドを作っての対峙(https://www.youtube.com/watch?v=3IvJSVUsPfw)が、最も有名なパリ の通りで終日行われた。この第2ラウンドの行動は、フランス全土で約10万6000人が集ま り、パリでは約8000人(https://www.nouvelobs.com/societe/20181126.OBS6007/les-port e-parole-des-gilets-jaunes-contestes-avant-meme-d-etre-nommes.html)が集まったと 報じられている。これらの数字は、運動が勢いを失っていることを示唆している。パリの デモ中に、衝突で24人が怪我をし、103人が逮捕された。うち101人が拘束された。(https ://www.lemonde.fr/societe/article/2018/11/25/manifestation-des-gilets-jaunes-sam edi-a-paris-plus-de-cent-gardes-a-vue_5388345_3224.html)最初の裁判が11月26日月曜 日に行われた。 この運動はどのような性格のものなのか? 「黄色いベスト」運動は、自発的で水平的であり、指導者のいないものとして描かれてい る。この主張を確証することは困難だ。この運動はソーシャルメディアを介して開始され 、これが、何を自分がやりたいのか、どのようにやりたいのかをローカルで決める脱中心 的な行動を促進した。この点で、明らかに何らかの水平に組織するような事態があること は明らかだ。 この運動が本当に指導者のないものかどうかについては、もっと複雑だ。最初から、「黄 色いベスト」は、自分達の運動が「非政治的」で、指導者はいないと主張してきた。代わ りに、彼らは共有された怒りに基づいて一緒に運動する人々のいくつかのグループの有機 的な努力によるものだされた。 にもかかわらず、実質的にすべてのグループ―アナーキストのプロジェクトも含めて―権 力のダイナミクスが存在する。多くの場合そうであるように、リソースへのアクセス、説 得力、または単に新しいテクノロジーのスキルによって、他の人よりも多くの影響力を蓄 積する者がいる。「黄色のベスト」運動の自称スポークスパーソンの一部をよく調べてみ ると、運動の中で誰が影響力を蓄積し、彼らのアジェンダが何であるかがわかる。 ・クリストフ・シャレンソン(Christophe Chalençon)はヴォクリューズ県のスポークス パーソンだ。 彼は「非政治的」であり、「いかなる労働組合にも属していない」として いるが、2017年の選挙では「別の右翼diverse right」のメンバーとして立候補した。彼 の個人的な関係やFacebookのプロファイルを詳細に調べると、彼の議論は明らかに保守的 であり、ナショナリストであり、外国人嫌いであることがわかる。(http://www.revoluti onpermanente.fr/17-novembre-qui-sont-les-gilets-jaunes) ・リモージュでは、11月17日行動の「黄色いベスト」の地域オーガナイザーは、クリスト フ・レッシヴァリエ(Christophe Lechevallier)だった。この 「怒れる市民」のプロフ ィールはなかなか興味深い。少なくとも、クリストフ・レッシヴァリエは変節者(https:/ /labogue.info/spip.php?article302)だと思われる。2012年に、彼は中道政党(MoDem) のメンバーとして選挙に立候補した。その後、極右の国民戦線(現在の国民連合Rassembl ement National)に加わり、2016年にそのリーダーのマリー・ルペンを集会に招待してい る。その間、彼はまた、フランスのGMO推進で生産を増強のために、グリホサート(除草剤 :訳注)などの化学物質の使用を擁護することで知られている農業組織FNSEA(the Nation al Federation of Agricultural Holders' Unions)と協力している。 トゥールーズでは、「黄色いベスト」の広報担当者はベンジャミン・コーシー(Benjamin Cauchy)だ。この若手エグゼクティブは、国内外のメディアで何度かインタビューを受け ている。 彼の過去を考慮すると、このスポークスパーソンはほとんど「非政治的」とは いえない。ベンジャミン・コーシーは伝統的な新自由主義的右翼(当時、当時はUMP、現 在はLes Républicains)のメンバーとして政治的経験があることをおおっぴらに語って いる。ロースクールでは、ベンジャミン・コーシーは学生組合UNI―保守的な右翼や極右 諸政党、団体と関係があることで有名―の指導者(https://france3-regions.francetvinf o.fr/occitanie/haute-garonne/toulouse/toulouse-qui-est-vraiment-porte-parole-gil ets-jaunes-benjamin-cauchy-1578957.html)の1人だった。しかし、さらに興味深いこと に、ベンジャミン・コーシーは、現在、先の大統領選挙でマクロンを落選させる期待をも って大統領選挙第二回投票で国民連合のマリー・ルペンと連携したナショナリストの政党 Debout La France(https://iaata.info/Gilets-jaunes-Cauchy-bruns-2874.html)のメン バーであることを公然とは認めていないことだ。 したがって、保守的極右のグループは、この「怒れる市民の非政治的運動」を、彼らの議 論を押しつけ、自分たちの考えを広げ、より多くの力を獲得する手段として利用しようと 期待していることは明らかだ。こうした傾向は、全く阻止されていない。トゥールーズの 「黄色いベスト」は、彼の政治的見解ヲ理由に、ベンジャミン・コーシーを運動から排除 することを決めた。(https://france3-regions.francetvinfo.fr/occitanie/haute-garon ne/toulouse/toulouse-gilets-jaunes-rejettent-benjamin-cauchy-qui-se-disait-leur- porte-parole-1581453.html)11月26日、ラジオ番組に招待されたコーシーは、排除への応 答して、増税反対の運動を続けるために、「Les Citrons"(レモンズ)」という新しい全 国組織を創設し、この機に乗じて「黄色いベスト」運動の中の民主主義の欠如を非難した 。 最後に、いわゆる「リーダーのいない運動」は、第2回のパリのデモの余波の中でその戦 略を完全に変えたように見える。11月26日月曜日、この運動の8人の公式スポークスパー ソンのリストが報道陣に提示された。たしかに、その前日、黄色いベストたちは、新たな 指導的な人物たちを選ぶためのオンライン選挙を提起していた。これらの人々のノミネー ションと戦略的意思決定がすでに運動の中の緊張を作り出している。これらのリーダーが 最初にどのように選出されたかについて疑問を投げかけ、黄色いベストの中には、選挙の 正統性(https://www.nouvelobs.com/societe/20181126.OBS6007/les-porte-parole-des-g ilets-jaunes-contestes-avant-meme-d-etre-nommes.html)を批判する人もいる。 一方、運動の一部のメンバーは12月1日土曜日に別の日の行動を呼びかけた。その要求は 明確だ。1)購買力を増やすこと、 2)すべてのガソリン税の撤廃、である。このような要 求が認められなければ、デモ参加者は「マクロンの辞任に向けて進撃する」と述べた。 今のところ、27,000人がこのイベント(https://www.facebook.com/events/5914209812756 39/)に参加すると表明した。いくつかのローカルのオーガナイザーたちが、運動が採用し ているように見えるより一層対立的な方針に反対して、運動から離れるというように、数 週間前の掛け声が雲散霧消しつつあるようにも見える。 商業メディアの報道は、組織の水平性に注目するのではなく、別の問題に焦点を当ててい る。つまり、抗議者の怒りは正統なものか?ということだ。 多くのメディア報道は、この運動が環境保護に反対する未知の低所得者から成るものと示 唆している。彼らは、参加者の怒りの正当化を避けるために、デモを暴力的なものとして 報じている。それにもかかわらず、いくつかのメディア報道は、時間の経過とともに討論 中心へと移り、デモ参加者の懸念がより多く放送されるようになり、参加者を見下すよう な報道が減るようになった。例えば、先週土曜日のシャンゼリゼでの対峙の後で、Christ ophe Castaner新内務大臣は、「損害額はわずかで、ほとんどが物的な損害で、それが最 も大きかった」と述べた。(https://www.lemonde.fr/societe/article/2018/11/25/manif estation-des-gilets-jaunes-samedi-a-paris-plus-de-cent-gardes-a-vue_5388345_3224 .html)メーデー(https://crimethinc.com/2018/05/15/riders-on-the-storm-a-blow-by-b low-report-and-analysis-of-may-day-2018-in-paris)やLoi Travail(https://crimethin c.com/2017/04/19/from-the-loi-travail-to-the-french-elections-a-retrospective-on -social-upheaval-in-france-2015-2017)に対する抗議で、商業メディアや政治家が同じ 様な行動をどのように罵倒したかを考えてみると、驚くべきことである。 私たちの視点からすると、彼らの怒りが正当なものであることは間違いない。この運動に 参加するほとんどの人々は、毎日対処しなければならない困難な生活状況を語っている。 彼らは、もううんざりで、ガソリン問題で堪忍袋の緒が切れたのだ、というのにはそれな りの道理がある。低所得層は生き残るために苦労しなければならず、他の人々は経済の転 換や消費者対象の増税の影響を受けることのない快適な暮しを享受している。今は少なく とも。 したがって、怒りと直接行動は正当なのだ。問題は政治的ビジョンとこの運動を推進して いる価値が何らかの良いものと結びついているかどうかだ。 混乱状態 多くの人種差別主義者、性差別主義者、同性愛嫌悪者の行動(https://www.nouvelobs.com /societe/20181119.OBS5650/gilets-jaunes-racisme-homophobie-violences-et-autres-d erapages.html)が黄色いベスト運動の中で行われてきた。11月17日のパリでのデモでは、 よく知られている反ユダヤ主義者や民族主義者(http://lahorde.samizdat.net/2018/11/2 2/paris-des-antisemites-sous-les-gilets-jaunes/)が、デモ参加者の群衆の中にいた。 パリでは、右翼やナショナリズトのメンバーが11月24日のデモに参加した。一部の同志は 、パリのデモでは、極右の存在が「否定できない」と報告している。(https://nantes.in dymedia.org/articles/43681)群衆は、衝突時に法執行機関が使用した放水銃と比べれば 、彼らの存在は「重要ではない」と考えた。 同じレポートで、解釈の難しいいくつかの要素にも言及されている。例えば、パリの群衆 は1968年5月の古典的なスローガン(「CRS SS」)(https://crimethinc.com/podcast/23) やLoi Travail(https://crimethinc.com/2017/04/19/from-the-loi-travail-to-the-fren ch-elections-a-retrospective-on-social-upheaval-in-france-2015-2017)のデモのスロ ーガン(「Paris debout、soulève toi!」)を唱えたが、マルセイエーズの一番の歌詞 を唄う者もいた。この歌詞は、現在では伝統的な共和党や極右に関係するもので、ラディ カルズとは無関係だ。この歌詞はフランス革命の起源を示す言葉として理解できたが、こ の曲はフランス国歌の役割を果たし、愛国的でナショナリズトの調子をもつものになって いる。 もう一つの例:シャンゼリゼを下っている間、群衆は「私たちは家にいる」を叫んだ。英 語を話す読者にとっては、このコールは、デモ参加者が街頭を占拠していると主張してい るもので何ら問題ないように見えるかもしれない。しかし、このシュプレヒコールは、国 民戦線の支持者が集会で通常使うものの真似だ。ナショナリストにとって、フランスは常 に白人、キリスト教徒、ナショナリストの国であり、これからもそうであることを意味し ている。したがって、彼らのアイデンティティと政治的アジェンダに合わない人は、誰で あれ余所者、または侵入者とみなされる。言い換えれば、このスローガンは、誰が自分達 に帰属するのか、誰がそうでないのかの物語を作り出す。黄色いベストのデモ中にこれら の言葉を使用することは、不吉とは言わないにせよあまりにもお粗末な選択だ。 反動的な傾向が運動のなかに登場したのはパリだけではない。11月17日、コニャックで黄 色いベストの抗議者が車を運転している黒人女性を襲った。(https://www.youtube.com/w atch?v=Y5cIeR2t4Kk)口論の中で、抗議者たちは彼女に「自分の国に帰れ」と言った。同 じ日、Bourg en Bresseで、選出された代表と彼のパートナーが同性愛者であるとして暴 行された。ソンム県では、移民がトラックにすしづめになっていることに気づいた黄色い ベストの幾人かが移民警察に通報した。こうした事例はまだ他にもある。(http://lahord e.samizdat.net/2018/11/24/gilets-jaunes-ni-macron-ni-fachos/) 最後に、この「非政治的」運動の一部の参加者は、より良い教育の運動、病院を守る運動 、医療アクセス、鉄道労働者の運動など、社会運動全般への侮辱を公然と表明している。 実際には、集団闘争から自分自身を切り離し、「誰にでも」利益をもたらすことを目的と するこの運動は、個人主義的な自己利益の促進に終わる。 どのように関わるべきか? アナキズムや左翼の中で、参加すべきだと考える人々、そして距離を保つべきだと考える 人々といったように、「黄色いベスト」現象にどのように取り組むかについて2つの異な る考え方が確認できる。 ** 距離を置く議論: ・黄色いベスト運動は「非政治的」であると主張する。概して、参加者は自分を一所懸命 に働きつつも税金や政府の決定の最初の犠牲者でもあるということで不平をもつ市民だと いう。この言説は、1950年代のPoujadisme運動とよく似ている。反動的でポピュリストの 運動で代議士のピエール・ポウハデ(Pierre Poujade)の名前に由来するものだ。または 、最近では「ボンネッツ・ルージュ(Bonnets rouges)」運動(「レッド・ビーニーズ」 )(http://lahorde.samizdat.net/2013/11/30/bonnet-rouge-et-chemise-brune-habille- pour-lhiver/)とも似ている。 ・この運動が「非政治的」であるという考えは、極右のオーガナイザー、ポピュリスト、 ファシストが抗議者の間に浸透する絶好の機会を提供するという点で危険だ。言い換えれ ば、この動きは、極右が自らを再構築して権力を獲得する機会を提供してしまう。(https ://nantes.indymedia.org/articles/43587) ・運動が広範に注目を集めるやいなや、極右の政治家、マリー・ルペンなどの保守派やポ ピュリストたちが、これを支持を表明する。「政治的」であるという話はここまでにしよ う! ** 運動に参加することを支持する議論: ・これは、低所得者を巻き込んだ真の自発的で分権的な運動のようにみえる。理論的には 、私たちは資本主義や国家の抑圧と闘うために彼らと一緒に組織しなければならない。念 のために言っておくが、階級戦争と反資本主義のコンセプトは、デモ参加者の間で受け入 れられたり、促進されたりしているとはとうていいえない。 ・私たちは、ファシストが運動とそれが表す怒りを吸い上げるのを防ぐために参加すべき だと主張する人もいる。一部のラディカルズは、人々との新たなつながりを作り、資本主 義や経済危機への対応方法を広げる手段として、こうした行動に参加すべきだと考えてい る。 ・一部のラディカルズにとって、現在の運動に懐疑的で、参加したくないというのは、「 非政治的」な貧困層に向けたある種の階級的な軽蔑を示唆するものになる。他の人たちは 、どのような状況にあっても、観客ではなくアクターを目指すべきだと主張する。私たち が「真の」革命家であれば、遠くから受動的に批判するのではなく、未知のものへと飛躍 し、可能なことを発見する必要があると主張する者もいる。 これらの議論は全て根拠のあるものだが、ファシストに大衆をリクルートするプラットフ ォームを提供するような運動にアナキストが参加するのであれば、ウクライナ革命(https ://crimethinc.com/2014/03/17/feature-the-ukrainian-revolution-the-future-of-soci al-movements)でアナキストがやってしまったように、もっと悪いカタストロフィに道を 開く災害になるだろう。 黄色いベスト運動の根本的な問題は、私たちみながまず最初に廃止しようとして闘ってき た諸条件を維持しようとする間違った前提から始まった点にある。今日の疎外された悲惨 な生活様式を守るためではなく、こうした生活は労働運動の敗北と裏切りのこの一世紀の 結果であって、なぜ私たちは車やガソリンにそんなに依存しているのかをまず最初に問う べきなのだ。私たちのサバイバルとか旅のやり方が、これほどまで孤立し個人化されるよ うなやり方で構築されなかったとすれば、あるいは、資本家が無慈悲に私たちを悪用する ことができなかったとすれば、私たちは、環境を破壊するか、それとも財政的安定の最後 の名残りを断念するかのどちらかを選択するといった必要はなかったはずだ。 私たちは自分の習慣を変え、もうひとつの世界(またはもう一つの世界の終り)のために 闘う過程で私たちの権利を放棄しなければならず、政府と資本家は、いつも、彼らが引き 起こした問題の矛先を私たちに耐えさせている。私たちは、彼らに議論の枠組みを設定さ せてはならない。そこでは、すべての戦略的拠点(港、空港、県)がブロックされている 。 開かれた問い ちなみに、状況はフランス本国の外ではかなり異なっている。レユニオン島(https://lun di.am/Le-mouvement-des-Gilets-Jaunes-a-la-Reunion))フランス共和国の海外県ならび に海外地域圏(レジオン)である。マダガスカル島東方のインド洋上に位置:訳注)では 、11月17日以来、社会的大変動があった。状況のコントロールを失い、経済に影響するこ とを懸念(https://lundi.am/Le-plaisir-de-ne-rien-branler)して、フランス当局は11月 20日に、11月25日まで夜間外出禁止令を出した。 ヨーロッパでは、黄色のベスト運動がリーダーシップ問題と戦略上の対立によって弱体化 した後、再構築を模索しており、これが新しいかけはしとなり、この動きの原因となった 問題に対するより体系的な解決策を築き、提案する機会になるかもしれない。 エコロジーに関しては、富裕層は主に気候変動に責任者があり、これを解決するための負 担を負わなければならないということを強調すべきだ―私たちがまず最初に彼らを引きず り下すことができないのであれば。ある程度までは、これは、現在の資本主義と気候変動 に対する阻止運動として、イングランドでExtinction Rebellion(https://rebellion.ear th/)がやろうとしている動きにみられると思う。資本主義とエコロジーに関する2つの異 なる封鎖運動が、今のところイギリスの各々の回路―一方は国家へのエコロジーの要求、 もう一方は国家の環境対策に対する反動―で行われているのは皮肉なことだ。 ナショナリズムについては、私たち自身の人種、ジェンダー、宗教の市民による悪用のほ うが外国人によって悪用されるよりましだなどということはない、ということを主張しな ければならない。私たちが、様々な異なる戦線―人種、ジェンダー、市民権、そして性的 嗜好―全てを横断した連帯を確立するばあいにだけ、私たちを抑圧し搾取する者たちに立 ち向かうことができる。ということを強調したい。私たちは、11月24日にフェミニストの 行進を歓迎して栄誉を捧げたモンペリエの黄色いベストの抗議者からインスピレーション を得た。(https://twitter.com/ortega_stef_/status/1066331955166359553) とりわけ、私たちは、社会運動の領域内に、反資本主義者、反ファシスト、反性差別主義 者、エコロジーの前線を必要としている。問題は、それが 「黄色いベスト」の運動の中 で起こるべきか、それともそれに対抗して起こるべきかにある。 Created by staff01. 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