奴隷労働は変わらず/アマゾン「時給15ドル引き上げ」の背景 | |||||||
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〔解説〕11月号のレイバーノーツ誌はアマゾン社での最低賃金引上げの記事を掲載している。アマゾン社は従業員35万人の最低賃金を時給15ドルに引き上げることを10月2日に発表した。当該のアマゾン労働者たちがこの決定をどう感じているのか、今後のアマゾンでの労働者の運動の課題を指し示している記事を翻訳した。(レイバーネット日本国際部 山崎精一) アマゾンで時給15ドルを超えてジョナサン・ローゼンブルム(全米自動車労組フリーランス著述者組合)
アマゾン社は増大する組織化攻勢と政治的圧力を受けて、アメリカ本国の労働者の最低賃金を時給15ドルに引き上げ、英国の労働者の賃金も引き上げることを10月初めに発表した。 この決定の数か月前からアマゾン批判が高まっていた。米国では大勢の労働者がアマゾンでの作業スピードが厳しく、労働災害も多く、倉庫では奴隷労働のようだと、声を上げ始めていた。英国のジャーナリストはアマゾンに潜入して働きその結果を本に書き、労働者たちがペットボトルに排尿することを強いられ、うつ病の発生率が異常に高いことを暴露していた。ドイツ、ポーランド、スペインのアマゾン労働者は劣悪な労働条件に抗議して、アマゾン最大のセールス日の6月にストライキを打った。 バーニー・サンダース上院議員はアマゾンの賃金があまりに低いので、その労働者の多くが食料、住宅、医療などの生活保護を受けていると批判していた。さらに最賃15ドルを求めるファイト・フォー・フィフティーン運動もマクドナルドなどの企業への賃上げ攻勢を派手に展開していた。 アマゾン経営陣はこの決定は譲歩ではなく、開明的な経営判断であると主張している。「わが社は批判に耳を傾け、何を目指すのか真剣に考え、業界の先頭に立つことを決定した。」と創立者で最高経営責任者のジェフ・ベゾスは語っている。体制側はアマゾン社の労働者思いの決定をほめちぎっている。アマゾン本拠地のシアトル・タイムズ紙は「素晴らしい決定」と称えた。「アマゾンは最高、ネット最大手の時給15ドルを称える」とニューヨーク・デイリー・ニューズの見出しは告げている。 奇妙な算術現場の見方はもう少し複雑である。賃上げはもちろんアマゾンに対する長期にわたる圧力の成果ではあるが、宣伝しているほど気前の良いものではない。ケンタッキー州やサウスキャロライナ州のような低賃金の州では時給2ドルか3ドルの引き上げにはなるかも知れない。しかし、多くの労働者、特に大西洋岸と太平洋岸の倉庫労働者はすでに時給15ドル近く取っている。さらに会社は従業員の自社株購入権とボーナスをなくすと通告した。倉庫に働く正社員はこの二つの収入を足すと15ドルを超えていたが、それが奪われた。多くの正社員の賃上げはごくわずか、もしくは減る場合もある。そこで翌週にはアマゾンはフルタイム労働者にはボーナスがなくなった分の追加賃金を支払うと譲歩した。これによってどの程度救われるかはまだはっきりしない。確かなことはこの賃上げによってアマゾンの経営が危なくなることはないということである。 35万人の従業員に15ドルの最低賃金を支給するのに必要な費用は純資産の0.1パーセントにも満たないと思われる。ほんのわずかだ。 賃上げが発表されたのは10月2日。ニュージャージーの発送センターで所長が夜勤労働者に対して賃上げを興奮気味に伝えたが、聴き手は無言だったと、その一人は語っている。人事の職員が大げさに拍手してからみんなもお仕着せの拍手をするようになった。その労働者によると、生活が苦しいので賃上げは受け入れるが、仕事のスピードがきついので「みんな会社を嫌っている。奴隷扱いされていると感じている。」 シアトル郊外の倉庫で働く労働者たちはこの賃上げはサンダース上院議員のおかげだと語っているし、配送センターのあるパート労働者は「みんなが組織的に声を上げたからだ。」と語った。しかし、アマゾン労働者の問題は低賃金だけではない、と続けた。労働者の悩みは、いつもとんでもない生産性を要求されること、管理職によるひどい扱い、労働災害の多さ、際限のない疲労と退職の多さである。 これらの問題の根源は労働者に非人間的な搾取を強いる経営のあり方である。ヨーロッパでは多くのアマゾン労働者が労働組合に入り、ストライキを打って勝利しているが、アメリカではこの巨大企業に要求を突きつけるに足る数の労働者が組織化されていない。 組織化せよ!この華々しい賃上げ発表によって組織化を防ぐことができるのだろうか?シアトルの労働者は全く反対だ、と言っている。アマゾンは圧力には対応することを今回の賃上げは示しているので、組織化に向けて自信が高まるだろう、と語る。アマゾンを大きく動かすにはもっと運動を強める必要がある。私がこの一年間会って話してきたアマゾンの労働者たちは、会社はひどい労働環境を変えるのは強いられた時だけだということを認めている。それは労働者が労働組合を結成し、消費者などの味方と連帯して、事業を妨害して収益に打撃を与える力を持っていることを示した時である。 この6年の間に量販店ターゲット、ウォルマート、コストコのような大企業が金銭的に譲歩することにより、もっと根源的な重要な要求、真の労働者の力への要求を防止しようとしてきた。今アマゾンがこれらの企業の仲間入りしようとしている。 評論家たちはベゾスCEOを称賛しているが、それは全くの見当違いである。称えられるべきなのは労働者である。ひどい労働環境を耐え、アマゾンから大きくはないが画期的な譲歩を引き出し、この巨大企業の中に一歩ずつ労働者の力を築くために闘い、学んでいるからである。これから長期にわたるその闘いが勝利すれば周りの皆が引き上げられるだから、私たちはその闘いを支持する必要がある。 はっきりさせよう、最賃15ドルでは全く不十分である。新しいもっと大胆な要求を掲げる時である。それはひどい労働環境と恥ずべき搾取を改めさせ、全て労働者に人権、安心と力を授ける社会的取り組みを要求するものである。 Created by staff01. Last modified on 2018-11-26 09:11:28 Copyright: Default |