本文の先頭へ
LNJ Logo 長澤運輸の不誠実団交事件/東京都労働委員会が組合勝利命令
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1220zen01
Status: published
View


長澤運輸の不誠実団交事件〜東京都労働委員会が組合勝利命令


*写真=長澤運輸

労契法20条裁判のあの長澤運輸の不誠実団交事件で定年後再雇用者の労働条件見直し問題、長澤社長が出席して誠実に交渉を行え

 12月13日、定年後再雇用者の賃下げ問題で労契法20条裁判がつづく長澤運輸に対し、東京都労働委員会が、組合が裁判とは別に申し立てていた不誠実団交事件で、組合側の全面勝利命令を下した。再雇用者の賃金水準見直し要求について、会社が社長を団交に出席させず、経営状況を示す資料も提出せずに形式団交をつづけたことを不当労働行為と認定したもの。

●長澤尚明社長の団交出席を命令

 東京都労働委員会の命令は組合の主張をほぼ全面的に認める内容で、しかも不誠実団交事件の命令としては極めて異例なことに、代表取締役自身が出席して誠実に団体交渉を行えと主文に明記するものとなりました。要旨は以下の通りです。

1.長澤運輸は、組合が申し入れた定年退職後再雇用者の労働条件や賃上げ等を議題とする団体交渉に、代表取締役が出席し、又は代表取締役が出席できない場合はその合理的な理由を説明して実質的な権限を十分に付与した者を出席させた上で、自らの主張の裏付けとなる資料を提示して具体的な説明を行うなどして誠実に応じなければならない。

2.長澤運輸は、命令受領の日から1週間以内に、「当社の対応は、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。今後、このような行為を繰り返さないよう留意します」と書かれた文書を組合に交付しなければならない。

●再雇用者の賃金見直し要求に対し、社長不在で形式団交くりかえす

 長澤運輸(本社横浜市、代表取締役長澤尚明)は宇部三菱セメントの専属輸送会社。建設現場に大型トラックでセメントを運搬するドライバーに対して、定年前とまったく同一の業務を同一の就労内容で行わせているにもかかわらず、定年後再雇用者の賃金を大幅に切り下げ、基本給の5カ月分の年間一時金もゼロにするなど、3割前後の年収ダウンを強いています。

 組合(全日本建設運輸連帯労働組合関東支部)は、このような労働条件切り下げは労働契約法20条違反にあたるとして裁判をおこす一方で、これとは別に、春闘などの団体交渉において、正社員と同一にすることができないまでも、会社の経営状況からみれば、どの程度の水準までに引き上げることができるのか、会社経営の状況を示す資料をもとに見直し協議を行うよう求めてきました。(裁判そのものは最高裁に係属中)

 ところが長澤運輸は、再雇用者の賃金は経営状況をもとに決定したのではないから見直す必要はないと主張。組合がその根拠資料や経営状況を示す資料にもとづいて協議するよう再三にわたり申し入れても、資料は一切出さず、長澤尚明社長も団交に出席せず、権限のない営業所長と代理人弁護士だけを出席させて、中身のまったくない形式的な団交をくりかえしてきました。

 また、正社員の賃上げについても、「同業者より高いから賃上げは必要ない」とうそぶき、これまたそれを裏付ける資料の提出も拒否し、不誠実な交渉をつづけてきたのです。

●形式団交のかたわら、再雇用者の賃下げを原資に外食ビジネスに進出

 そこで組合が不誠実団交事件として申し立てたところ、2014年11月には東京都労働委員会で、「会社は、組合に対して、労働条件につき、会社の代表者ないしこれに準ずる権限のある者を出席させて、労使の合意が図れるように、交渉事項につき必要な経営に関する資料を提出するなどして、誠実に団体交渉を行うことを約束する」との和解協定を交わしたのです。

 しかし、和解協定後も、会社は代理人弁護士をして、「あれは原則論を確認しただけ。会社の団交態度に問題があったという内容ではない」などとうそぶき、依然として形式団交を続けたため、他方で、長澤社長は、再雇用者の賃金カット分で得た利益を使って、しゃぶしゃぶ温野菜や牛角などの外食ビジネスに手を出していたのです。

●会社を厳しく批判する命令

 そこで組合がふたたび不当労働行為として申し立てた結果、東京都労働委員会は組合の申立内容を全面的に認めた命令を出したもの。しかも、「会社は労使合意形成に向けた努力を一切行っていない」「会社程度の組織規模であれば、社長が団体交渉に出席することは決して異例のこととは考えられず、和解協定後も長澤社長が出席していないことについて、組合に誠実性の有無を問われてもやむを得ないといえる」と厳しく批判しました。

 組合は長澤運輸に対して、命令に従ってただちに長澤尚明社長が出席して誠実な団体交渉を行うよう申し入れる一方、荷主の宇部三菱セメントや三菱マテリアルに対しても労働組合法違反の対応を真摯に改めるよう指導することを求めています。

 情報提供 : 全日本建設運輸連帯労働組合 書記長 小谷野毅


Created by staff01. Last modified on 2017-12-20 10:42:44 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について