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自主避難者にスポットをあてた二本の作品〜ビデオアクト上映会

 今村復興大臣の辞任から一か月半。「自主避難者は自己責任」「帰ってる人もいるじゃないか」とブチ切れた記者会見のシーンはメディアも盛んにとりあげたが、なぜ自主避難者は帰らない(帰れない)のか、それこそ伝えるべきことではないのか。

 6月8日、ビデオアクト上映会(東京・飯田橋)で、原発事故による自主避難者にスポットをあてた二つの映画が上映された。ひとつは今村復興相を辞任に追い込んだ西中誠一郎さんが制作した『自主避難者は自己責任か』。これを観ると西中氏がなぜ、今村氏に突っ込んで質問せざるを得なかったのかがよくわかる。そしてもう一つが『終の住処を奪われて』(遠藤大輔制作)。これは「福島原発東京訴訟」の原告団長である鴨下祐也さんを追った映画で、37分と短いながらも、とても見応えのある作品だった。

 この映画の魅力は何といっても、鴨下さんという一人の人間に密着し、彼の生い立ち、家族の姿を含めて描き出していることだ。私はレイバーネットTVや集会で鴨下さんの話を聞いたことはあるが、それだけでは知りえなかった人間臭さに引き込まれっぱなしだった。子どものころから植物が好きで、小学生時代にジャガイモとトマトの接ぎ木に成功。高専の教師となり屋上緑化などに取り組む。科学者として放射能を管理することの難しさを熟知していた彼は、3・11の原発事故の翌日には妻と二人の子どもを連れて、いわき市から首都圏に避難する。


*『終の住処を奪われて』より

 いわき市は一度も避難指示が出されていない。しかし鴨下さんが自宅の土壌の線量をはかると10000ベクレル/キログラム。勤務している福島高専の屋上を除染し、一年かけて野菜を作るが、収穫した野菜からセシウムが検出されてしまう。避難区域も避難期間も、加害者である国が勝手に決めてしまう。映画は「避難指示=汚染」ではないことに言及する。

 「自主避難」と言われる自分たちにとって避難生活は苦しいが、これは人災。裁判に参加できない人も含めて救済されなければならないと、2013年3月に東京訴訟を結成する。

 鴨下さんは、自宅の土や野菜のベクレル数を放送することを条件に、何度かテレビ取材に応じてきたという。しかしNHKは放送前日になって「住民が不安になるから、やっぱり数字は出せません」と言ってきた。彼は思う。「不安に思うからこそ危険を察知することができるんじゃないのか」と。


*左=制作者の遠藤大輔さん、右=鴨下祐也さん

 野宿者の支援をし『渋谷ブランニューデイズ』の制作者でもある遠藤さんは、原発事故の避難者も住処を追われる点で同じなのだと知り、東京訴訟と出会った。自主避難者は「勝手に避難している人」と見られがちだ。バッシングを受け精神的においつめられて、避難生活を続けられなくなった人もいる。東京訴訟の原告の中で、顔出しOKなのは鴨下さん一人。だから映画の主人公になったのだが、鴨下さんの姿を通じて、自分で生き方を選んだ多くの自主避難者たちがいることがみえてくる。元復興大臣に、一人の人間としてこの映画を観てほしい。無理だと思うが。〔有森あかね〕


Created by staff01. Last modified on 2017-06-10 11:01:32 Copyright: Default

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