レイバーネットTV第118号 : アンケート「わたしを変えた一冊」全文紹介(15人分) | |||||||
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レイバーネットTV第118号 : アンケート「わたしを変えた一冊」全文紹介(15人分)*推薦者・書名・筆者・発行所・コメントです。なお番組では抜粋して紹介しました。 1、長谷川澄(カナダ在住) 著者の小林綾さんは、1950年に医師の国家試験に合格し、就職した病院が奈良県 の無医村の巡回診療もしていたことから、そういう村の一つの被差別部落に通う 内に医者が常駐しないことの不便さ解消のために、結婚したばかりのお連れ合い と二人で、其の被差別部落に住むようになる。後に診療所を作って、責任者とな るが、この本はその診療所の10年の記録である。まだ、部落とその他の地域の経 済格差も大きく、差別も激しい時代に夫妻はここで2人の息子を育て、部落の保 育所に通わせる。人は自分自身や社会の偏見からこれ程に自由になれるのか! 今、持っているのは1982年版だが、これは2冊目である。何か迷うことがある 時、私はこの本を読み直す。小林さんの曇りのない目で物事を考え直せる気がするから。 2、佐々木有美 中学3年のとき、法政大学から来た教育実習の先生から何冊かの本を薦められた。E・H・カーの『歴史とは何か』には、歯が立たなかったが、こちらはおもしろくて、続編まですぐ読み終えた。それまではマスコミの影響で、「ベトコン」(南ベトナム解放民族戦線兵士の蔑称)に悪者のイメージを抱いていたが、実はベトナムを侵略したアメリカこそ最大の悪者であり、解放戦線の闘いは民衆に支えられた正義の闘いであることを教えてくれた。大げさに言えば、自分の価値観にコペルニクス的転換を与えてくれた本。この先生には、いまでも感謝している。 3、木村幸雄 連続射殺魔として死刑に処 せられた永山氏の生きざまを描いた獄中記。貧困や崩壊した家族関係やそれを彼 に強いた社会に、私の目を向けさせた重要な1冊です。犯罪が、その人の環境で 引き起こされることは特に少年の場合顕著であるが、社会は自己責任とし、その 犯人にすべての責任を負わせ、社会は、国は、その原因をつくったにもかかわら ず、全く責任を問われていない。そのことに気づかされた貴重な1冊。私は、社 会の矛盾に気づき、社会を変える闘いが不可欠と気づいたのである。そこに、自 分の生の証があると自覚する。 4、堀切さとみ 父親が小学校の教員で、中学時代に観た「金八先生」の影響もあり、自分も教師 になろうと教育学部に入った。大学に入って、先輩にこの本を勧められ、目から鱗がおちた。知らなかった現実を突き付けられたからではない。「西の愛知・東の千葉」は管理王国の県だという。千葉県出身の私には身に覚え のあることが多くて、唖然としたことを覚えている。工場で部品を生産するように子どもたちを育成する。それ以前に、教師が促成栽 培されていく。校長を頂点とし、管理された職員会議。あれから30年たったが、今はもっと大変だ。子どもたちに体当たりして人間形成していく。そんな泥臭さに憧れていた私に、 現実をつきつけた一冊。教師にならなくてよかったという思いは、強くなるばかりで、それが悲しくもある。 5、見雪恵美 この一冊で、沖縄の歴史の見方が、がらっと変わりました。琉球新報の新垣さんが、これまでの取材された中での編集。また、琉球王国は、 アメリカ・フランス・オランダと、修好条約を結んでおり、今なお、この条約が 有効であるところも、着目するところです。新しく出た本で、一番おすすめの本です。 6、笠原眞弓 この本の1ページが私の物事の見方を変えた、と思っていた。ところが今 回、読みかえしてみると、ほとんどのページが私に語りかけていたことに気づ く。異文化を知る驚きと、もっと知りたいと思う好奇心を満たすばかりでなく、 彼らをほとんど隣人のように感じてしまうのだ。当時の私は、文化人類学の勉強をし直したいと思うほど、世界の先住民の生活に 関心があり、本棚にはその種の本がどんどん増えて行った(専門書ではない)。ではなぜ、その中でこの本が忘れられない1冊なのか。それは当時の我が息子 が、このタンザニアのスワヒリ語圏の人たちと同じものの捉え方をしていること に気づいたからだ。たった1つのエピソードがこの本を忘れがたくし、作者さえ 意図しなかった驚きを引っ張り出したとしか思えないのだ。それにしても、和崎洋一の文章は現実を忘れさせ、その世界に引きずり込んでしまう。 7、フクシマ陽太郎 「研究することは階級闘争の一部であるべきだ」と考える著者の一連の階級論 から画期的な思考を提示された。現代日本の階級とはどのようなものか。またマ ルクスたちは階級闘争が歴史の原動力となるとしたものの実現可能性はいまやな い、この二つだ。膨大なアンダークラスが新たに出現した。雇用が不安定で極端 な低賃金で再生産が困難な階層だ。秋葉原事件等もまた復讐という絶望的な新た な階級闘争だという。この日本社会を変えていくには、例えば階級構造を深く理 解した、恵まれた立場にある新中間階級と大企業の正規雇用労働者が動くことが 大事だという。人々の連帯感の回復。雇用拡大や最低賃金の大幅引き上げなど政 策理念の転換は、これらの人々の意識と行動によるところが大だ。「社会は動か せる。人間には、社会の将来を決める権利があるのだ」。含蓄が深い未来につな がる変革の着想がつまっている。 8、正木俊行 若い頃から、結婚について漠然とした疑問を抱き続けてきた。おとなになったら結婚して子どもを産むという、その流れに誰も疑問を持って いる人がいないのはなぜか…と周辺の人々を見て私はずっと思っていた。なぜ結 婚するのか、なぜ子どもを作らなければならないのか、私にはよくわからなかった。20歳のころ、朝日ジャーナルで「私にとっての家」というテーマの公募論文集 を目にした。この時代、おそらく全共闘運動にも関連して、「家」というもの、 家制度の問題が「革新」を主張する人々には重くのしかかっていたのではないか と思う。内容は私には少し難しかったが、家と、私の関心事である結婚つまり婚姻制度 が密接不可分な問題であることは理解できた。そんな中で、たまたま本屋で見つけたのがこの本、『反結婚論』だった。まさに私の関心をずばりタイトルにした本。すぐに買ってむさぼるように読んだ。ウーマンリブはあっても、まだフェミニズムという言葉が日本では一般的では なかった時代だったと思う。それから20年近く経ってから、東京のアジア太平洋資料センターがやっている 「PARC自由学校」でフェミニズムの講座を受講したのも、結局この本が最初の きっかけだったのだろう。 9、根津公子 「従軍慰安婦」「同性愛者」を取り上げた授業をしたことで、校長・市教委・ 都教委から攻撃・弾圧を受けていた2001年、ぼろぼろになっていたときに出会っ たのがこの本。金子文子が死を覚悟で己を貫き闘うさまを読んで、勇気を与えら れた。生き方を変えたのではないけれど、この本は私に道を作ってくれたと今も 思う。 10、山川 守 私は大学生時代、研究のために軍艦島に行ったことがある。軍艦島は近年、世界遺産として登録された。「日本の近代化に大きく貢献した」明治日本の産業革命の象徴としてー。しかし、世界遺産登録運動や世界遺産登録後の世論の反応に、抜け落ちていたことがある。それはこの軍艦島が「日本の近代化に貢献する」影で、植民地支配を受けていた朝鮮人の方々が大量に強制連行され、きわめて苛酷な炭鉱労働に従事されられており、彼らから「監獄島」と言われていた負の歴史である。私は軍艦島に行って、そこが「監獄島」といわれていたのがよくわかった。なぜなら、九州本島からも、最寄の島からも離れており、その間を人が泳いで渡ることが不可能であることをこの島の周囲の波の激しさから知ることができたからだ。それでも、多くの朝鮮人の方々が脱出を試みて溺死した事実は軍艦島の炭鉱労働がどれほど苛酷であったのかを傍証している。 11、ジョニーH 1980年に公立学校教諭になった私は、この本との出会いによって、自分が取り組んでいたことに自信を持つことができた。当時話題になった山下公園での少年たちによる横浜浮浪者襲撃殺傷事件をテーマに「横浜ストリートライフ」を著作した直後の作者が、オジさとして10代に向けて書かれた作品。作者は、ケンカのルールとして、オジさんのルナ10条を以下のように 12、小林たかし 1967年の春に上京してすぐに、大学のサークルでこの本を学習しました。50年前の記憶で不正確ですが、「ある人間が、この土地はおれのものだといって、囲いをめぐらしたことから不平等が発生した」という箇所に共感したのをおぼえています。そのあと同じサークルで、エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』を学習し、あとは一人で『共産党宣言』『賃労働と資本』『国家と革命』『帝国主義論』という具合に読んでいきました。50年前の世の中では、こんな読書体験がごく普通のことでした。サークルの仲間もクラスの仲間も、同じような本を読んでいました。いまの若い人たちの読書体験がどうなのか、とても知りたいです。 13、佐々木史朗 あるテレビ映像が今でも忘れられない。戦火が拡大するベトナムで、捕虜となった解放戦線兵士が路上で射殺される場面。衝撃を受けたのは、まさに射殺の瞬間、兵士の傍らで祈りを唱えるキリスト教司祭の姿だった。あの司祭は、いったい誰のために、何を祈るのだろうか? 両親とも熱心なカトリック信者の家庭に育った私は混乱した。そして高校1年の時、『南ベトナム戦争従軍記』を読み、はじめてベトナム戦争の真実に触れ、同時にそれまで漠然と抱いていた現在の生活や将来についての思いを、さらに打ち砕かれることになった。忘れられない一冊。 14、土屋トカチ 高校3年生の頃に読んだ。原発のこと。メディアのこと。カネのこと・・・。あらゆる事象について、まずは一度疑うクセを身につけさせてくれた、私にとって衝撃の一冊。同級生にも薦めたが、ほとんど相手にしてもらえなかった。ぼくの地元は、福井県の高浜原発から直線距離で10数キロ。「読んでみいや」と声をかけても、「じゃあ、お前、電気つかうな。ステレオ聴くな。ギター弾くな」と、話にならない。悪夢のような思い出だ。この本を読んでいたからこそ、3.11の激しい揺れの中で「原発が危ない」と直感することができた。「直ちに影響はない」といった軽い発言を、重く受け止めた。「危険な話」の知識が活かされる時が来るなんて、今こそ正に悪夢の真っ只中だ。高浜原発も再稼働しそうだし。とんでもないな。もう一度読んでみよう。RCサクセションの名盤「カバーズ」、ブルーハーツの名曲「チェルノブイリ」を聴きながら。 15、独狼(ドイツ人) この長編のなかでファラダが40年代のナチスドイツのベルリンの風景を鋭く描いています。クヴァンゲル夫妻という主人 公がヒトラーの侵略戦争で一人息子を亡くしました。それをきっかけに彼らは反 対行動を行います。つまり、ナチス政府の暴力と矛盾を暴露する葉書を書き、ベ ルリンのあちこちのビルに置いておきます。結局、クヴァンゲル夫妻がゲシュタ ポ(秘密国家警察)に逮捕され、死刑になります。 以上 Created by staff01. Last modified on 2017-04-27 11:14:33 Copyright: Default |