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台湾に対する信頼と平和への願い〜新作映画レポート『湾生回家』

    ジョニーH
 東京・新橋で開催されたドキュメンタリー映画『湾生回家』監督ホァン・ミンチェン(黄銘正)の試写会で、出演者の湾生の二人、竹中信子さんと清水一也さんのトークイベントがあった。「湾生」とは、戦前の台湾で生まれ育った約20万人の日本人のことを指す。下関条約締結で1895年〜1945年までの50年間、台湾は日本に統治され、日本から、公務員や企業の駐在員が、また農業従事者も移民として海を渡った。ところが、敗戦後、中華民国政府の方針で、ほとんどが日本本土に強制送還させられた。引揚者が持ち出しを許されたのは、一人あたり現金1,000円(当時)とわずかな食糧、リュックサック2つ分の必需品だけだった。

 竹中信子さんは「日清戦争の時に兵站として来た祖父から三世代台湾の蘇澳(スオウ)に住んだが、女学生の15歳のとき、穂高という名前の駆逐艦の狭い中に家畜のように押し込まれ、門司に着くまで、船酔いでさんざんでした。台湾の家では犬と猫と猿を飼っていましたが、特に猿との別れがとても辛かったのを覚えています。日本についてからペットロス症候群になってしまいました」と語った。

 清水一也さんは「3歳のときに花蓮(ファレン)から広島に行き、その後、群馬で育ったので、台湾での記憶は全くありません。けれども、食事の度に家族が台湾での生活を懐かしがって話すのを聴いて、いつしか台湾に思いを寄せるようになりました。鮭が生まれた川に帰る、あるいは、烏が巣に戻るような気持です。台湾は心の故郷です。 台湾の若者の59%が「好きな国は日本だ」と答えたという調査結果があるそうです。 台湾の人たちは私たちがいたころも、今再び訪れても、差別なく自然に友好的に迎えてくれます。私たち湾生は、年をとって亡くなり減ってきて、絶滅危惧種のようなものですが、日本と台湾の友好の架け橋になりたいと願っています」と語った。


 *トークする湾生(左)とプロデューサーのファン・ジェンヨウ(范健祐)さん(右)

 映画の中では、次世代家族を連れて再び台湾を訪れる「湾生」の様子と、やむなく台湾に残った「湾生」の次世代家族が生みの母親を探す旅の様子が出てくる。時間と空間を超えた人間同士の友情と家族の絆。残された時間の中で「湾生」たちが語る言葉の端々から、台湾に対する信頼と絆、愛、希望、そして平和への願いが伝わってくる。そして、何より、「湾生」たちに対する、台湾の人たちの温かい目線と差別意識の全くない友好的に交流する姿に感動する。

 ある「湾生」の孫は台湾の人たちにふれ、「戦争は絶対にあってはならない」とつぶやく。別の「湾生」は孫たちに向けて「戦争の時代は生き延びるという選択肢しかなかったけれども、平和に時代はやれる選択肢がたくさんある。平和な時こそ平和な選択肢をみつけてほしい」というメッセージをつぶやく。

 そして、「湾生」たちが台湾のことを思いながら「兎追いしあの山〜」と歌う歌「故郷(ふるさと)」が心に沁みる。

*映画「湾生回家」は11月12日(土)から岩波ホールでロードショー公開される。

*映画「台湾回家」予告編 https://www.youtube.com/watch?v=adAQ3jOPD9E


Created by staff01. Last modified on 2016-11-02 11:38:53 Copyright: Default

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