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新たな「産みの苦しみ」の出発点〜野党共闘は成果を上げた

     渡部秀清

 7月10日投開票の参院選で、自民・公明が改選過半数を超え、改憲勢力も3分の2を超えることになりました。しかし、安倍首相は、年頭から「改憲」と声高に叫んでいましたが、選挙では封印しました。「改憲」を前面に出すことは不利と考えたからです。したがって、今後改憲に向けての動きは強まるでしょうが、曲折も予想されます。

 一方、野党共闘の勢力は伸び悩みました。しかし、1人区においてはそれなりの成果(32選挙中11選挙区で勝利)を上げました。もし、野党共闘が無ければ、さらに壊滅的な結果となったでしょう。その最大の力になったのは、昨年以来の市民運動の盛り上がりであり、とくにシールズらの青年の選挙運動への参加であったと思います。また、安倍首相は不利な争点を隠して今回の選挙で勝利しましたが、沖縄・福島・山形など、基地・原発・TPPなどの争点がはっきりした選挙区では、野党統一候補が勝利しました。したがって、これが現段階での人民大衆運動の到達点であると思います。これは2年ほど前から考えれば、大きな前進です。

 ところで、安倍首相は選挙中さかんにアベノミクスの成果を誇示しました。しかし、現実にはますます格差が拡大し、貧困が増大しています。圧倒的多数の人々の仕事や生活はますます苦しくなってきています。今後さらにアベノミクスを「ふかす」ならば、その矛盾は一層顕在化してくるでしょう。 そして、その矛盾解決の道として安倍政権が取ることは、やはり<内に抑圧、外に侵略>の基本政策しかありません。

 すでに、<内に抑圧>の面では、自民党が党公式ホームページで、教育現場での<政治的中立性を逸脱するような不適切な事例>を募るネットアンケートを始めています。その中には当初「子供たちを戦場に送るな」と主張する教員がいるとする表現もありました(批判があり削除)。つまり、「政治的中立性」の名の下に、戦争に反対する教員を密告させることを始めているのです。

 「日の丸・君が代」強制が学校現場から強まったと同様、戦争反対の動きもまず学校現場から取り締まろうというのです。そして、「お国のために」進んで戦場に出て行く青年を再び美化しようというのです。

 まさに「歴史は繰り返す」です。しかし、その後に来たのは戦後民主主義社会でした。したがって日本社会は今、再び新たな「産みの苦しみの時代」に入りつつあるとも言えます。

 その意味で、今回の参院選はたしかに敗れはしたものの、私たちは、新たな「産みの苦しみ」の出発点に立った、とも言えるのではないでしょうか。私たちの前途は困難ですが「産み」の展望があります。


Created by staff01. Last modified on 2016-07-11 14:56:07 Copyright: Default

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