丹念な取材から見えてきた現実〜シンポジウム「原発事故から五年・追いつめられる被害者」 | |||||||
Menu
おしらせ
・レイバーフェスタ2024(12/25) ・レイバーネットTV(11/13) ・あるくラジオ(10/10) ・川柳班(11/22) ・ブッククラブ(10/12) ・シネクラブ(9/1) ・ねりまの会(10/12) ・フィールドワーク(足尾報告) ・三多摩レイバー映画祭 ・夏期合宿(8/24) ・レイバーネット動画 ●「太田昌国のコラム」第96回(2024/11/15) ●〔週刊 本の発見〕第368回(2024/11/21) ●「根津公子の都教委傍聴記」(2024/11/14) ●川柳「笑い茸」NO.157(2024/9/26) ●フランス発・グローバルニュース第14回(2024/10/20) ●「飛幡祐規 パリの窓から」第95回(2024/9/10) ●「美術館めぐり」第4回(2024/10/28) ★カンパのお願い ■メディア系サイト 原子力資料情報室・たんぽぽ舎・岩上チャンネル(IWJ)・福島事故緊急会議・OurPlanet-TV・経産省前テントひろば・フクロウFoEチャンネル・田中龍作ジャーナル・UPLAN動画・NO HATE TV・なにぬねノンちゃんねる・市民メディア放送局・ニュース打破配信プロジェクト・デモクラシータイムス・The Interschool Journal・湯本雅典HP・アリの一言・デモリサTV・ボトムアップCH・共同テーブル・反貧困ネットワーク・JAL青空チャンネル・川島進ch・独立言論フォーラム・ポリタスTV・choose life project・一月万冊・ArcTimes・ちきゅう座・総がかり行動・市民連合・NPA-TV・こばと通信
|
丹念な取材から見えてきた現実〜シンポジウム「原発事故から五年・追いつめられる被害者」堀切さとみ「国からの避難指示は出ていないけれど、放射線量が高いことは間違いないです。子ど もを安心して遊ばせることはできない、そう思っていわき市から埼玉県に避難しました。 はじめは夫も同じ意見でした。でも福島で仕事をしなければならない夫に、いつまで神経 質になっているんだといわれ、一年たたないうちに離婚。パートをしながら二人の子育 てをしていますが、近所の人からは『賠償金もらってるんでしょ。なんで働く必要がある の』と言われて。<自主避難>の私は、賠償金なんてもらっていないのに・・・。つらく てパートにも行けなくなり、生活保護を受けるようになってしまいました」 原発事故によって避難生活を余儀なくされているのは、国から指示を出された人たちだ けではない。「自主避難者」と呼ばれる人たちがいる。その多くは子どもを被曝から守ろ うとする母親たちで、もっとも孤立を強いられた人たちだ。 5月28日、一橋大学(東京・国立市)で「原発事故から五年・追いつめられる被害 者」というシンポジウムが行われた。主催は「福島の今を伝えるプロジェクト」と国立 市民有志。 メディアがほとんどとりあげることのなかった人々と向き合い、丹念に取材を続けてきた フリーライターの吉田千亜さん、毎日新聞記者の日野行介さんの対談を聞いた。
吉田さん(写真左)は「ママレポ」や「福玉だより」などの編集を通じ、 主に埼玉県に避難する母親たちの交流の場をつくってきた。自主避難者の多くは借り上げ 住宅に住む。周囲からは「タダで住めていいね」と言われるが、好き好んで避難している 人などいない。思い描く未来を持っていた人たちから、それを奪ったのは原発事故なのだ 。そのことをメディアが不問にするから、「国が指示したわけでもないのに避難している わがままな人たち」「勝手に離婚した人たち」という偏見にさらされてしまうのだと憤る 。 「自主避難者」ではなく、国の一方的な線引きから疎外された「区域外避難者」という べきなのだと、日野さん(写真右)はいう。「そもそも一般の人が住んでいい基準は、年間1ミリシ ーベルトだったはずだ。政府は事故直後の2011年4月に避難指示基準を年間20ミリに引き 上げたが、これはあくまで<緊急時>だから。八か月後に野田首相(当時)が”収束宣言 ”を出した。緊急時は去ったのだから1ミリシーベルトに戻すべきなのに、今も20ミリを 許容せよという。そんなの無茶だといって子どもを守ろうとする人を『頭のおかしい人』 にしてしまう。これが今の日本なのだ」。
「復興」という言葉をきくたび、ずっと違和感を感じてきたと日野さんはいう。「原発 事故は加害者がいるのに、それに触れようとしない。地震や津波といった自然災害の中に 、原発事故という人災を紛れ込ませているのだ」。ちなみにチェルノブイリでは、「復興 」と同時に「放射線防御」という概念はないそうだ。半減期が何年だとか、何ミリシーベ ルトなら安全とかの基準の設定はないけれど「このキノコは食べちゃダメだよ」というこ とが普通に言える社会なのだと。それに比べ、除染もしていない田んぼで小学生が田植え をし、それを見守る母親は「おかしい」と口にすることもできない・・・・そんな福島の 状況をみると暗澹たる気持ちになると吉田さんもいう。 「公害から福島を考える」と題する除本理史さん(大阪市立大学教授/写真右)の講演もあった 。「加害企業と政府の責任逃れという点で、福島と水俣はまったく同じ。自主避難者は被 害者として認めてほしいといっている。国が住宅提供することのみが、彼らが被害者であ ることの証しなのだ」 その住宅補償も打ち切られるかもしれない。2020年までに福島県外避難者をゼロにし復 興を完了させたい政府は、来年三月には年間20ミリシーベルト以下の地域を避難解除する という。解除されれば一年後に賠償(慰謝料)は打ち切られ、住宅提供も打ち切られるだ ろう。住処を追われることは、避難の権利が奪われるのに等しい。そんな中、埼玉県は、 一〜三万円の家賃負担で県営住宅に住み続けられるようにサポートすると言っている。吉 田さんは「国が責任をとらない以上、(避難者を)受け入れてくれる自治体の協力を得て いくことも必要なのかもしれない」という。 冒頭の母親は「直ちに影響はないといわれた時、じゃあ将来の健康は?と思った」と語 り、今も避難生活を続けている。こうした人を「わがままだ」とか「復興の足かせだ」と 思う人もいるだろう。その根っこにあるものが何なのか。私たち一人ひとりが考えるべき ことだと思う。 Created by staff01. Last modified on 2016-05-30 23:26:25 Copyright: Default |