木下昌明の映画批評 : ドキュメンタリー映画好き必見〜社会の“病理”を抉り出す5作品 | |||||||
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ドキュメンタリー映画好き必見〜社会の“病理”を抉り出す5作品何年か前、ネットでサムスン電子の半導体工場で働く若い女子工員が次々と放射能や有害な化学物質に侵され稀病を患っている映像を見たことがある。工場は原因を隠し、個人の病気のせいにしていた。 サムスンといえば、韓国経済(ばかりか政治をも)支配するグローバル企業。その企業の不正を告発したキム・テユン監督の『もうひとつの約束』が、7月25日開催の〈レイバー映画祭〉で上映される。これは22歳で白血病で亡くなった娘の労災認定を求め、裁判でたたかったタクシー運転手の実話に基づいたドラマである。父親が娘にも「バカ」といわれたくらいの一念で、坊主頭の娘の写真を掲げて巨大企業に挑む、その姿に胸打たれる。映画によると80人もの死者が出ている、と。(写真は『もうひとつの約束』) この映画を柱に、他に4本のドキュメンタリーが上映される。次に注目したいのはエンリコ・バレンティ監督らのイタリア映画『誰も知らない基地のこと』(写真)。これは今の沖縄にも光をあていて、辺野古の新基地建設の問題を考える格好の素材となっている。そこでは、米軍が基地を増やすために敵を作り、戦争をしかけるという逆転した論理を暴いている。米国経済は軍産複合体という戦争経済で成り立っており、戦争を口実にして基地は一種の「公共事業」と化しているのである。その一端が、インド洋・ディエゴガルシアの島民を追い出して全島を基地化し、軍人家族の“リゾート地”にする暴挙に見られる。私たちは基地を新しい視点でとらえ返す必要に迫られている。 このほか、1937年の南京で、ジョン・マギー牧師が撮った16ミリフィルムを基に作られたクリスティン・チョイ監督らの『天皇の名のもとに―南京大虐殺の真実』、オバマ大統領も支援したシカゴの建具工場の占拠を描いたアンドリュー・フレンド監督の『ワーカーズ・リパブリック』、メトロの売店で働く女性労働者が、「定年になっても働かせろ!」と会社の廊下で座り込みをする(これが圧巻の)ビデオプレス制作の『メトロレディーブルース3』と、未公闘の刺激的な作品ばかりだ。(『サンデー毎日』2015年8月2日号) *「レイバー映画祭」7月25日(土)10時15分〜17時20分 東京・田町交通ビル6Fホール(tel03-3530-8588) 詳細 Created by staff01. Last modified on 2015-07-24 09:01:59 Copyright: Default |