木下昌明の映画批評『福島 六ヶ所 未来への伝言』〜惨事は今もつづく | |||||||
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●島田恵監督『福島 六ヶ所 未来への伝言』 故郷を離れて引き裂かれた絆―悪夢の事故から「3年目の春」「3・11」から3年目を迎えようとしている。安倍政権の原発推進で、人々はあの惨事を忘れ去ろうとしているが、それでいいのか、と問うているのが『福島 六ヶ所 未来への伝言』というドキュメントだ。惨事は今も、これからも続いていく。 監督の島田恵は青森県六ヶ所村に12年間住み、核燃料施設の村を撮り続けた写真家である。その彼女が、今度は映画を撮り始めた矢先に事故が起きた。そこで急きょ、福島と六ヶ所を同じ問題としてつなげて撮ることにした。 出だしは、廃虚と化した福島県大熊町の映像を見ながら、避難当時の緊迫した状況を田邉さん一家の妻の幸恵さんに語ってもらうところから。彼女には1歳半と妊娠中の子がいる。一家は転々とし、ようやく東京の団地に落ち着く。「子どものいる友だちが郡山にいっぱいいるんです。みんな泣いています」と声をふるわせる。故郷に一時帰宅する夫の車にカメラも同乗すると、家に近付くに従い線量計は鳴りっぱなし。夫は新築の我が家でたたずむ。 次に、郡山市から長野に一時逃れてきた伊藤さんの母と2人の娘を訪ねる。「どうしたらいいかわからない」と。母娘は再び郡山に戻り、小学校と保育園へ。しかし、いたたまれずに新潟へと逃れていく。映画は、これら幼い子を抱えた人々が、故郷に戻りたくとも戻れずに引き裂かれている姿を浮き彫りにする。そこに女性監督ならではの視点がうかがえた。 郡山では、原発事故後も「米を作らなければ農民でない」と米作りに励む中村さん一家の切実な思いもとらえていた。「汚染した農地を元にして返せ!」と怒る。14代つづく農家だ。 六ヶ所村に暮らす人々に焦点をあてた後半部では、核のゴミの集中に反対しつつ働いている漁民の滝口さん一家の日常が印象深かった。マダラからセシウムが検出されたので廃棄せよ、と県から通達があり、獲れたての大量のマダラを海に投棄する父と息子のやりきれない表情をとらえる。惨事でズタズタにされながらも、それでも耐えていくしかなくて耐えていく。その姿が心に残る。 加藤登紀子の歌声が流れるトップとラストシーンが実にいい。避難生活を強いられている人々にやさしく語りかけるように歌う「今どこにいますか」が、映画を引き立てている。(木下昌明・『サンデー毎日』2014年2月2日号) *2月15日より東京・オーディトリウムで公開。 Created by staff01. Last modified on 2014-02-04 13:23:04 Copyright: Default |