ドキュメンタリー映画『“私”を生きる』土井敏邦監督のことば | |||||||
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土井敏邦監督のドキュメンタリー映画『“私”を生きる』が、1月14日より東京・オーディトリウム渋谷渋谷、28日より大阪シアター・セブンで公開される。石原都政の教育現場に、3人の主人公を通して迫った作品でいま注目のドキュメンタリー。以下は、土井敏邦監督の言葉である。(ウェブ編集部)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「長年、“パレスチナ”を追い続けてきたあなたが、なぜ日本の教育問題をテーマにしたドキュメンタリーなのか」──ドキュメンタリー映画『“私”を生きる』の企画・制作の過程で、また完成後も多くの人にそう問われてきた。 私はジャーナリストとしてパレスチナやアジア、そして国内の現場で「問題」を追い伝える一方、取材を通して数えきれないほど多くの人と出会うなかで、それぞれの“人の生き方”を目の当たりにしてきた。それは同時に、それら様々な人の“生き方”の“鏡”に私自身の“生き方”を映し出すことでもあった。そして自問させられるのだ。「では、お前はどう生きるのか」と。 『“私”を生きる』で、私は「教育問題」や「日の丸・君が代問題」を論じようとしたのではない。もし私が教育現場に身を置き、根津公子さん、佐藤美和子さん、土肥信雄さんの立場に置かれたら、私はどう行動しただろうかと、彼らをカメラで追いながら、ずっと自問していた。正直に告白すると、私は彼ら3人のような行動はとれないと思った。私なら、生活の基盤である職場で「あえて波風を立てることなく、周囲の環境と状況に順応し、穏便に過ごす」道を選んだはずだ。その方が楽だし、「心穏やかに」日々を過ごせると思ったからである。 しかし、彼らの生き方を追えば追うほど、私はもう一度、自問せざるをえなくなった。「穏便に順応することで、ほんとうに自分は『心穏やか』にいられるのだろうか」と。自分が心から納得できない行動をとり続け、“ほんとうの自分”を偽って生きることに、自分は「心穏やか」であり続けられるだろうか、そんな自分を受け入れられるのだろうか、いったい自分はどういう生き方をしたいのか……。この映画の制作は、そういう自身への問いを追う作業でもあった。 もう1つ、私にはこの『“私”を生きる』を制作する動機があった。それは“日本人ジャーナリスト”として、日本の現状を前にして何をすべきか、という問いから始まった。 この制作を思い立つ直前、自民党の安倍政権下で「教育基本法」が改悪され、軍備の放棄を謳った日本国憲法の改悪の議論も高まっていた。“戦前への回帰”とさえ思えるほど急激に右傾化する日本社会を目の当たりにし、日本人ジャーナリストとして、遠い“パレスチナ”を伝えるだけでいいのか、足元の深刻な現実を前にして日本人ジャーナリストとして果たさなければならない責務があるのではないか──そういう焦りに似た思いが私の中で抑えがたいほど膨らんでいった。 では何を伝えるべきか。長い暗中模索の末、思い当たったのが、東京都の“教育現場”だった。石原都政の下、急速に進行する“教育現場での思想・言論統制”は、日本の右傾化の象徴のように私には思えたのである。 その教育現場での思想・言論の統制と右傾化は、この映画の企画から数年が経った今、東京に留まらず、大阪など全国に波及しつつある。今、ドキュメンタリー映画『“私”を生きる』を全国で劇場公開する意味がますます大きくなっている。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 映画公式サイト http://doi-toshikuni.net/j/ikiru/ Created by staff01. Last modified on 2012-01-09 11:32:09 Copyright: Default |