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LNJ Logo 木下昌明の映画批評「ブルー・ゴールド」〜水の商品化が生む新たな戦争
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●映画「ブルー・ゴールド」

ペットボトルに詰まった「欲」 水の商品化が生む新たな戦争

 水は人類の共有財産だ。それが〈商品〉となってペットボトルの怪しげな水を人々は好んで飲むようになったが、商品になるとどうなるのか。

 その典型を、ボリビアの水道事業を扱った3年前の記録映画「ザ・コーポレーション」が取り上げていた。そこでは企業を人間に例え、利己的排他的な精神病質者と診断していた。民営化によって多国籍企業のベクテルが経営権を一手に握ると、市民に高い料金をふっかけ、雨水をためることさえ法で禁じたのだ。これに市民は激怒して立ち向かい、ついには企業を追い出した。

 昨年の映画「007/慰めの報酬」では、ボリビアのケースをヒントに、水の利権で暗躍するマフィア一味をやっつけるボンドの雄姿を描いていた。が、実は水の商品化はボンドが属する英国で、サッチャー元首相が1980年代に画策。後にレーガン米元大統領と組んで国際的に広めたのだ。

 今度公開されるサム・ボッソ監督の記録映画「ブルー・ゴールド」はそのことを明らかにしている。映画はさまざまな分野の12人の証言を介して、自然環境を度外視した乱開発や水の商品化によって地球から淡水が失われていくさまを検証している。ドラマチックな展開はないが、水と共に生きる大切さを考えさせる。この映画でもボリビアのケースを扱っているが、いま日本で焦点となっているダムの問題にも光を当てる。川は人間の血管と同じであり、狭い視野に立ってのダム建設は、自然の動脈を閉塞させる、という。

 驚いたのは、あのブッシュ一族がパラグアイの豊富な地下帯水層に目をつけて軍事基地を設け、ひそかに土地を買い占めていると暴露したシーン。彼らは「ブラック・ゴールド(石油マネー)からブルー・ゴールド(水マネー)へ」と商売の手を伸ばしているという。すでに石油ならぬ水戦争は始まっている。いつの日か空気さえも商品化してしまうのでは? (木下昌明/「サンデー毎日」2010年1月24日号)

*映画「ブルー・ゴールド」は、1月16日から東京・渋谷アップリンクほか全国順次公開


Created by staff01. Last modified on 2010-01-22 12:20:50 Copyright: Default

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