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LNJ Logo 報告(安田浩一)〜中国人実習生が被害者となった「警察官違法発砲訴訟」判決
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 中国人実習生が被害者となった「警察官違法発砲傷害致死国賠訴訟」(宇都宮地裁)の判決について報告いたします。

 まず、事件の「あらまし」は以下の通りです。
 〇六年六月、中国人の元実習生・羅成さん(当時三八歳・写真上)は、友人(実習生)とともに実習先の建設会社(岐阜県大垣市)を逃げ出し、仕事を求めて栃木県西方町の生コン工場へ向かいました。その途中、工場近くの路上にて、栃木県警鹿沼署真名子駐在所の巡査(33)から職務質問を受けました。二人は滞在期限を超過していたために、強制送還を恐れて逃走。羅成さんは民家の庭に逃げ込みましたが巡査に追いつかれ、なんと、その場で「射殺」されてしまうのです。
 羅成さんはナイフや銃などの凶器は所持していませんでした。にもかかわらず、巡査は威嚇射撃もせず、腹部に向けて拳銃を発砲しています。

これに対し遺族(四川省在住/写真=羅成さんの妻、張琴さん。判決日の記者会見)は〇七年、巡査を特別公務員陵虐致死罪で刑事告発、さらに栃木県に対して損害賠償請求を求める民事訴訟を起こしました。

 四月二三日、損害賠償請求訴訟の判決が宇都宮地裁で出ました。結果は遺族側の「全面敗訴」です。今泉秀和裁判長は遺族側の訴えを棄却しました。
 今泉裁判長は「拳銃使用が必要と認める相当の理由があった」との判断を示しましたが、その「理由」はすべて、巡査の主張(「このままでは殺されると思った」など)に依拠したものです。目撃者が一人もいない状況であったために、まさに「死人に口なし」を都合よく用いたとしか思えません。

 私は事件現場での聞き込み、関係者への直当たり、中国四川省での出張取材などを通して、今回の事件は明らかに警察側に非があると思っています。だいたい、職質から逃げた人間に対し、威嚇射撃もせずに発砲することなど許されるでしょうか。判決において、羅成さんは「武器を持っていた」とのことですが、直径一センチにも満たない細い竹の棒(植木の支柱)と、石灯篭の一部(これに関しては目撃者なし)を、その場で反射的に手にしたに過ぎません。しかも発砲時における巡査と羅成さんとの距離は、弁護団などの調べにより、五メートル程度であったと推察されます。これだけの距離があれば、仮に羅成さんが襲い掛かってきたとしても十分に威嚇射撃ができたはずですし、あるいは警棒などで制圧することもできたことかと思います。そもそも本当に、巡査が「襲われる」ような状況にあったのか、これはまったく明らかとはなっておりません。
 
 遺族と弁護団は「不当判決」であるとして、ただちに控訴しました。舞台は東京高裁に移ります。

 一方で朗報もあります。
 刑事告発については昨年七月、宇都宮地検はこの巡査を不起訴としています。
 しかし原告側はこれを不服として付審判請求をしていました。
 昨日(四月二七日)、宇都宮地裁はなんと、この請求を認める決定をしたのです。つまり、特別公務員暴行陵虐致死罪での審判が開始されることになりました。
 民事で蹴っておきながら、刑事裁判の開始を命じるとは・・・裁判所ってやつも、よくわかりません。
 が、支援を続けてきた者としては、素直に喜びたいと思います。

 なお、一連の裁判におきましては、「中国人を日本から追い出せ」「警察官の発砲支持」などと訴える保守派団体が毎回押し寄せ、原告側支援者らと小競り合いを繰り返してきました。

http://shinpuren.jugem.jp/?eid=671

http://blog.livedoor.jp/the_radical_right/archives/52222381.html

http://blog.livedoor.jp/hanrakukai/archives/1078558.html


興味ある方は上に示したURLをご参照ください。巡査の発砲を支持し、「射殺せよ」と訴える団体のサイトです。

 なお、事件の背景には、外国人実習生に対する劣悪な労働条件が存在します。
 羅成さんは、貧困に苦しむ家族のため、そして、中央から見捨てられた僻村のインフラ整備に必要な資金を得るために、研修生として来日しました。岐阜県の建設会社では、きつい肉体労働に従事していましたが、給与は県の産別最低賃金を下回るような水準でした。
そのような問題がなければ、わざわざ「逃亡」する必要もないのです。
 
 この事件は、わが国の「外国人研修・技能実習制度」がもたらした悲劇の一部ではないかとも思っています。

 今後の東京高裁、さらには宇都宮での裁判など、
 注視していただけたら幸いです。
 よろしくお願いいたします。

安田浩一(ジャーナリスト)


Created by staff01. Last modified on 2009-04-28 20:11:02 Copyright: Default

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