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●ノーモア尼崎事故キャンペーン・国際シンポ資料

イギリスの鉄道民営化に関するRMTのコメント

1)鉄道民営化の特徴

分 断

 民営化は、統合され統一されていた鉄道を、競合する利害をもつ複数の会社のネットワークからなる産業に換えた。この産業は、26の列車運行会社、ひとつのインフラ管理会社(レールトラック社)、7つのインフラ整備会社、およそ200の主要な請負会社、3つの車両リース会社、4つの貨物運送会社、そして政府系の多くの規制機関からなっている。

 サービスの低下

 民営化以前の1993‐94年には、公的に所有されていた全国的な鉄道ネットワークにおける90%以上の列車は時刻表どおりに運行されていた。それに比して、2004年12月31日までの1年間に、民営化された鉄道はそのサービスの82.8%だけを時刻表どおりに運行することができたにすぎない。

 財政面での非効率

 〔民営化された〕鉄道に対して目下支払われている45億ポンドもの公的な補助金は、かつてイギリス国鉄(British Rail)に支払われていた公的補助金の3倍以上に達している。労働運動のシンクタンクである「カタリスト(Catalyst)」が発表した最近のレポートは、1年間に8億ポンドがこの産業から〔利益として〕引き出され、民間金融機関や投資家の手に渡っていると試算している。それは、1996年からの累計でいえば、総額60億ポンドを越える民間金融機関への漏出となる。「カタリスト」によれば、鉄道を再度公有にするために要する少額の一時的な費用は、その後、納税者にとって多額の節約をもたらすことになるという。この節約は、細分化されたことによる煩雑な運営機構を簡素化できるし、民間金融機関への利潤漏出を終わらせることで得られるというわけである。  控えめに見積もっても、公有化にともなう全般的な資金の節約は1年間で9億ポンドに達するであろう。

 仕事と労使関係

 1993年の民営化直後の数年間に、鉄道労働者の22%がレイオフを受けた。昇給、配転、そして退職手当をめぐる全国的に統一された労使交渉は廃止された。労働組合はいまや、かつてのように単一の雇用主を相手にするのではなくて、数百もの異なる雇用主たちと交渉せざるをえない。こうした事情は、同一の仕事を行ないながら異なる会社に雇われている被雇用者たちの賃金と労働条件が大きく異なるという状況を生みだした。民営化はまた、労働力を二つの層に分裂させた。総じて、民営化に先立ってすでに鉄道に雇用されていた人は、法律によって保護された福利厚生と年金とを享受しているのに対し、民営化後に雇用された人は、法的保護が減少するか、もしくはそうした保護をまったく受けないのである。

 こうした条件が労使関係の悪化をもたらしたことを述べておく必要がある。民営化以前の50年間にわたる全国的な労使交渉においては、国鉄にかかわる労使紛争はたった6件しかなかった。それがいまでは、鉄道にかかわる労使紛争が1年間に6件を越えることがまれではないのである。

2)民営化以降の鉄道における事故の原因

 1997年のサウスオール(Southall)での事故

 グレート・ウェスタン・トレイン社の急行列車が貨物列車と衝突した事故では、7名の人びとが亡くなった。独立の事故調査委員会は、信号装置の見やすい場所への移設や運転士の訓練をふくむ安全規則を設けて実施することを怠っていたとして、この民間会社を非難した。もしそうした安全規則が守られていたら、事故は防ぐことができたというのである。

 1999年のラドブローク・グローブ(Ladbroke Grove)での事故  テムズ・トレイン・サービス社の列車が赤信号を横切り、グレート・ウェスタン・トレイン社のインターシティ・エキスプレスと衝突したとき、31名の人びとが亡くなった。この事故は、信号設備の調整が貧弱であったがゆえに引き起こされたものだった。そこで、独立の調査委員会による報告書は、事故以前に発せられていた安全性への警告に応えるうえで、(軌道と信号を受けもつ私有の会社である)レールトラック社が「嘆かわしい誤り」を犯したとして非難した。

 2000年のハットフィールド(Hatfield)での事故  ハトフィールド駅のすぐ南で、破損したレールのせいで高速列車が脱線したとき、4名の人びとが殺された。私有のレールトラック社と同社の私的な請負業者とによるおざなりな線路保全に対して事故の責任が問われ、目下、業務上過失致死罪で告訴されている。

 2002年のポッターズ・バー(Potters Bar)での事故  ポッターズ・バー駅を出てすぐのところで列車が脱線したとき、7名が死亡し、76名が負傷した。保健・安全庁の報告書はまたしても、私的な請負業者らによるおざなりな線路保全を非難した。

3)再国有化キャンペーンのこれまでの成果と将来見通し

・わが組合は、私的なインフラ管理会社であるレールトラック社の廃止を求めるロビー活動に成功した。政府は同社に代えて、配当金を目当てにはしていない会社であるネットワーク・レール社を設置した。

・もろもろの私的な線路保全会社は再統合され、ひとまとめにしてネットワーク・レール社の管理下に置かれるよう買い戻されるべきだと、わが組合は首尾よく主張することができた。

・複数の私的な列車運行会社への分裂は、私的な営業免許の数を減らすことで軽減された。

・公的所有を求めるわが組合のキャンペーンは75%の住民から支持されており、労働党大会の政策になっている。

 われわれのキャンペーンが直面している課題には、以下の点がふくまれる;

・鉄道のネットワークは依然として根本的に分断されており、私的な利益に沿って運行されている。

・政府は労働党の政策を実行に移すことを拒否しており、鉄道やその他の公共サービスにおいては私的なセクターが主要な役割を演じるべきだというイデオロギーに与している。

・ 民営化にともなう過剰なコストと浪費は、雇用と鉄道サービスとが脅かされることを意味している。

4)最近の事故関連情報から

・ ティーベイ判決後の鉄道労組RMT声明: 鉄道から略奪者・民営化論者を追い出そう

英国鉄道労組RMT(鉄道海員運輸労働者全国組合)06年3月17日のメーリングリストより翻訳紹介(※マークは訳者注釈) イングランド北西部、カンブリア州のティーベイで2年前に4人の鉄道労働者が死亡した件で、ニューカッスルの陪審員団は、下請け会社マーク・コノリーに対し故殺罪(※)とする有罪判決を下した。これを受けて、英国最大の鉄道労組RMTは本日、「危険な鉄道細分民営化(※)に終止符をうとう」とあらためて呼びかけを発した。(※「故殺罪」こさつざい・過失を含む、計画性なしの事故殺人)(※「細分民営化」英国では「6社に分割」するにとどまらず「100以上の民営会社に細分」している。もっとも、日本も下請け会社数を入れたらとても「6社」ではとどまらない)2004年2月15日朝、16トンの鉄屑を乗せた自重3トンの平台型トレーラーが、3マイルの下り坂を疾走したあげく4人の仲間たち‐クリス・ウォーターズ、ゲリー・ティンダル、コリン・バクリー、そしてダレン・バーゲス‐を殺した。他に9人の労働者が負傷した。コノリー社所有のこのトレーラーは、わずか2インチ(約5センチ)の長さの柵柱に固定されていた 。法廷では、水圧式ブレーキは故意に外されていた事、検査を受けても分からないように細工をしていた事等が証言で明らかになった。4人の犠牲者は皆、コノリーの親会社カリリオンに勤めていた。カリリオン社は、欠陥備品による死亡と負傷について即座に民事責任を認めた。

 RMT労組のボブ・クロウ書記長は本日、以下の声明を発した:「本日我々は、ティーベイで死傷した者たちに思いを馳せなくてはならない。また同時に、我々は、この惨事を引き起こしたとんでもない体制そのものに終止符をうつため、誓いを新たにせねばならない」「ティーベイは単なる事故ではなかった。それは鉄道の民営化と細分化の直接的な結果だった。利益第一主義で安全を二の次にする体制を止めさせるべき時が来たのだ」


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