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写真:閉鎖された地下鉄入り口。アッパーウェストサイド・マンハッタン。12月20日



「組合の要求は正当」交通ストとニューヨークの人々

3日間続いたニューヨークの歴史的な交通ストライキは一旦終わるようです。基本的には非民主的な州法と市・州当局による弾圧がストライキ続行を困難にしたと言えますが、労使交渉が再開されるようなので、その結果にストの成果が見られるかどうか注目されます。

この3日間、ニューヨークの人々は地下鉄・バスのない生活をしてきました。ストライキを実施したのは、TWUローカル100(ニューヨークの交通公社MTAの地下鉄・バス労働者を代表する組合)です。12月20日、本部組合の方針に逆らってスト決行を決めました。市内の主要労働組合は当然TWUローカル100を支援してきました。

市・州当局やマスコミの反スト報道の多くは、「違法スト」をしているTWUローカル100が市内で四面楚歌状態だという虚像を作り出しながらユニオンバッシングを繰り返してきました。ブルンバーグ市長らの反ユニオン発言はあまりに欺瞞的でアグレッシブです。にもかかわらずニューヨーカー(とりわけ低所得で交通ストの影響を最も受ける人々)は、ストに対して比較的冷静だったようです。

ニューヨークのローカルTV局NY1による最新の世論調査(12月22日)の結果は以下の通りです。ソース

今回のストライキでMTA(経営側)、TWU(組合側)のどちらを批判すべきだと思うかについて、両方ともダメ41%、MTAが悪い27%、TWUが悪い25%。つまり経営側に批判的な世論は68%で、少なくとも世論はユニオンのみを一方的に敵視しているわけではないということです。

TWU(組合側)の要求(年金・医療保険など)は正当なものかについて、54%が正当、36%が正当ではない。つまり過半数がユニオンの要求そのものはフェアーなものだと見ています。たとえストライキに批判的な人々の中でも州・市当局や経営側の主張に反対する者が多いということです。

このストライキを、黒字法人で働く中産階級化した労働者の自分勝手な利益行動だと見なすのは間違いでしょう。TWUローカルの主要な要求は、将来の鉄道・バス労働者への年金・医療保険上の処遇切下げ(例えば企業年金支給年齢の55歳から62歳への引き上げなど)への反対であって、今の組合員の利益擁護が主たる関心ではないからです。

人種別に観てみると、ニューヨーカーの白人の35%が組合の方が悪いとしているのに対して、アフリカ系・ラティーノで組合の方が悪いとするのは12%しかない(経営側の方が悪いという世論の方が大きい)。白人で組合の要求を正当だと見なしているのは38%弱であるが、75%近いアフリカ系・ラティーノは正当だと見ています。

ブルンバーグ市長(共和党)、パタキ知事(共和党)はスト問題でよくやっているかについて、ブルンバーグはよくやってる45%・よくやってない41%、パタキはよくやってる23%・よくやってない69%。ただし何を理由に善し悪しを判断しているのかが不明なので、これはいかようにも解釈可能でしょう。とりあえずパタキ知事はダメだということです。

このように見てみると、公共部門のストライキを禁じたニューヨーク州法(テイラー法)、ストライキの一方の当事者(組合側)のみを罰する司法判断(スト一日100万ドルの支払いというバカげた命令を出した)、パタキ政権に支配されたMTA当局、組合リーダーの逮捕や労働者への罰金などの脅しでスト弾圧を進めてきた市・州の現政権が、労働者の権利を侵害しているのみならず現実の世論からも乖離していることが分かります。

2005年の終わりに、NYU非常勤ストと今回のMTA交通ストという二つの大きなストライキがニューヨークで発生したことの意味は、911以降の架空の脅威による「正当性」に依拠してき現体制が、社会の分裂という現実を隠しきれなくなりガタつき始めたということじゃないかと思います。非常勤講師らも鉄道員らも、将来自分たちの職場に入ってくる人々の権利を守るため、功利的な計算からは出てこない結論、つまり現在の組合員にとっては(現体制が強いる)被害のあまりに大きいストライキという手法をあえて選択したということだと思います。

Dec. 22, 2005
New York
JNK


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