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Document 20070416
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●ドイツ映画『ドレスデン、運命の日』

「大空襲」―62年が経過して
日本で「訴訟」ドイツで「映画」

 第二次大戦は飛行機による空爆で、各国の主要都市を壊滅させ、非戦闘市民を無差別に殺戮したことが特徴だった。東京では、62年前の3月10日に10万人が殺された。子供と子育て中の母親が多かった。被害者と遺族の犠牲者が今年、国を相手に集団訴訟にふみきった。

 この「東京大空襲」の米軍指揮者カーティス・ルメイ大佐(当時)は戦後、日本政府から勲章を授与されている(ここに歴史の奇怪さがある)。3年前に公開された記録映画「フォッグ・オブ・ウォー」で、この時の計画立案者が(若き)マクナマラ元国防長官だったと知って驚いた。彼は空爆を「効率」という観点から立てたという。映画のシーンも、投下する爆弾がいつのまにか数字に変わっていくイメージで表していた。彼にとって、爆撃機による爆弾は単なる数字でしかなかったが、数字の下では阿鼻叫喚がくり広げられていたのだ。

 その東京大空襲の1カ月前、ドイツのドレスデンでは英軍による「じゅうたん爆撃」が行われていた。これをテーマに描いたローランド・ズゾ・リヒター監督のドイツ映画「ドレスデン、運命の日」が日比谷のシャンテシネで4月21日から公開される。

 戦前、ドレスデンは「エルベ川のフィレンツェ」と謳われた芸術と文化の都だったが、それが一夜のうちに壊滅した。死者は2万5000とも3万5000とも(20万とも)いわれていてはっきりしない。人殺しにおいては枢軸国も連合国軍も同じであった。

 ドイツ映画に「戦争もの」は数多くあるが、空襲を題材にしたものは珍しい。ピカソが「ゲルニカ」で描いたナチスドイツによる史上初の無差別空爆をはじめ、ワルシャワやロンドンへの空爆がその背景にあったため、自国の悲惨を公にすることは控えてきたのだろう。ところが今回、英国側の協力もあって、その「非人道面」を曲がりなりにもあぶり出すことができた。

 映画は、ドレスデンの病院で働くアンナという看護婦と負傷した英軍飛行士ロバートが心を通わせていくラブストーリーをからめて展開する(そんなことあり!?と驚くようなシーンもある)。また、空爆をめぐっての英軍司令部内の確執も描かれ、空爆する必要がなかったこともわかる。

 ラストのほうで、生きのびたロバートが焼けただれた聖母教会の屋上から灰燼と化したドレスデンを呆然とながめるシーンは印象的だ。 (木下昌明)

*『サンデー毎日』(2007年4月22日号)に加筆


Created bystaff01. Created on 2007-04-16 17:45:34 / Last modified on 2007-04-17 14:38:15 Copyright: Default

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