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カンクン大会戦の情勢的意味とその政治的展望

反帝-反世界化運動の 新しい転換点

機関紙労働者の力第38号 ウォンヨンス(労働者の力会員)

来る9月6日〜10日にメキシコ南部の休養都市カンクンで開かれる 世界貿易機構(WTO)の第5次閣僚会議は、新しく登場した反世界化運動の直接的な 打撃対象になっている。去る1999年11月のシアトル戦闘は、 ニューラウンドを発足させようとする超国籍独占資本と彼らの手先である WTOの陰謀を粉砕した。しかし、9.11テロで造成された国際公安政局下で、 「ドーハ開発議題 (Doha Development Agenda:略称DDA)」という美名の下で 新しい交渉ラウンドが発足し、2005年交渉終結を目標とする渦中で、 中間点検をするための飛び石の会議としてカンクン閣僚会議が開かれることになった。

WTO:資本に搾取の自由を最大限保障する世界資本主義の憲法

よく知られるように、転換期の大恐慌の危機を第2次世界大戦で突破した 世界資本主義は、戦後の新秩序を構築するために、いわゆるブレトンウッズ体制を 発足させた:いわゆる第三世界の貧困問題を解決するという美名の下に 組織された世界銀行(WorldBank)、国際為替レート体制の調停者を自任する 国際通貨基金(International Monetary Fund)、そして国際貿易を管掌する 関税と貿易に関する一般協定(GATT、General Agreementon Tariffeand Trade)。

この三頭馬車は、資本主義世界体制を維持する尖兵として、 冷戦時代資本主義の守護神として機能したが、1960年代末の戦後好況期の終結とともに 発生した資本主義の構造的危機の中で、米国連邦準備銀行の金兌換に基盤する ドル兌換体制の崩壊で事実上、戦後のブレトンウッズ体制も崩壊してしまった。

しかし資本の危機は、労働に対する巨大な逆攻勢に転化した。 これらの三頭馬車も、「ワシントンコンセンサス」という名前の下に、 自由化、規制緩和、構造調整、労働柔軟化などを核心とする新自由主義攻勢の 尖兵として復活した。そして国際金融機構の三頭馬車は、 1970-80年代に第三世界植民地-半植民地地域を資本主義体制に編入-抱き込むと同時に 外債を通して自主的発展の道を封鎖し、特にラテンアメリカでは 1980年代を通じて殺人的なインフラと悪性貧困の拡散で「失われた10年」の 呪いにかけられた。これは1990年代、全世界的な次元に拡大再生産された。

農業協定(AoA)、サービス協定(GATS)及び知的財産権協定(TRIPs)等の 三軸を中心として、1994年4月、マラケシ協定で仕上げられた ウルグアイラウンドを受け継ぎ、1995年1月、WTOは既存のGATTが持つ一時的な 協定の構造を越え、巨大な官僚構造の下で146か国を包括する新しい国際機構として 発足した。WTOは無気力な国連と違い、「紛争解決覚書(DSU)」により 会員国に制裁を加える強力な権限を持つことにより、 超国籍独占資本には最大の利潤を極大化する搾取の自由を付与すると同時に、 全世界の労働者-民衆にとっては基本的な生存まで危機に追い込んでいる。

WTOは、労働者の生存と基本権、農民の生存と環境、普遍的人権、民族国家の主権など、 生活の全領域に対する介入を通し、危機に瀕した資本主義体制の守護者の 役割をすると同時に、資本主義体制に対する挑戦、 すなわち非資本主義的発展の道を基本的に封鎖するシステムを構築したのである。

したがって、WTOは全世界労働者-民衆にとっては悪魔の化身、 いや悪魔そのものだ! 決して民衆により選出されたわけでもなく、いかなる民主的代表性も欠如した 少数の官僚が、特に超国籍独占資本の利益だけを代弁する官僚が、 全地球上の民衆の生を直接的に規定する超国家的規定をなぜ強制できるのか?

ドーハ開発アジェンダとカンクン閣僚会議

1999年のシアトル戦闘は、第3次閣僚会議を物理的-政治的に圧力を加えた。 その結果、新しい交渉の発足は挫折した。しかし2001年11月に正式に発足した 新しい交渉「ドーハ開発アジェンダ」は、その欺瞞的な名前にも表れるように、 シアトル戦闘と反世界化運動の批判に直面した超国籍独占資本の 苦しい身悶えだった。さらに、交渉議題の包括性と甚大な危険性にもかかわらず、 交渉満了期限を2005年末に設定するという無理もはばからなかった。

もちろん、過去1970年代のバンドングループのような第三世界の組織的抵抗はないので、 WTO体制に不満を持つ第三世界の広範な貧困国の組織的-体系的な対応は 構造的に不可能だ。しかし、WTO体制自らの構造的矛盾で交渉の展望は、 現在のところたいへん不透明だ。密室交渉である「グリーンルームテーブル (Greenroom Table)」を主導する四大勢力(QUAD-米国、カナダ、EU、日本)は、 各自の独自的利害により競合して、この他にも主要農業国を主軸とする ケアンズグループと第三世界G77グループ、アフリカグループ、 最貧国ブロックなど、複雑な内部的な利害関係は構造的に円満な交渉を ほとんど不可能にする脆弱な構造であるためだ。

もちろん、新自由主義に対する途方もない批判にもかかわらず、 相変らず新自由主義は大勢であり、これに代わるいかなる代案も提出されていない。 特に、メキシコやブラジルと共に第三世界を代弁する位置にある国々も、 新自由主義の枠組を全面的に拒否したり、IMFや世界銀行と直接対決できない程の 内部的困難に置かれているため、これらの政府交渉団による いかなる解決策も期待することは幻想であろう。

しかしWTOにより強制される無理な交渉議題と日程により、 農業とサービス、知的財産権など既存の交渉領域だけでなく、新しい議題である 投資、透明性、政府調達などの領域でも、合意は決して容易ではない。 したがってこのようなWTO交渉議題の構造的制約性は、 外部からの強力な圧迫に意外に脆弱な独特の弱点を持っている。

もちろん、超国籍独占資本と国際金融機構は、主な帝国主義政府を通し、 また隷属政権(client regimes)の自発的協力により、 地域別協定(NAFTAとその拡張版であるFTAA/ALCA、ASEAN、APEC、ASEM、MERCOSUR、 これとは若干違う次元であるEUなど)、及び双務協定(BIT、FTA、など)の 補完的ネットワークを通し、新自由主義的構造の完成に拍車を加えている。

したがって、現時点で交渉の結果を予断することは困難だが、 カンクンの閣僚会議場を包囲する打撃闘争の戦術的効率性は、 WTO交渉の内的矛盾を表出-爆発させる効果を持たらすことができる。 自国政府の特定の立場と態度に幻想と期待をかけるよりも、 交渉そのものの基本的な破産を持たらすための強力な動員と創意的戦術こそ、 カンクンに集まった全世界労働者-民衆-社会運動代表団の緊急な政治的課題である。

WTO解体のための国際的闘争の政治的方向

シアトル戦闘以後に展開された反世界化運動は、WTO反対闘争の戦略と戦術に関する 多様な論争を触発した。WTOの作動メカニズムと構造、影響力に対する 多様な次元の分析と批判がなされたにもかかわらず、反世界化運動内部には WTO改革対解体、両傾向の論争と闘争を媒介に展開している。

特に改良主義的NGOは、いわゆる「市民社会」の批判を受け入れるような WTO側の態度の変化に鼓舞され、WTO交渉に対する介入と現実的改革を主張しているが、 多数の戦闘的活動家はこうした接近に反対している。 果していくつの象徴的改革で、WTOに内在する本質的問題が解決できるだろうかという 疑問が提起されている。

このような対立は、WTO自体に対する認識の差に始まるものであり、 交渉論の場合、反世界化運動の反資本主義的指向と発展可能性を過小評価している。 その反面、解体論の観点も、WTOの階級的本質に関する明確な認識にもかかわらず、 「代案世界は可能だ!(Another World is possible!)」以上の 具体的代案に進展していない。

しかしWTOの歴史的な根とIMF-世界銀行、G8の帝国主義政府との連係などを考慮すると、 WTOの問題は貿易と投資の問題に限られないことはさらに明確だ。 国際労働運動を代表する国際自由労連(ICFTU)が労働権条項をWTO交渉に含めようと ロビーした事例は、官僚主義の没認識と没常識を赤裸々に見せる。 労働権保護条項がWTOにより保障されるというのは疑問の余地がない幻想ではあるが、 たとえ協定に包括されるとしても、その実效性は相変らず疑問でしかない。

全世界の労働者-民衆運動は、まずWTO解体という政治的目標に集中しなければなるまい。 なぜならWTOの解体は、新しい国際経済秩序に対する議論を誘発せざるをえず、 そうした論争と議論の拡散は、一国的-国際的資本主義メカニズムに対する 大衆的暴露と代案に対する議論に帰結するからだ。そして反世界化運動の進展と 一国的次元の階級闘争の発展は、このような論争と相互作用しながら、 代案世界へのより具体的な前進の道に収斂するだろう。

カンクン大会戦とメキシコの運動陣営:準備と組織化

歴史的にメキシコは1910年代いわゆるメキシコ革命とそれ以後の一連の政治経済的 改革を通し、いわゆる民衆主義体制を構築した。だが、制度革命党(PRI)の 国家-党独裁体制に変質した革命勢力は、民主主義のための社会変革を組織的に 弾圧した。特に、1980年代のいわゆるペソ危機を経過しながら、 エセ民衆主義国家-党独裁体制の総体的危機を迎えた。しかし、これは一時 民主化闘争の求心だったカウテモク・カルデナスの民衆民主党(PRD)の 政治的無能力により、新自由主義の援助格であるビンセントフォックス 国民行動党(PAN)政権の登場で歪曲された。

そしてメキシコ資本主義の危機は、制度革命党体制により、 メキシコの北米自由貿易協定(NAFTA)体制への編入と全国土のマキラドラ (Maquiladora)化を通じて克服が試みられたが、 その結果は広範な低賃金層と全国的次元で貧困の再生産だった。

こうした文脈で、1994年1月、サパティスタ民族解放軍(EZLN)が 新自由主義に対する第4次世界大戦を宣布したのである。 しかし武装闘争と政治闘争の結合という伝統的ゲリラ路線の代わりに インターネットを通じた象徴戦-イメージ戦を追求するポストモダンスタイルの このゲリラ運動は、メキシコの政治経済的変革の過程で新しい代案の 創出に失敗した。現段階のメキシコの労働者-民衆運動は、 制度革命党体制の総体的崩壊局面の中で、 効果的政治闘争の組織化と大衆的指導力構築に失敗し、 したがって相当な困難に直面している。

したがって、メキシコの労働者-民衆運動の脆弱性は、カンクン闘争を準備する過程で そのまま露呈したように見える。もちろん、蓋を開けてみなければわからないが、 新自由主義に対する宣戦布告をしたサパティスタ運動は、 原住民の生存権と文化的権利という新社会運動類のアイデンティティ政治 (identity politics)に矮小化され、多くの活動家は疑問を持たざるをえなくなった。 サパティスタはどこにいるのか?

1990年代の国際的反革命攻勢の中で、新自由主義に対する宣戦布告と 2度の反新自由主義国際会議(1996年のメキシコチアパスと1997年のスペインマドリード)を 通し、シアトル戦闘で爆発した反世界化運動の先駆的役割を遂行した サパティスタ運動は、「政治権力を掌握せずに世界を変革する」という 夢想と詭弁に陥るのだろうか? 副司令官マルコスの最近のコミュニケを見ると、残念なことにメキシコの カンクンでは何も起きていないように見える。

もう一つの側面で、メキシコの労働運動は、去る半世紀間、 制度革命党の体制下でメキシコ労働総同盟(CTM)官僚主義体制がいかなる 階級闘争的抵抗も許さなかったものの、国家-党体制の総体的危機とともに、 鉄道、電気、石油などの基幹産業の民営化と基本的生存権、労働組合を組織する 自主的権利のための下から闘争は加速化されていた。そして、 この過程で戦闘的労組である「真生労働戦線(FAT)」を含む反官僚主義勢力の 全国労働組合(UNT)を結成したことがある。今のところ、確認はされていないが、 この自主的労働組合運動の実質的闘争力と指導力が果してどの程度なのか、 今回のカンクン闘争で試験台に上がるはずだ。

反世界化運動の質的跳躍のための労働運動の国際的課題

最近ドイツ金属労組(IG Metal)のストライキの敗北と、それによる指導部の交替は、 全世界の労働運動に重要な教訓を与えている。新任指導部は社会民主主義を 代弁しない政党に労働組合の基金を与えない理由がないという新任委員長、 ウィルゲン・ペトスの発言に見られるように、基本的に変化した政治地形で 労働組合運動の自主性、特に市民主義政党からの自主性と階級性への復帰と 理解することができる。しかし果して新自由主義の攻勢の下で、 市民主義的、ケインズ主義的パラダイムだけで労働者階級の政治経済的利益を 防御できるのだろうか? その返事は当然、否定的だ。

現時期の階級闘争の局面は、ささいな改良、闘争で勝ち取った政治的成果の防御は 決していち企業の水準、または地域的-全国的水準、すなわち一国的枠組の中では 可能ではない。資本は、一方で無限生存競争で自己破壊的傾向を見せるが、 同時に労働者階級に対抗する闘争戦線で、共同の階級的利益で団結し、 彼らの団結はより国際的で構造的なものだ。したがって、労働者階級と民衆の闘争も、 やはりさらに国際主義的に組織されなければならない。最小限国際的共同闘争の戦線の 構築と拡張が先行してこそ、一定の譲歩の余地が確保されるはずだ。

このような意味で、単位事業場次元の闘争でさえも同時に直接、間接的に 多国籍資本と国際金融機構に対する総体的闘争、政治経済的及びイデオロギー闘争の 側面を内包している。そのような意味で、国際的階級闘争の現段階は、 ささいな経済闘争もやはり新自由主義世界化の攻勢に対抗する 反帝-反世界化闘争の一つの構成部分でしかない。したがって超国籍独占資本の 政治経済的代理勢力に対する国際的動員闘争と代案社会建設のための 世界社会フォーラムを軸に展開する反世界化運動は、外国で行われる遠い闘争ではなく、 韓国労働者階級自身の闘争だ。その上、WTOに繰り越された農業開放交渉が、 農民生存権を直接的に破壊-威嚇するからといって、労働者階級闘争を 農民運動の支援に限定することは、 改良主義的労組運動の政治的近眼を反映することと違わない。

再度強調するが、国際的にも国内的にも、反帝-反世界化運動に対する 労働運動の対応はたいへん貧弱で、新しい国際的次元の闘争を組織するための 努力と政治的想像力は、途方もなく貧困だ。たとえ超国籍NGOが マスコミを独占して、労働者-民衆の声を最大限制限することにより、 現段階の反世界化運動を主導しているとしても、彼らの指導力や影響力は、 その構造的要因により制約的でしかない。強力な組織力と動員力を持つ 労働者階級運動の目的意識的な介入、すなわち現段階の反世界化運動の 決定的弱点が克服される瞬間、反世界化運動はこれまでに見せた爆発力を 跳び越える新しい次元に発展するはずだ。

韓国のカンクン代表団と新しい国際主義

今回のメキシコのカンクン大会戦は、いくつかの限界にもかかわらず、 帝国主義戦争攻勢が多少弛緩した局面で、WTO自体に対して限定された狭い意味の 反世界化運動のある結節点になるだろう。閣僚会談のあらゆる具体的結果が カンクン闘争により決定されるわけではないが、1999年のシアトル戦闘以後の 継続する国際的動員打撃闘争と世界社会フォーラム運動、 反戦反帝闘争との結合-拡張など躍動的発展過程を総合する意味を持つ.

韓国の労働者-民衆運動の場合も、持続的教育と闘争を通じて国民行動 及び民衆連帯の共同代表団200人をカンクンに派遣することになった。 過去の現場闘争に閉じ込められて、国際的な視野と展望を持てなかった各部門の 運動が、現実的な困難にもかかわらず、大規模(?)国際代表団を組織したことは、 一定の政治的成果だ。一国的階級闘争の熾烈さと対照される政治的な想像力と 国際主義活動の貧困という構造的な脆弱性を跳び越える契機として寄与することを期待する。

新しい国際主義は疑問の間違いなく、反世界化運動の主要な側面だ。 韓国代表団は、他国の運動に比べると組織的代表性を持っているが、 今回の機会を通じて国際主義の観点を確立し、 国内の日常的闘争を全国化-国際化する実践的経験を蓄積する機会に転化させねばならない。

国際的階級の逆関係を変化させる主要な流れとしての反世界化運動は、 決して民族主義的論理に還元されえず、その本質において 反帝国主義的-反資本主義的運動だ。しかしまだその歴史と根が浅い運動である関係で、 いくつかの短所と困難を構造的に持っている。それでもその短所と困難の克服は、 まさにこの運動の資産、すなわち新しい世紀の国際的次元で変革の展望と、 その一国的階級闘争との弁証法的関連に対する科学的認識と実践的経験の蓄積に 転化するだろう。

全世界労働者-民衆と共に、カンクンに集結する全世界労働者-民衆-社会運動の同志と共に、 資本主義的搾取の化身、WTOと超国籍独占資本に対抗する 反帝-反世界化国際連帯闘争の道にたとう! メキシコのカンクンでWTOを打倒しよう!

2003-09-08 17:58:02

http://www.pwc.or.kr/maynews/readview.php?table=organ&item=2&no=1051


Created byStaff. Created on 2003-09-12 09:39:14 / Last modified on 2005-09-05 08:07:19 Copyright: Default

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