韓国では今日(2月9日)、平昌冬季オリンピックの開会式が開かれる。 盛り上がりに欠けると言われていた平昌オリンピックだが、北朝鮮からの参加と女子アイスホッケーの南北統一チーム構成、そして北朝鮮による文化公演や要人の参加などで一気にオリンピック・ムードが盛り上がっているようだ。 しかし、そうしたオリンピック・ムードの中、平昌オリンピックに反対の声を上げてきた 「平昌冬季オリンピック反対市民監視団」、「平昌オリンピック反対連帯」が、開会式前日の2月8日夜、韓国のソウル市麻浦区にあるフリースペース「共有地」で、オリンピックに起因する問題を考える日韓国際フォーラムを開催した。 参加者はざっと30〜40人程度で、みんな厚いコートやジャケットを着込んでいる。会場はあまり十分に暖房が入っていないのだろう。 これまで韓国では、仁川アジア大会の失敗、フォーミュラ1の失敗など、「経済効果」をうたって大々的に開かれたメガスポーツ・イベントの失敗にもかかわらず、平昌オリンピックに反対する声は必ずしも大きくはない。しかし反対の声を上げ続ける人々は確実に存在する。

▲2月8日、ソウル市麻浦区のフリースペース「共有地」で開かれた韓日オリンピック反対フォーラム終了後の集合写真(出典はListen to the CityのFacebookタイムライン)

Listen to the Cityのパク・ウンソン氏の司会でフォーラムが始まり、最初にプレゼンテーションを行った平昌五輪反対連帯のキム・ミンス氏は「予定された失敗したオリンピックの災害は必要ない」を主題にさまざまな問題を指摘した。彼は「オリンピックは失敗するしかない。すでに破壊された環境、オリンピックで苦しむ人々にとって成功はあり得ない」と語り、環境問題、経済効果のウソ、差別の構造、労働問題、国家主義の問題、利益を独占する少数の大企業など、オリンピックに反対するべき多くの問題を指摘した。

次にプレゼンテーションした「オイリョンの人々」のナム・ジュンギ氏は、今回の平昌オリンピックで使用されるスキー競技場を造成するために破壊された加里王山の自然について報告した。3つの峰からなる加里王山は豊かな自然が残る山で、加里王山でしかみられない希少な植物や樹齢600年を超える大木が残されていたが、スキー競技場造成のためにこうした貴重な自然が破壊されたという。

最後のプレゼンターは、日本から参加したいちむら氏。東京オリンピック開催のために強行された公園や競技場、住居などの再開発の問題などを中心に日本の事例を報告した。また、プレゼンテーションの後に築地市場移転に関する質問があり、これについては同席していた反五輪の会の首藤氏からの説明があった。なおこのフォーラムには日本から反五輪の会とオリンピック災害おことわり連絡会のメンバーも参加した。

プレゼンテーション後のディスカッションでは、平昌冬季オリンピック反対市民監視団のキム・サンチョル氏、イ・ギョンニョル氏から加里王山の復元に関する疑問や日本の福島原発事故による放射能汚染の問題、築地移転問題などが議論された。 ディスカッションの中では、北朝鮮の参加による「平和オリンピック」で注目を集める今回のオリンピックについて、「平和」や「スポーツ」の名前ですべての問題が隠されかねないことに対する警戒、国際的な反対運動の連帯の重要性などにも言及された。 今回の平昌オリンピックが商業的に成功しようが失敗しようが、民衆にとってはすでに失敗であることは明らかだが、今後、東京オリンピックが「成功」すれば、それはまた次のオリンピック開催地を狙う釜山などに影響すると言う。あらかじめ失敗が決まっているオリンピックを成功させてはならない、そのためにも粘り強い連帯で反対の声を上げ続けようという呼びかけがあった。

最後に、これまでの反対運動やこれからの反対運動についても報告があった。 何事もなかったかのように聖火リレーを通過させてはいけないと思って聖火リレーに対する抗議行動を行ったこと、オリンピック開催期間中にも抗議行動を行うことなどが報告された。

2年後には日本でも東京オリンピックが開かれる。 そして今、日本では東京オリンピックを口実として無理な規制緩和や人権の侵害、環境の破壊などが進められている。まだ遅くはない。平昌で開かれるオリンピックは、東京オリンピックについても考え直すいい機会だろう。

なお、レイバーネット日本は今回のフォーラムにあたり、主催者側にFacebook Liveでの中継を要請し、受け入れていただいた。 今回のフォーラムの録画は以下のURLから視聴できる。

前半: https://www.facebook.com/urbandrawings/videos/1593819104021334
後半: https://www.facebook.com/urbandrawings/videos/1593862797350298
動画の言語は韓国語で、いちむら氏、首藤氏の発言は日本語で聴くことができる(後半)。