本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:エジンの4月16日セウォル号脱出記
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1399676233987St...
Status: published
View


エジンの4月16日セウォル号脱出記

労組京畿地域支会新興分会長の末娘…「親の気持ちで行動してくれ」

キム・ヒョンソク 金属労働者編集局長 2014.05.09 18:20

[編集者の言葉]セウォル号不明者の帰還と犠牲者のくやしい死を追慕して、この文を掲載します。 セウォル号虐殺の真相究明と朴槿恵大統領の責任を問うために、真実を知らせなければならないと判断して、生存した子供の話を掲載します。

4月16日朝6時。 眠っていたチャン・ドンウォン労組京畿支部京畿地域支会新興分会長の携帯電話のベルが鳴った。 済州道に修学旅行に行った末娘のエジンが朝から起きだして友人とおしゃべりをしながらお父さんに電話をかけてきた。 普段、エジンと同じクラスの友達と遠慮なく過ごすほど、娘とは仲が良いチャン分会長だが、勤務を終えた疲れで夜が明けたら通話しようと言って電話を切り、また眠った。

この時までは、チャン分会長と安山檀園高等学校2年生のエジンが体験する惨憺たる大韓民国の現実を予想することはできなかった。 また娘の電話がかかってきた時刻は8時50分。 声が全く違っていた。 「お父さん、変だ。船がぐらっと揺れて傾いて、船からコンテナが落ちた」。 船が傾いたという言葉に驚いたチャン分会長は、海洋警察の電話番号を調べることにしてひとまず電話を切った。

20分も過ぎただろうか。 また娘から電話がかかってきた。 エジンは海上警察の電話番号を知らせるお父さんに、船に水が入ってくると不安がっていた。 びっくりしたチャン分会長が、どうしろという放送はないかと聞くと、ただ「動かないでください」というだけだと答えた。 チャン分会長はいますぐ友人と甲板に上がれと大声を張り上げた。

▲5月1日、安山文化広場に作られた市民焼香所で学生たちがセウォル号犠牲者追慕と不明者帰還を祈る短冊を付けている。[出処:シン・ドンジュン]

チャン分会長はすぐに珍島へと向かった。 降りて行く間、妻から学生全員が救出されたという連絡を受けた。 長い間、労組活動を経験したチャン分会長の答は簡単だった。 「マスコミを信じるのか?」 チャン分会長が珍島に到着する頃、連絡途絶で心配していた娘からの電話があった。 喜びはつかの間、エジンから聞いた沈没船脱出記はとんでもないものだった。

子供たちは、海上警察も、船員も、誰の助けも望めなかった。 エジンは船に乗れば、まず非常口と救命チョッキの位置を確認しろというお父さんの言葉を心に刻み込んでいた。 調べておいたキャビネットから自分で救命チョッキを取り出して、友人と分けあって着た。 互いに押したり引いたりして脱出を始め、とても苦労した末に甲板に出て、冷たい海に飛び込んだ。 寒さとおびえた子供たちを救ったのは漁船の漁夫だった。 漁夫は子供たちを近くの巨次島の村会館に連れて行き、エジンは村会館の電話でお父さんに生存の事実を知らせた。

珍島総合室内体育館に到着したチャン分会長は、生存者リストを探したが娘の名はなかった。 海上警察に聞いたが、これ以上救助者はいないという回答だけだった。 巨次島にいる娘と通話までしたチャン分会長が、再確認しろといったが、いないという答が戻った。 チャン分会長は、また電話をかけてきたエジンと一緒の友人約30人のリストを一人一人書きとめて海上警察に渡し、子供たちを連れてくるよう要求した。 結局、チャン分会長とセウォル号から脱出した末娘が再会するまでに国家がした事は、でたらめなリスト作成と巨次島から彭木港までの船便しかなかった。

チャン分会長の怒りはこれで終わらなかった。 深刻なトラウマに苦しんで入院した病院の13階で自殺未遂までしようとする生存者のために、誰も責任を取ったり措置しようとはしなかった。 生存者のための治癒機関と治癒プログラムを提案したのもチャン分会長をはじめとする生存者の家族だ。

チャン分会長は生存者の感情の起伏はまだ深刻だという。 「子供たちどうしの時は笑って騒いでいても、夜にそれぞれの部屋に入ると泣いて、吐いて、その上気絶もします。 私たちの末っ子は元気な方だが、脱出の時に見た自販機の下敷きになった学生をよく思い出すという。」

生存して戻ってきた子供たちを待っていたのは、速報競争に駆けつけた報道機関の記者だった。 検察は生存学生から陳述書を取ると飛びかかってきた。 教育当局は何の対策もなく、まず授業を正常化すると言って、状況を隠すことに汲々としていた。

労組を弾圧するために組合員間で分裂を助長するという事実をよく知っているチャン分会長の目に、犠牲者、不明者、生存者家族を分裂させようとする政府の行為が飛び込んできた。 チャン分会長は被害者の家族を一つに集めるために努力し、結局、犠牲者、不明者、生存者家族は共に対策委を作った。

対策委はセウォル号惨事の徹底した真相究明と、朴大統領の真摯な反省と責任を要求している。 チャン分会長は「今回警鐘を鳴らし、再発防止対策をたてなければ、同じ事が繰り返される」とし 「金属労組の組合員たちは、同じ父母の気持ちで行動をしてほしい」と頼んだ。(記事提携=金属労働者)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-05-10 07:57:13 / Last modified on 2014-05-10 07:57:14 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について