韓国:法王がコットンネに行ってはならない理由 | |||||||
Menu
おしらせ
・レイバー映画祭(報告) ・レイバーネットTV(11/13) ・あるくラジオ(10/10) ・川柳班(11/22) ・ブッククラブ(10/12) ・シネクラブ(9/1) ・ねりまの会(10/12) ・フィールドワーク(足尾報告) ・三多摩レイバー映画祭 ・夏期合宿(8/24) ・レイバーネット動画 ●「太田昌国のコラム」第95回(2024/10/10) ●〔週刊 本の発見〕第367回(2024/11/7) ●「根津公子の都教委傍聴記」(2024/10/24) ●川柳「笑い茸」NO.157(2024/9/26) ●フランス発・グローバルニュース第14回(2024/10/20) ●「飛幡祐規 パリの窓から」第95回(2024/9/10) ●「美術館めぐり」第4回(2024/10/28) ★カンパのお願い ■メディア系サイト 原子力資料情報室・たんぽぽ舎・岩上チャンネル(IWJ)・福島事故緊急会議・OurPlanet-TV・経産省前テントひろば・フクロウFoEチャンネル・田中龍作ジャーナル・UPLAN動画・NO HATE TV・なにぬねノンちゃんねる・市民メディア放送局・ニュース打破配信プロジェクト・デモクラシータイムス・The Interschool Journal・湯本雅典HP・アリの一言・デモリサTV・ボトムアップCH・共同テーブル・反貧困ネットワーク・JAL青空チャンネル・川島進ch・独立言論フォーラム・ポリタスTV・choose life project・一月万冊・ArcTimes・ちきゅう座・総がかり行動・市民連合・NPA-TV・こばと通信
|
法王がコットンネに行ってはならない理由コットンネが美しく見えますか?
ハ・グムチョル記者 2014.08.12 10:44
25年ぶりにまた訪ねてきた法王の訪韓を控えて全国が浮き立っていますが、 法王の訪韓を素直に喜べない人々もいます。 まさに法王の訪韓日程中に障害者収容施設の「コットンネ」訪問が含まれているためなのです。 そのために、いくつかの障害者団体はこの1週間、 光化門と明洞聖堂、そして国家人権委員会などを尋ね歩いて 「法王様、コットンネに行かないで下さい!」と叫びました。 こうした障害者界の動きに対する世論の関心もかなり高く、 これを報道したメディアオヌルの記事 「コットンネ26年居住者『法王様、私を踏み越えてコットンネに行って下さい』」は、 ポータルサイト「ダウム」のメインページに掲示されたりもしました。 しかしコメントの反応が普通でありません。 もちろん「誹謗中傷の方が何も返信がないより良い」とはいえ、 誹謗中傷の強度はかなり強いです。 そのうちに「法王が訪韓されることを嫌ってさげすもうとする輩の仕業」とか、 「コットンネが受ける予算をうらやむ他の勢力の計算が隠れている」というような陰謀説まで、 さまざまでした。 それでインターネットユーザーの各種の誤解を解いて差し上げ、 「コットンネ」に代表される障害者収容施設の問題を知らせるため手紙を書きました。 以下の文は 「フランチスコ法王のコットンネ訪問に反対するコットンネ居住脱施設障害者の会」と共に作成しました。 ▲法王のコットンネ訪問に反対する障害者活動家のパフォーマンス インターネットユーザーの皆さん、こんにちは。 皆さんのコメントは面白く見ました。 皆さんのコメントを読みながら、普段市民が障害者施設問題をどう見ているのか、よくわかりました。 しかし少なからぬコメントは、相変らず障害者施設への多くの誤解と偏見の中で書かれたという思いを拭えません。 一番最初に眼についたコメントは、多少客観的に状況を見ようとしているような、 以下のような文でした。 「薄情に聞こえるかもしれないが、 国内の障害児収容施設の目標は『人間らしく』より『安全に生命を維持』することだ。 まだこの国の現実的な最善はその水準であり、 100ではなく20しか与えないから誤っていると話すのはどうだろうか?」 「障害児」という表現はひとまず論外として、 それでも施設の中での人生が人間らしい人生ではないという事実を認めてくれる方がいてうれしかったです。 これは施設の中での人生は、ただ『安全に生命を維持すること』、 『ただ命さえ維持して生きるということ』に過ぎなかったと話す多くの脱施設障害者同僚の証言と同じです。 しかし今、この方はそれがわが国の現実であり、最善だから、その水準で満足しなければならないと強弁します。 人間に生まれ、人間らしい人生を要求することがなぜいけないのか、私たちにはよく理解できません。 人間が人間らしく生きることができず、ただ獣のように命だけ維持する人生なら 「20を保障」されるのではなく、人間「以下」の人生、 つまり「マイナスの人生」を生きてきたのではないでしょうか? 福祉部の統計を見れば、わが国の障害者生活施設で暮らす障害者は2012年末に合計3万640人にのぼるそうです。 これは法人が運営する施設だけを集計した統計なので、 各種の未申告施設・個人運営施設で暮らしている数も入れれば、 はるかに多くの障害者が施設生活をしているのでしょう。 この多くの人々がすべて人間「以下」の人生、 「マイナス」の生活を送っているとすれば、 それが現実的な最善と認めてしまうのではなく、 彼らが少なくとも「人間の生」を暮らせるように変える方が正しいのではないでしょうか? ▲「法王様、コットンネにこないで下さい」と叫ぶ障害者の記者会見を報道した記事につけられた非難のコメント. 施設、それは劣悪な韓国障害者福祉の素顔!その他の多くのコメントは、 国家と社会、そして家族も捨てた障害者の面倒を見る施設について、 あまりにも乱暴に話しているのではないかというような内容でした。 例えばこんな形です。 「殺伐とした80年代から、国家と社会に捨てられた人々を後援者篤志家のお金を集め、 最善を尽くして運営してきたわが国の障害者福祉の生き証人のような施設なのに、 今はとても肥大化したことは認めるが、こんな形で粗捜しするするとは...」 ですからこの人の言葉は、人権と福祉の暗黒期のような80年代、 それでもコットンネのようなところでもあったから障害者が命をつないで暮らせたのではないかという話です。 しかしコットンネは暗黒期のような80年代の救援者でなく、 劣悪な韓国障害者福祉の心苦しい「素顔」だと申し上げたいのです。 わが国は日帝植民地と朝鮮戦争などを経て、 その後、公的福祉制度がほとんど何もなく、 外国宣教師が運営する救護施設を主に国内の宗教家たちが譲り受けて運営してきたことがほとんど唯一の福祉でした。 だがわが国は数十年経っても障害者が地域社会で暮らす制度とシステムを作るのではなく、 既存の救護施設の形態を維持してきました。 そのような渦中に、クーデターで権力をにぎった全斗煥(チョン・ドゥファン)政権が突然出したのが「福祉国家具現」でした。 華々しく登場したスローガンでしたが、 全斗煥政権が具現しようとする「福祉国家」は実は各種浮浪者を「社会悪」の名で烙印し、地域社会から隔離させることでした。 ですから彼らの一部は「社会浄化」の名で三清教育隊に連れて行かれ、 わけも分からないまま兄弟福祉院に収容され、 60%の「心身障害者」は政府によって 「種類別に分離し、それぞれ専門リハビリ施設に収容(保健社会部、1982年)」されました。 つまり80年代にコットンネのような施設があったから、それでも障害者の命をつなぐことができたのではなく、 コットンネのような施設に障害者を追いやることを「福祉」と装って 「福祉国家」が当然するべき責務を回避したのです。 そんな政策が続いてきた結果が「トガニ」で知られる光州インファ院事態であり、 今もポータルサイトを少し検索すればわかるように、「○○市のトガニ」、 「△△版トガニ」といったように、あちこちの施設で障害者の人権侵害が続いているのです。 ▲「コットンネ訪問NO!」、「一緒に暮らしましょう」 美しいところコットンネ、では皆さんが入って暮らせますか?もちろん、すべての障害者生活施設で障害者虐待、暴力、人権蹂躙などが強行されていると言っているのではありません。 私たちは少なくない障害者生活施設でこうしたことが行われていることを知っていますが、 それでも献身的に「奉仕」して最善を尽くしている施設従事者もいるだろうと考えます。 そのためか、自らコットンネ勤務者と明らかにされた1人がこうしたコメントを残して下さいました。 コットンネ勤務者です。 少し書くので参考にしてください。 広報要員ではありません。 ・私が働く所は、できていくらも経たず、 6人1室で建築されました。それも最近規定が変わり、5人1室に変えようと努力していると理解しています。(…) ・コットンネではなくても障害者施設は1年に1回程度はすべての家族と職員がキャンプに行きます。 私たちは昨年は古城に行って海を見物し、今年は済州道に行こうとしていたのですがセウォル号事件のためにキャンプそのものを取り消しました。 ・最近は障害者施設最低基準が導入され、基準に合わせています。 以前は施設内の職員奉仕者が髪を刈っていたのを、外部の美容室を利用します。 コットンネが居住人に良い環境とサービスを提供しようと努力しているという事実を伝えようとしているようです。 私たちはその努力をさげすむつもりはありません。 しかしこの方の努力がいくら大きくて立派でも、 施設という構造では絶対実現できないものがあります。 それはまさに居住人の「自己決定権」です。 人は年を取ると、自然に自分の人生の進路を決め、そのために毎日毎日自分の人生を選択していかなければならない存在です。 障害者もこうした「自己決定」の人生を作れるように、 社会的支援政策を行うのが望ましい社会の姿であり、 多くの先進国もこのような方向に進んでいます。 しかしコットンネの施設がいくら良くなっても、 どんな家で暮らしても、どこに旅行に行くか、どこで髪を刈るのか… そうしたことに居住者の自己決定が反映されたことがあるでしょうか? これらすべては施設が決めた通り、 毎日毎日与えられるまま生きてきたのではないのでしょうか? 以下はすべてコットンネで暮らして脱施設した人々の証言です。 「37年の歳月のうち、20年ほどを施設で暮らした。 施設は午前5時に起きて朝ごはんを食べ、11時半にお昼を、4時半に夕食を食べる所だった。 同じ時間帯に同じ人生、『今日が昨日のようで、明日が今日のような』所だった。」 (ユン・グクチン) 「10年前私が重症脳性マヒの障害者として地域社会に出て行って、 自立生活をしようとしたが、 私を見て精神科の相談を受けろといったよ。」 (ペ・ドクミン) 多少感情的かもしれませんが、 ただこうした質問を差し上げたいです。 コットンネという施設がそんなに立派で美しいところなら、 いやそれなりに暮らせるところなら、コメントで文句を言う人々がそこで暮らしたいと思いますか? 人間らしい生活の最も基本的な条件である「自己決定権」を保証されない空間で、 ある者は5〜6年、またある者は20〜30年、またある者は一生暮らしていきます。 しかし皆さんが話すその美しいところで暮らして出てきた人々はこう話します。 「寒くて腹が減るより悲しいことは、私が獣になっていくような気持ちだった」。 ▲「ヒットラーは100万人の障害者をガス室で殺しました。『今日のヒットラー』システムは障害者を社会から分離します。フランチスコ法王はこうしたシステムに祝福を伝えようと思いますか?」と書かれた英文の横断幕 「法王の訪韓をさげすもうとする無理」ですか?ここまでは事実、ある程度予想できる反応でした。 しかし次のコメントは本当に想像もできませんでした。 「法王が訪問されるのを嫌ってさげすもうとする無理だ。 彼らがこのように後から操縦してあおっているようだ。 言論に出しながら。 まさに(法王と)セウォル号犠牲者家族の出会いを嫌う輩」。 法王のコットンネ訪問に反対することと法王の訪韓自体に反対するのは全く事実ではありません。 その上、法王とセウォル号犠牲者家族の出会いを嫌っているとは。 この前、光化門の近くで自分たちの生存権を守るために座り込みをして戦っているセウォル号遺族、労働者、障害者が集まって 「法王様、低いところに臨んで下さい」と訴える記者会見を行いました。 この日の記者会見には、法王がコットンネではなく 「障害等級制・扶養義務制廃止」を要求する座込場にきてくださることを訴える障害者と、 セウォル号特別法制定を要求する遺族が共にしたという事実を申し上げたいです。 法王のコットンネ訪問に反対する人々も、 フランチスコ法王が全世界に与えた感動のメッセージと進歩的な動きが韓国にも伝えられるように願っています。 まさにそのため、フランチスコ法王の意を全て伝えるためにも、 法王のコットンネ訪問はいけないということです。 私たちはむしろ、誰かがフランチスコ法王に韓国の障害者がコットンネのような施設に閉じ込められて暮らしている実状が伝えられないように、 情報を遮断しているのではないのかと疑わしいほどです。 すでに天主教正義具現司祭団のハム・セウン神父も 「コットンネはカトリックの社会福祉精神による共同体ではなく、 一種の大きな強制収用所の模型」とし 「これは18世紀水準の障害者に対する認識で、 国連障害者権利協約からも外れる」と指摘されたことがあります。 フランチスコ法王は以前に 「神父が貧しい人にパンを与えれば立派だという称賛を聞くが、 なぜ彼が貧しいのかという社会構造について話せばアカという非難を聞くことになる」とおっしゃったことがあります。 貧しい人に単に恩恵授与と同情だけを施して、 誤った社会構造については話さない修道者の誤った態度を叱責する厳しい指摘です。 しかし、コットンネの設立者オ・ウンジン神父はいつも 「ばか力しかなくても神様の恩寵です」と話します。 これは行動する教会、通りの教会、不平等に対抗する教会を強調してこられたフランチスコ法王の言葉とは あまりにも距離が遠い言葉だと考えます。 私たちは、誰よりもフランチスコ法王が伝える和解と愛、平和のメッセージが韓国にも伝わることを願います。 だからさらにコットンネはいけません。 法王が障害者の人間らしい権利を奪った土地の上に作られた巨大な「収容」施設でなく、 堂々と地域社会で人生を暮らすために奮闘する障害者の手をとってくださることが当然だと考えます。 付記
ハ・グムチョル記者はビーマイナーの記者です。この記事はビーマイナーにも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。 翻訳/文責:安田(ゆ)
Created byStaff. Created on 2014-08-13 13:57:33 / Last modified on 2014-08-13 13:57:34 Copyright: Default このフォルダのファイル一覧 | 上の階層へ |