韓国タイヤ『業務上』白血病...「お母さんを信じて」

［韓国タイヤは白血病の地雷原か(1)］闘病中のクォン氏の娘と会う

「家族は勇気を持っています。お母さんがちゃんと治療が受けられると信じて います。お母さんが悪くなるなど、そんなことは考えていません」。

大田で職場生活をしながら、錦山の自宅、母親クォン某氏が入院しているソウ ルの病院を行き来する忙しい日常を送っている20台後半のK氏。彼女は細い体格 に元気もなさそうだったが、『お母さん』の話をするたびに表情が生き返った。

言えないお母さん

韓国タイヤ錦山工場の社内協力業者で1996年から働いたK氏の母親クォン氏は 2010年11月、『急性リンパ球性白血病』判定を受けて闘病中だ。韓国タイヤの 加硫工程と修理作業場で、半製品のタイヤの運搬や不良タイヤの修理補助の仕事 をしていたクォン氏は、勤務中、ハンソルなどの有機溶剤に含まれたベンゼン などで白血病が発病したと見て、勤労福祉公団大田地域本部に療養申請、労災を 申請した。

クォン氏は生死を行き来した。家族は骨髄移植者を探すためにあちこちで努力 したが、結局失敗した。大田のある病院で坑癌治療を受けたクォン氏は、結局 ソウルのある病院で今年4月、臍帯血の移植を受けた。

「小さな希望を持ってお母さんをソウル病院に入れました。家族を検査しまし たが、合いませんでした。臍帯血移植は他の手術より回復率が低いそうです。 医師も手術前、生存の確率は50対50だとし、骨髄移植より苦しいといいました。 今、白血球の数値上げる注射も受け続けていて、良くなったわけではありませ んが5年間再発しなければ、正常な人のように暮せないそうです」。

▲K氏のぎゅっと握った両手に彼女の希望が読める。彼女は韓国タイヤがハンソルなどの有機溶剤を使ったことを認め、白血病が業務上の疾病と認めろと伝えた。

クォン氏は現在無菌室に入院しており、面会が難しい。一日に一回、一時間の 面会で、家族は慰められている。だがクォン氏の気力がますます衰弱し、電話 も難しくなっている。クォン氏との簡単な電話インタビューはできるかも知れ ないというので電話をしたが、彼女は『お母さんどうしたの。苦しい？ 話せな いの』と震える声で何回も尋ねて電話を切った。

「話す気力がまったくなく、食べたものもみんな吐いてしまいます。横になっ ています。話ができないので、電話しても1-2分以上は難しいです。言いたいこ とも多いかもしれませんが、力がなくて言えません」。

お母さんの健康が一番心配な彼女は、労働災害の申請過程などについてはお母 さんに話さない。業務上疾病の判定結果が遅れ、お父さんと勤労福祉公団に行っ てはがゆい気持ちで情報公開請求をしても、この過程がお母さんには秘密では ない秘密になってしまった。

「お母さんには全部は言えません。ただ結果を待っているといいます。お母さ んが心配すれば健康がさらに悪くなるからです。以前、労災申請をした時に、 調査のためにインタビューをしましたが、その時に健康が悪化して何度か応急 室に運ばれました。でも結果は良くなくて、ずっと遅れればお母さんがとても 悪化しないか心配です」。

息が詰まる韓国タイヤの臭い

初めは涙しか出なかったが、今は腹が立つというK氏には、理解できないことが 多い。韓国産業安全公団の産業安全保健研究院の職員と母親の代理人の資格で 錦山工場内に2次調査に行った時、K氏は工場に入るとすぐゴムが焼けた臭いで 息がつまりそうになった。そこで働く労働者たちは『慣れた』と言って理解で きるが、胸が苦しくなるのはどうしようもない事だった。

K氏がみた工場の様子は、母親の話とは少し違っていた。換気設備があって、臭 いもよく抜けているようだった。

「どうも韓国タイヤが社会的な問題になってから、ある程度改善したようです。 特に(有害)物質が何で、みんな安全だというパンフレットを職場に備えつけま した。お母さんが働いていた時はそんなことはなかったといいました。周辺の 人もほとんどがそう言います。お母さんは、換気がなく、工場の内は煙だらけ で、その上手袋もはめずに働いたといいました」。

ハンソルの取り扱いに関しても同じだ。会社側はハンソルは、2000年初めから 使っていなかったという。勤労福祉公団大田地域本部も韓国タイヤ錦山工場で 作業環境測定をしたが、その結果ベンゼンは検出されず、他の有害物質も検出 されないか基準値未満だったと明らかにした。

だがクォン氏をはじめ、労務士(代理人)は違う意見だった。代理人は加硫工程 は作業の内容上、有機溶剤のハンソルなどの有機溶剤を使わないわけにはいか ないと主張した。代理人によれば、クォン氏は主に生ゴムを溶かしてはがした りする時(加硫工程内での不良タイヤ解体作業)、機械ではがす時(清掃作業)、 不良品を修正する時(加硫(検査)工程修理作業場)、服や皮膚にゴムがついた時 (個人衛生管理)、赤いハンソルの貯蔵庫にある「ふたがない」ゴムの四角いハ ンソルの容器からハンソルを出したり、ハンソルの容器を加硫工程に運ぶ時、 いつもハンソルを取り扱った。

また代理人たちは鼻水と唾には真っ黒な粉塵が混じるほど、作業場内の有害ガス や粉塵の停滞などの換気問題が深刻な水準だと主張した。タイヤ製造工場の 特性上、作業場の温度が下がるとタイヤが固まるという問題により、作業場内部 の熱が外に出ることを最小にしなければならないので、換気が十分にできないと いうことだ。

K氏は2次調査の時、研究員と周辺から陳述を受けた時、4人のうち3人がハンソ ルを取り扱った事実を証言したと伝えた。すべてクォン氏と同じ期間働き、 勤務がつらく止めた労働者たちだった。一人だけが現在も働いている労働者で、 彼は一貫して『よくわからない』と答えたという。

また、K氏は社内協力業者の社長が労災は『なぜ申請したか』、『なぜ民主労総 法律院に依頼したか』等を聞くこともいぶかしかった。

▲韓国タイヤ労働者白血病発病があらわれる前から、韓国タイヤ労働者集団死亡事件と職業病は社会的な問題であった。［出処:金属労組］

彼女の2つの望み

家族はクォン氏の回復を信じて生活しているが、家族の人生はめちゃくちゃ になった。

それでも家族はみんな固く団結した。精神的な苦痛と経済的な困難、日常の 困難の中でも、互いを理解しようと努めた。経済的な苦痛をあじわうお父さん、 就職のために勉強している姉さん、休学中の弟、倒れて療養中のおばあさん。 みんなクォン氏の回復のために動いている。

K氏も今回の事件を経験し、母親の人生を少しは理解するようになったと言って 首を振った。三兄妹を育て、おばあさん、おじいさんの世話をして生計を立てた お母さんの話だ。

「お母さんは病気であまり話ができなくても、お母さんの月給明細を見て驚き ました。3交代で夜も働き、少ないときは110万ウォン、多くて140万ウォンでし た。私はそれ程とは思いませんでした。お母さんがそのような環境で働くのか 知りませんでした」。

だが民主労総所属の労務士に会い、韓国タイヤ錦山工場調査に同行し、労災を 申請して... 今は日常の一部になったが、初めはこれらすべてが彼女にはなじ みのないことだった。

「率直に、労災、お母さんが病気になって、私にふりかかってからです。これ は... 初めは労災なんていうことも知らず、親戚に労災を受けた人がいて、そ の話を聞いて知りました。お母さんのために家族ができることは、足で飛び回 ることだと思い、労災を申請しました。結果も6月に出てくるといっていたのに 9月まで待てと言われ、途中で変わって」。

忙しくてなじみのない日常の中でやっとインタビューに出た理由も、お母さんの ためだ。韓国タイヤ会社側が有害物質を使ったと認め、お母さんの白血病が 業務上の疾病と判定されること、彼女の希望はこの2つだけだ。(記事提携= メディア忠清)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
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