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「サムスンで働いて視力を失ったのに」...希少病を補償しないサムスン

サムスン電子職業病労働者被害事例証言

ハ・グムチョル記者 2015.03.05 11:22

▲サムスン電子で働いて多発性硬化症という希少病にかかり、視覚障害になったキム・ミソン氏。[出処:ビーマイナー]

「他の人たちのように幸せに暮らすのは夢のような事になってしまった。 もうそのようなことは望みもしない。 十分に治療ぐらいは受けられればうれしい。」

3月4日、金属労組会議室で開かれた 「半導体・電子産業職業病被害労働者証言大会」でマイクを持ったキム・ミソン氏(35)は、 ますます悪くなる自分の体調を説明するのが難しいといった。 彼女はもうケーン(視覚障害者用ツエ)を使わなければならない状況だ。

昨年2月にビーマイナーがサムスン電子職業病被害者の話を扱った映画 「もうひとつの約束」の封切りに合わせてインタビューした時までは、 少し視覚障害があったが、これ程激しくはなかった(関連記事:サムスンも、大韓民国福祉も無視した『もうひとつの希望』)。 だが今は人の顔に近付かなければ誰なのかわからない。

1997年、当時高3だったキム氏は、サムスン電子器興工場LCDモジュール課に投入され、 アセトンやアルコールなどを利用してLCDパネルを拭くOLB工程とハンダ付け作業をするタップ・ソルダー工程で働いた。 彼女は一日に200〜300枚のガーゼを使い、化学薬品でLCDパネルを拭き、激しいにおいをかぎながらハンダ付けをしなければならなかった。

入社3年目になった2000年3月、出勤のために服を着たキム氏は突然指が動かず、足に力が入らない症状に接した。 あちこちの病院をたずね歩いた末に知った病名は 「多発性硬化症(脳と脊髄の神経細胞を覆う髄鞘が損傷し、神経機能が低下する疾患)」だった。 再発の危険が少なくないうえ、副作用が強いステロイド剤の処方を受け続けなければならない難治性疾患だった。

体調が悪く、彼女は退社せざるを得ず、まともに歩けるようになるまで1年近い時間がかかった。 しかしその後も病気が再発して視神経を攻撃し、そのために右目の視力のほとんどを喪失した。

その後、しばらく再発せず、視覚障害者福祉館などに通って再起を夢見てきたが、 今年の1月、また左目に疾患が出た。 視力はさらに低下し、そのために結局ツエを使わなければ外出できなくなった。

同じように働いて病気得たのに...補償は7つの疾患だけだというサムスン

「この病気はいつどのように再発するのかもわからないので、(応急状況が発生すれば)すぐ病院に行ってステロイドを打たなければならないが、 実際にそんな状況になると迷う。 入院すればまたお金がかかるので心配をせざるをえない。 労災が認定されれば、そんな心配は減るはずなのに...」

キム・ミソン氏は2011年に初めてパノルリム(電子産業労働者健康権のための団体)を知り、 彼らの助けで勤労福祉公団に労働災害申請を出した。 しかし結果は「労災不承認」。 該当疾患と業務の関連性が低いということだ。

しかしパノルリム側は、彼女が働いていた工程の劣悪な作業環境が疾患に影響したと主張した。 キム氏は多量の毒物を含む化学物質を使う作業をしてきたし、 直接手でハンダ付け業務を遂行したが、 窓のような換気施設もなく局所排気装置は稼動しないなど、 有害毒性物質に露出し続けてきた。 実際に多発性硬化症は希少病なのではっきりした原因は明らかになっていないが、 有害毒性化学物質と過労やストレスにより誘発されるというのが医学界の一般的な見解だ。

パノルリムの集計によれば、 彼女のようにサムスン電子で半導体、LCD工程で働いて白血病、ガン、各種の難病にかかった被害者は2015年2月現在までに情報提供されたケースだけで327件にのぼり、 このうち死亡者も124人にもなる。 しかしこのうちやっと8人だけが労災の承認を受け、 それさえ4人は行政訴訟を行った末にやっと労災が認められた。

サムスンはもちろん、勤労福祉公団まで職業病被害者への責任を無視し、 被害者の怒りはさらに大きくなっていった。 こうした不満をなだめるため、サムスンは最近作られた 「サムスン電子発病関連問題解決のための調停委員会(委員長キム・ジヒョン前大法官)」で 「労災認定手続きのように業務との関連性を問い詰めるのは時間がかかるので、 会社が退職職員と家族の痛みを減らすために福祉次元の慰労金」を支払うと明らかにした。 被害者らはサムスンの意図を信頼できないが、とにかく初めて出てきた補償案なので期待するほかはなかった。

しかし実際には1月16日にサムスンが出した補償案に対し、 多くの被害者らは失望した。 白血病をはじめとする血液ガンと、既に会社内で労災承認履歴がある脳腫瘍、乳ガンを含む7つの疾患しか対象にせず、 「特殊健康診断履歴」があって退職後10年以内に発病した場合にのみ補償するといったのだ。

これによれば、キム・ミソン氏のように難病で苦しむ患者たちは補償の対象から完全に除外される。 キム氏は「同じようにサムスンで苦労して働いたのに、 誰かは(補償)して、誰かはしないというのはおかしいと思う」と吐露した。

▲パノルリムは4日金属労組会議室で「半導体電子産業職業病被害労働者証言大会」を開いた。[出処:ビーマイナー]

協力業者の職員が実際に管理監督しても、補償からは除外?

またこの日の証言大会では、 これまでよく知られていないサムスン協力業者労働者たちの職業病被害事例の深刻性も提起された。

2003年から2009年まで、サムスン協力業者の管理所長として勤務し、 2012年に死亡した故ソン・ギョンジュ氏は 「ライン別に協力社をおき、サムスンが業務分担をしてラインを区分管理するが、 サムスンの在職者出身(ほとんど部長出身)を管理社長としてその下に管理所長をおき、 人事、労務、その他の管理をアウトソーシングで管理する」と日記帳に記録した。 パノルリムはこれを根拠として事実上、サムスンが協力業者を管理監督してきたし、 発注元のサムスンが協力業者労働者の職業病に責任があると強調した。

特にサムスンの補償案では協力業者労働者は対象から除外されていることに関し、 パノルリムは産業安全保健法第29条により、元請事業主に労働災害予防義務があるので、 サムスンが彼らにも責任ある補償対策を出せと要求した。

一方、パノルリムはサムスン半導体で働き2007年に急性骨髄性白血病で死亡した故ファン・ユミ氏の8周忌をむかえるにあたり、 3月2日から追慕週間を進めている。 3月6日午後7時には江南駅サムスン本館前で「故ファン・ユミ8周忌および半導体・電子産業労災死亡労働者追慕文化祭」を行う予定だ。

付記
ハ・グムチョル記者はビーマイナーの記者です。この記事はビーマイナーにも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-03-07 07:11:18 / Last modified on 2015-03-07 07:11:19 Copyright: Default

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