全国に拡大する「水道民営化」の恐怖...法的紛争まで
21の地方自治体で上水道民間委託...市民は料金爆弾、地方自治体は借金
ユン・ジヨン記者 2013.10.11 17:27
韓国政府の「水企業育成」政策が、民間企業参加を含む「水道民営化」の方向に進んでいる。
これまで盧武鉉政権と李明博政権は、90年代から始まった市場性中心の水政策
をそのまま継承してきた。地方自治体の上水道民間委託の事例も着実に増え、
現在では地方自治体の13%に達する地域の上水道事業が委託運営されている。
だが地方自治体財政節減を目標として推進された上水道の民間委託は、現在、
高い水道料金と低い漏水率、毒素契約などの問題を生み、法的紛争まで広がっ
ている。それでも政府は、全国の地方自治体の上水道全面委託と収益型海外事業
などを進め「水道民営化」の方針を固守している。
上水道を民間委託した論山市、水道料金二倍に上昇
地方自治体「慢性的な赤字構造」で苦しむ
▲チャムセサン資料写真
先立って盧武鉉(ノ・ムヒョン)、李明博政権は水産業育成を汎政府的に進め、
地方上水道を水資源公社と環境公団に委託する事業を進めてきた。これに伴い
2003年から各地方自治体は上水道事業を水資源公社から民間に委託し、水道
民営化の第一歩を踏み出した。
現在162の地方自治体のうち21か所が上水道事業を水資源公社に委託して運営
しており、最近では江原南部圏域を中心に環境公団が委託事業に飛び込んだ。
だが地方財政の削減と上水道施設改善を目的とする「民間委託」は、むしろ
地方自治体の財政損失と不公正契約、不十分な施設などにつながり、頻繁な
紛争を招いている。
社会公共研究所と公務員労働組合は「韓国の水政策、市場化の問題と公共水道
の代案』イシュー・ペーパーで「委託を進めた地方自治体のほとんどが悪循環
を続けている」とし、上水道委託運営と政府の水民営化政策の問題を指摘した。
イシュー・ペーパーによれば、2003年に国内で初めて韓国水資源公社と上水道
の民間委託を締結した論山市の場合、地方自治体の財政損失と高い上水道料金
で苦しんでいた。実際に、論山市の水道料金は全国平均より高いだけでなく、
料金上昇率は物価上昇率より高く上昇したことが明らかになった。
9年間で論山市の家庭用上水道料金は約30%増加し、一般用上水道料金は63%増加
した。これにより2011年の家庭用料金単価はトン当たり566ウォン、一般用はトン
当たり1230ウォンが賦課された。
社会公共研究所は「家庭用上水道料金は、一般物価上昇率の水準になり、一般
用は二倍以上に増加して、結果として物価上昇率より高い値上げが論山市で進
められた」とし「論山市の家庭用水道料金は、わが国の平均より26%高く、一般
用は業務用より46%、営業用より22%高かった」と説明した。
そればかりか論山市は委託の過程で独自の浄水処理施設を閉鎖して、毎年50億
ウォンもの水を購入する境遇に置かれた。この費用は、委託前に論山市が毎年
支出していた上水道関連総費用にあたる。また2012年までの9年間、民間委託の
費用は約314%増加したことが明らかになった。
結局、上水道を委託した後、論山市の財政は慢性的赤字構造に再編され、以後
さらに高い値上げをしたり税収で赤字を補填する状況に置かれることになった。
社会公共研究所は「論山市民の立場としては、民間委託の結果はさらに税金を
払ったり、さらに上水道の値上げに耐えなければならない」とし「また上水道
が引かれていない場所の住民は9年間、相変らず放置されている実情」と説明
した。
不公正契約、毒素条項で法的紛争も
楊州市はすでに解約を通知、泗川市は数千億の超過支給の危機
委託契約当時、不公正な契約と毒素条項などで地方自治体と受託企業間の法的
紛争になるケースも少なくない。
楊州市は、水資源公社と委託契約を締結してから4年目の2012月、水資源公社に
契約解止を通知した。上水道を委託した後、20年間で1200億ウォンの水道料金
を市民がさらに払わなければならず、漏水率は90.5%から84.4%に下がり(漏水率
が低くなるほど水漏れが増加)、水道料金もまた直営の時と較べてトン当たり
79ウォン高くなったという理由だ。
実際に楊州市によれば、20年間、水資源公社に委託運営をしていた場合、直営
よりさらに2193億3千万ウォンの費用が必要とすると分析している。これにより
2015年からは料金収入だけでは委託代価が負担できず、これに相応した水道料
金値上げは避けられないという立場だ。また市は水資源公社の漏水率の操作と
実施協約書の不履行などについても問題を提起した。
楊州市は水資源公社に解約を通知したが、水資源公社は楊州市に「運営管理権
取消し処分取り消し訴訟」を提起して、現在法廷紛争が続いている。
泗川市の場合も不公正契約で数千億ウォンもの委託運営費を超過支払いする危
機に置かれた。泗川市が委託後30年間に支払うべき委託運営費は2951億6600万
ウォン程度だ。だがこの過程で水資源公社は、総運営費に毎年消費者物価指数
を複利でかけ、委託代価を支払うような契約を締結した。
社会公共研究所の分析によれば、実際に泗川市が水資源公社に支払う金額は、
契約書上の金額より何と2183億超過する。研究所は「泗川市が水資源公社に払
う金額は毎年雪だるまのように増え、2023年からは毎年200億ウォン以上を支払
わなければならない」とし「泗川市の委託契約は典型的な不公正契約」と指摘
した。その上、泗川市の委託契約は中途解約もできない。
東豆川市も委託契約の時に約束した施設改善事業が計画通りに進んでいないな
どの問題が続いている。東豆川市が2007年、水資源公社と委託契約を締結した
後、2008年(執行率51%)、2010年(36%)、2011(54%)にかけて投資未執行の状態が
続いている。財政は毎年30億ずつ注ぎ込まれているが、約束した投資も受けら
れず、その上、財政赤字にも苦しむという三重苦に苦しんでいるわけだ。
[出処:チャムセサン資料写真]
水道民営化の恐怖...民間企業進出、地方自治体の上水道統廃合されるか
現在、水資源公社は全国地方上水道の全面受託により、広域上水道を販売し、
運営収益を入手する計画を準備している。こうなると、委託地方上水道圏域は
現在の21箇所から162箇所に増え、公社は毎年5千億ウォン以上の運営収益を
あげると予想される。
水資源公社が攻撃的な委託受託事業による収益に熱を上げる理由は、4大河川
事業による莫大な負債のためだといわれる。社会公共性研究所は「水資源公社は
李明博政権の4大河川事業とアラベッキル事業で9兆ウォンもの莫大な負債を抱え
込み、こうした財政的負担を打開するために不動産開発事業に力を注いだが、
展望が明るくない状況」と明らかにした。
環境部も2010年7月、地方上水道統合推進計画で、現在、162の地方自治体の
上水道事業を2020年までに39圏域に統合し、2030年までに5箇所程度に大型化
する計画を発表した。これは、現在の直営体制は大規模水道事業者と公企業
委託体制に改編することで、事実上、民間企業に道を開く意図だと解説される。
社会公共研究所は「ここで公企業委託は水資源公社と環境公団で、大規模水道
事業者は新規育成し、そして進出を望む民間事業者と推定できる」とし「最低
9つの企業と民間企業が各々躍進し、統廃合を繰り返す構造にする計画」と強調
した。
その上、水資源公社は2020年までに海外売り上げの割合を50%近くまで飛躍的に
増加させ、世界3大水企業になることを目標として、収益型海外事業に死活をか
けている。最近ではタイに飛び込み、6兆ウォン規模のタイの水管理事業の優先
交渉対象者に選ばれた。だが、世界銀行の報告によれば、水事業の失敗率は29%で、
他の事業より特に高く、危険性の憂慮も絶えない。
このように上水道委託事業過程での問題が続々と発生し「水道民営化」の恐怖
が続いている。特に現在約150万の国民は良質な上水道が使えず疎外されていて、
二極化が深刻になるのではないかという憂慮も存在する。
社会公共性研究所は「今のような委託と水産業育成方式では、生態的な持続
可能性と社会的公平性という大原則を守ることができない」とし「水の複合的
な関連を考慮して、水を総合的に管理する中央政府機構が必要で、水系別に
流域を管理する制度的整備が必要」と指摘した。
原文(チャムセサン)
翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。
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Created on 2013-10-12 06:23:29 / Last modified on 2013-10-12 06:23:30 Copyright:
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