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問題が多く事故も多かった最低賃金交渉、その裏話

[インタビュー]女性連盟イ・チャンベ委員長

ユン・ジヨン記者 2010.07.06 19:27

7月3日午前6時、2011年の最低賃金引上げ案が決定した。法定時限を過ぎた遅々 として進まないマラソン交渉は、最低賃金5.1%の引上げで終わった。全員会議 を終えて出てきた勤労者委員たちは組合員に向かって「申し訳ない、ありがとう」 というあいさつを伝えた。

特に3か月ずっと最低賃金闘争と交渉を続けた女性連盟のイ・チャンベ委員長は、 「最善の策ではなく次善の策だった。6%を越えられず、組合員に申し訳ない」 と伝えた。女性連盟を導きながら、誰より最低賃金値上げを切実に感じていた。

最低賃金交渉が終わってから4日。これまでの過程と評価を聞くために、勤労者 委員として交渉に参加したイ・チャンベ女性連盟委員長を訪ねた。

「まだ後遺症が残っていて、からだが痛いです。今日も新龍山駅でおりなけれ ばならないのに、うとうとしてソウル駅まで行ってきたんですよ」。

それもそのはず、イ・チャンベ委員長は20回の集会と徹夜の会議をしなければ ならなかった。それだけだろうか。最低賃金座り込みの過程で警察と最賃委職 員に腕と脚を捕まれて引きずられるという侮辱を受けなければならなかった。 それだけ事故も多く、言葉も多い最低賃金交渉だった。

だからイ・チャンベ委員長は今回の最低賃金闘争は「労力のいる戦いだった」 と打ち明けた。また来年を展望し、「マイナス案が出る可能性があるので、さ らに労力のいる戦いになるだろう」と予想した。交渉の過程には「政府の引上 げ案を突破するために努力した」とし「もし経営界ではなく労働界が退場して いれば、引上げ案は4%台で終わっただろう」と述べた。

最低賃金委交渉、その困難な話

採決を控えて経営界が退場した。労働界も退場を望んでいたと理解している。退場で合意できない状況をどう見ているか。

「公益委員たちは労使の合意を望む。だが双方がとてもきっ抗していて、交渉 を続けられなかった。

退場は被害が大きい戦略だ。事実、労使ともに退場カードを持って入った。勤 労者委員は公益委員が5%以上の引上げ案を出さなければ退場すると意見をすり あわせていた。だがもし私たちが退場していたら、引上げ案は使用者側の意見 で4.2%程度が貫徹されただろう。退場してさらに上がるのなら退場するが、そ うでなければ退場するべきではない。退場戦術は一度は使えても、2度3度は使 えない。結局退場すれば使用者案で決定するためだ。

事実、6年前の最低賃金全員会議では勤労者委員全員が退場した。12.2%が議論 されていたが、それでも低いと労働界側が退場したのだ。使用者だけで採決を 進め、使用者案の9.1%に引き上げられた。その時、あまりにも荷が重かった。 退場して9.1%が決定した時、一日中泣いた。寝ていても目が覚めた。3.1%の引 き上げが組合員にもたらす恩恵を思ったからだった。その後、民主労総では退 場をしなかったと理解している。退場は良い戦略ではない。」

労働界が公益委員をずいぶん批判した。公益委員の交渉過程を評価すると。

「公益委員は労使双方の意見がきっ抗しているので表情を伺っていた。労働者 の肩を持つと使用者が不満で、使用者の肩を持つと労働者が出て行くので、仲 裁案も遅れて出てきた。

だから労働界は公益委員への圧力を加え続けた。7月2日に経営界が修正案を拒 否した時も公益委員に圧力をかけた。

事実、公益委員の中でもずいぶん意見が分かれていた。5.1%引上げは、29日に 一部の公益委員が非公式に口頭に出てきた話だった。だが5.1%も一部の公益委員 が反対した。

現在、政府が最賃委に独自性を与えず、公益委員が独立性を守れない。これま では委員長1人を政府が推薦しても、4人は経営界、4人は労働界が推薦していた。 だが李明博政権になって、公益委員1人以外はすべて変わった。労働部も知らな いうちに青瓦台が選んだ公益委員が選ばれた。公益委員が変わらなければなら ない。ムン・ヒョンナム委員長も保守勢力と見ることができ、ボイコット闘争 をする必要もあると考えた。」

全員会議が『消耗的』という話がある。会議体制の問題はないか。

「気が短い人は最賃委会議をなくせと話し、ある人は2年に一度にしようとも言 う。だが憂慮される話だ。明らかに最低賃金交渉には限界があるが、ぜひ必要 な制度だ。名分は十分あり、全国民に関係するので政府だけにまかせられない。 233万人の賃金を決めることを絶対放棄できない。

最低賃金法改正はむしろ現体制に逆行する問題が発生しかねない。今回の会議 を進め、労使が全員退場すれば、公益委員だけで採決するという話があった。 この話は最低賃金法改悪案に上がった内容だった。公益委員への政府の推薦制 度は変えなければならないが、現在、労使が集まって会議をして結果を引き出 す慣行だけは維持するべきだと思う」。

ファン・インチョル経済人総連本部長が退場直後「低い賃金でも働きたい人の就職障壁が高まった」と話した。この問題はどう思うか

「最低賃金未達者が多いのは労働部の管理監督がいいかげんだからだ。労組を 作って、最低賃金未達事業場を告発しても、是正を命令するだけで、運が悪く ても金を払えば良い。検察に行っても不起訴で終わる。

中小企業も最低賃金4110ウォンでは求人できないということを自ら認めた。実 際に中小企業の賃金は最低賃金を上回っている。中小企業は最低賃金では外国 人も働きにこないと吐露している。

問題は失職とからみ、雨後の筍のように生まれる中小零細商人だ。そこで1、2 人働くアルバイト生が最低賃金を受け取れない。商売がうまく行かないので月 給を払えないのだ。失職のために雨後の筍のようにできる店はすべて商売がう まくいかない。例えばタクシーなどでは、前と違って家ごとに自家用車があり、 交通が発達して、商売にならない。それならタクシー政策も変えるべきだが、 変わらない。そんな問題がある。」

今年の成果、そして来年を展望すると

▲民主労総と女性連盟組合員が最低賃金委員会前で最低賃金引き上げ闘争をしている。[出処:チャムセサン資料写真]

以前の最低賃金交渉の過程と較べ、今年の交渉の成果は。

「政権により労働者の力も変わる。6年前は勤労者委員全員が退場しても最低賃 金が9.1%引上げられていた。12.2%が議論されたが、それも低いと労働界側が 退場した。使用者だけで採決して、使用者案だった9.1%引上げが決定された。

李明博政権になって難しくなった。事実、公益委員に25日の政府の引上げ案を 聞いた。4.1〜4.6%だったが、われわれはこれを『明博山城』と呼ぶ。これを突 破するためずいぶん努力した。最低賃金の世論化で4%台の構図を破り、5.1% 引上げを引き出した。だが名分のある引上げ案ではなかった。物価引上げ率、 経済成長率を考えれば、少なくとも7〜8%は受け取るのが正常だった。だが李明 博政権なので5.1%引上げに終わったようだ。」

来年の最低賃金交渉はどう予想しているか。

「来年はマイナス引上げ案が提示されると思う。今年も経営界では『マイナス 案があったが、それでも凍結案を提示した』と話す。来年大統領が任命した公 益委員も政府案としてマイナス案を持って出てくるかもしれないと思う。

事実、最低賃金闘争は100万ウォン争奪を目標に進めてきた。少なくとも100万 ウォンは受け取れなければならないというのが一般的な世論だった。今90万ウォ ンを越えた。これからが本当に苦しいだろう。

以前、最低賃金が40、50万ウォンの時は、パーセントがいくら高くても引上額 はいくらにもならなかった。今は数パーセントでも引上額は大きい。ここにパー セントの罠がある。

来年は何よりもマイナス案に備えて悩まなければならない。闘争のための闘争 ではなく、最低賃金の重要性を世論化し、本当の国民賃闘にする努力をしなけ ればならない」。

女性連盟の最低賃金『3倍闘争』

▲女性連盟の組合員は経営界の凍結案固守を批判して、経済人総連の前で集会をした。[出処:チャムセサン資料写真]

今回の最低賃金闘争は女性連盟の活躍が独歩的だったとしても言い過ぎではな かった。女性連盟は最低賃金委員会と経済人総連の前で粘り強い闘争を行い、 最賃委前の野宿座り込みも拒まなかった。特に組合員たちは夜に仕事を終えて 一眠りもせず集会と座り込みに参加した。ふと厳しい闘争を続けた連盟の組織 化の過程が気になった。

女性連盟の組合員組織化の過程はどのようだったのか。

「すでに昨年から今年の最低賃金交渉が難しいと見ていた。したがって組合員 と2つの約束をした。一つは闘争時期を1か月早め、5月から早期闘争をして6月 には全面闘争をしうということだった。ほとんど洗脳教育だった。

もう一つは地方選挙で勝てば、闘争を1/3に減らし、もし負ければ3倍の闘争を しようといった。今回の選挙が勝利したとはいえ事実、民主党の勝利で私たち の勝利ではない。民主労働党の勝利でもなく、労働者の勝利でもなかった。だ から3倍の闘争を決めた。

昨年6月には9回の集会をしたが、今年は20回以上集会をした。今年は上京闘争 も3回した。循環闘争と集中闘争、座り込みを別々に進めた。組織の状況に合わ せて循環闘争をしたので負担は少なかった」。

最低賃金闘争の底辺が拡大したとは言うが、まだ足りない。惜しい点があるとすれば?

「25日から29日まで女性連盟をはじめ、産別労組が一日ずつ闘争日程を決めた。 だが責任感のある闘争にはならなかった。金属労組もストライキ闘争がかかっ たし、タイムオフ闘争などの産別労組のスケジュールが重なった。闘争が全く できなくはなかったが、責任感がない闘争だったと評価する。

市民団体の参加もなければならない。参与連帯、青年ユニオンなどが結合した が、さらに多くの市民団体と組合員が結合し、一般市民も参加できる国民賃闘 を作れれば良い」。

インタビューが終わろうとする頃、女性連盟委員長特有の力強い性格が交渉で どう発揮されているのかが気になった。『直接的な性格』という話をよく聞い たので、使用者と公益委員に率直な言葉を投げたのだろうと思った。

直接的な性格だと聞いた。交渉過程でも率直に話したのか。

「私は0型で本来直接的だ。言わない時は言わないが、言うべきな席では直接的 に話す。最賃委でも経営界側に『凍結案を言い張って5ウォン、10ウォン引上げ 案とは何だ。組織暴力か突撃隊ではないか。これは暴力だ』と話したが、経営 界が『委員長さんの立場もあるので、録音記録からこの言葉は削除してくれ」 と要請した。それで『私の名誉は重要ではない。個人的に非難される。だが、 これは組合員たちすべての考えだ』と断った。」

「これ以外は礼儀を守った」と笑う委員長の表情には、難しい交渉過程での疲 れはみつからなかった。多分最低賃金座り込みと集会に参加した組合員の表情 もこんな活気があるのではないだろうか。

2011年の峠は越えたが、まだ峠は残っている。3か月間、労働者の座り込みと集 会を引き出した最低賃金交渉は、労働界が満足できる結果ではなかったし、以 後の交渉でも難航が予想されるためだ。だが今回の最低賃金闘争は、明らかに 労働界の中での底辺を拡大した。また5.1%の引上げ案は難しい交渉で勝ち取っ た重要な成果だった。

まだ最低賃金闘争の後遺症が去らない今、すでに来年を準備する人々がいる。 果たしてこの努力のとおり来年は『国民賃闘』ができるだろうか? 今年を評価 して来年を展望する過程で、300万の最低賃金労働者の関心が集まるよう期待する。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-07-08 03:11:33 / Last modified on 2010-07-08 03:11:35 Copyright: Default

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