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吉桓永社長が出て行けば、果たしてKBSが変わるだろうか?

「ポスト吉桓永」にどう備えるか…支配構造改善、編集権制度改善などの議論幾重にも重なった山中「問題は人」

入力:2014-05-28 10:57:36 公開:2014.05.29 13:24:06
チョン・サングン・チョン・チョルン記者| dal@mediatoday.co.kr

「今回の事態では、吉桓永(キル・ファニョン)社長の報道への干渉と、青瓦台の報道・人事介入の1次責任が問われているが、 それは出発点であって今回の事態の根本的な解決策ではない。 青瓦台とKBSとの関係についての根本的な制度改善が必要だ。 かなり前から支配構造を変え、青瓦台とKBSの関係の再確立が必要だと考えていた。 これからKBSの未来を悩む」(クォン・オフン全国言論労組KBS本部長、23日清雲孝子洞住民センター前の記者会見)

吉桓永KBS社長が四面楚歌になっている。 KBS労働組合(委員長ペク・ヨンギュ・KBS労組)と全国言論労組KBS本部(本部長クォン・オフン・KBS本部)が史上初の同時ストライキを目前にしている。 吉社長にとってのさらに大きな危機は、二大労組ばかりかKBS社内幹部のうち300人ほどが吉社長に背を向けたということだ。 ニュースは混乱を繰り返し、放送全体が止まる危機に置かれている。

このようにKBS構成員の大多数が吉桓永社長の退陣を要求している。 KBSの視聴者であったセウォル号遺族がKBS前で抗議座り込みを行い、 他の視聴者も背を向けた。 最近、ある世論調査では、不動の1位だったKBSの信頼度が10%近く落ち、 JTBCに押された。KBS構成員の心理的マジノ線が崩壊した。

キム・シゴン前KBS報道局長が5月9日の記者会見等で 「吉桓永社長は青瓦台だけを見ている人」と述べ、 吉社長の報道干渉と青瓦台の報道・人事介入を暴露した。 公営放送KBSは、キム前局長の暴露で国営放送に転落した。 幹部が続々と役職返上宣言をしており、 「今がKBSの最大の危機」と言われるのも無理はない。

ところでKBSと政界との関係定立についての議論はかなり古くからの話だ。 金仁圭(キム・インギュ)前KBS社長は李明博(イ・ミョンバク)当時大統領候補キャンプで特別補佐官をしていた。 特に李明博政権以後、KBS内の報道の公正性は崩壊した。 「はした金放送」の時期に回帰したのではないかという批判も出てきた。

▲22日、製作拒否中のKBS記者協会がKBS新館前で決意大会を開いた。写真=イ・チヨル記者

問題は、吉桓永社長が辞任しても、KBSのこの長い積弊を解消できるのかということだ。 前述のクォン・オフン本部長の言葉のように、 KBS内部の構成員らも吉桓永社長の退陣を要求しているものの、 吉社長の退陣だけでKBSが公営放送としての本来の役割を取り戻せると見る人は多くない。

支配構造改善、必要ではあるが…

KBSは公営放送として、政界から自由でなければならないという共感は形成されている。 だが現在のKBSは、政界の敏感な変化にも影響されるしかない構造だ。 KBS社長を任命する理事会の構成から、与党・大統領推薦7人と野党推薦4人で形成されているためだ。 朴槿恵(パク・クネ)大統領が候補だった時、 「放送を掌握するつもりもなく、することもできない」と話したが、実状は違う。

KBSの問題が大きくなるたびに、まさにこの支配構造改善についての話が出た。 今の構造では吉桓永社長が辞任しても、後任社長も政界の影響を受けざるを得ないからだ。 したがって、支配構造の改善についてさまざまな意見があふれている。 改善の核心は、KBS理事会の構成と社長の選任方式にある。 一部では理事会の与野構成を同数に合わせようという提案もあるが、 これが難しければ与党にさらに理事推薦を割り当てて、 6:5程度の均衡を合わせようという提案も出てくる。

社長選任をまったく政界から排除させようという話もある。 全北大のカン・ジュンマン教授は最近のハンギョレ寄稿で 「無報酬名誉職の放送議員が集まった仮称『放送議会』を構成し、 公営放送局の社長の人事権を放送議会に譲り渡そう」とし 「放送議員の規模は社会各界を代表して、外部の圧力とロビーをほとんど無意味な水準にできるように数千人とし、選出は完全自由競争公募制にしよう」と提案した。

また現行の通りなら、与野が推薦して大統領がKBS理事を任命するが、 これを完全に国会の権限にする方案も出てきた。 国会が持つ多くの問題は別として、とにかく国会が民意を代弁する機関なので 大統領の介入を最小化し、国会が任命することが公共映像性の趣旨に符合するということだ。

「特別多数制導入」も提案された。 理事会の再構成が難しければ、社長任命のような重要な懸案については理事会の半数以上の賛成ではなく、 2/3以上の賛成を確保して案件が通過できるようにしようということだ。

言論改革市民連帯のチュ・ヒェソン書記局長は 「今のKBS事態は最悪の社長を退陣させる方向に向かっているが、 もちろんそれだけで解決法にはならない」とし 「KBSの理事数を与野同数にしたり、社長選任のような重要案件は理事会に特別多数制を導入することなどを提案している」と話した。 聖公会大新聞放送科のキム・ソジュン教授は 「完璧ではないが自分としては良いと思うアイディアは出ている」とし 「金仁圭(キム・インギュ)前KBS社長や具本弘(ク・ボノン)前YTN社長のように、 大統領候補に関する仕事をした人物が社長になることを原則的に防ぐなど、 資格要件について考えてみることが必要だ」と話した。

金教授は「公営放送の理事を国会で決めることも提案されている」とし 「ただ理事会の構成が与野同数になれば効率的かどうか疑問」と話した。 続いて「それで最近出てきた特別多数制が意味ある提案」とし 「すべての事案には適用できないが、社長推薦などの重要な決定は特別多数制でできそうだ」と話した。

問題は「与党」だ。 単にセヌリ党だけの問題ではない。 支配構造改善についての話はかなり前からあったが、刀の柄を握っている与党はこの問題に無関心だった。 あえてKBSを政治的に独立させても、損益計算が合わないという認識のためだ。 KBSの支配構造改善などの内容の放送法改正案が提出されたが、 セヌリ党は「特別多数制」や「総編の労使同数編成委員会」といった核心内容に反対し続け、新政治民主連合はこれに無力だった。

仁済大のキム・チャンニョン教授(新聞放送学)は 「どの政府与党がKBS理事会構成を与野同数にするか」とし 「それよりも汎国民理事推薦委員会を作るほうが良い」と話した。 カン・ジュンマン教授の主張と同様の内容だ。 キム教授は「与野がどちらも身を引いて、学界や言論界、市民団体などで放送の独立に意志がある人で構成し、無報酬の名誉職にしようということ」と説明した。

だが執権与党がそうした方案に同意するかどうかはやはり不透明だ。 このように、支配構造の改善はKBS問題が起きるたびにいつも出てくる解決法だが、 執権与党の「決心」がない以上、貫徹させるのはむしろ最も難しい方式だ。 KBSで役職を返上した幹部級の人物は 「政界に社長選任の構造を変えてほしいが、それは期待できそうもない」と話した。

内部の革新なくして公営放送もない

もし支配構造が改善され、政治的な独立性を確保したら、 KBSは公営放送としての役割を遂行できるだろうか? 容易ではないと思われる。 KBSの内部構成員が吉桓永社長の退陣運動に動いたが、 実際に吉桓永体制を支えていたのは、まさにそれらの内部構成員だった。

キム・シゴン前報道局長が吉桓永社長の退陣を要求したことで事態が大きくなったが、 キム・シゴン前局長も不公正報道の責任を抱えている。 竜山惨事を「事件」と書けという指示や、 朴槿恵政権の基礎年金公約破棄を「修正」に直せといった指示は、 とても政派的だと指摘された。

報道本部部長団が役職を返上して吉桓永社長の退陣を要求したことで、 多くの呼応を得たが、部長たちも責任から自由ではない。 KBSの33期の記者は「不利益を甘受した自己犠牲に感謝する」が 「『歪められた9時ニュース』の仕組みを作ったのはその先輩たち」と指摘した。

オ・ソンイルKBS受信料現実化推進団チーム長は社内掲示板に書き込んだ文で 「社長が『良い意見』と伝えたという彼らが、 残念ながら権力に利益だったり政府の負担を減らしてくれる方向だったことだけは明らかなようだ」とし 「KBSのニュースはすでに権力への批判には十分に慎重だったと思う。 この点においては前任の報道本部長、報道局長はもちろん、 役職を返上した部長団も反省から自由ではない」と指摘した。

これについてKBSのある中堅級記者は 「吉桓永社長が出て行っても、今の報道局文化と報道局構成員がそのまま残る限り、 KBSの報道が劇的に変わるのは難しい」とし 「公正報道のためには記者一人一人の良心が記事に一番よく発現できるようにしなければならない」と指摘した。 続いて「報道本部長や報道局長が青瓦台から外圧を受けた時、 報道局内部で記者の良心を集め、幹部に内部圧力をかける装置が必要だ」と話した。

この記者は続いて「私たちに必要な装置は報道局長の直接選挙制かもしれないし、 中間評価制かもしれない」とし 「一番重要なことは、編集権の専横を防ぐ装置」と強調した。 合わせて「編集権に対する日常的な監視のために、編集会議の速記録を作成・公開し、 前日の編集についての内部評価をしなければならない」と明らかにした。

KBSのある若い記者も「今までニュース編集部の判断にフィードバックをしたり評価する手段がなかった。 記者が熱心にリポートを作ってもニュース9がどんなアイテムをトップにして、どんなアイテムをどうブロック化するかは編集部が判断する」とし 「これについての下からの評価は今までなかったが、 編集部が重要なアイテムを後に配置して手を加えている状況を評価できるような内部装置がぜひ必要だ」と強調した。

だが制度的な装置に劣らず重要なことは、KBS内部構成員の変化だ。 社長だけでなく、KBSの幹部らも権力と近すぎるという指摘がある。 閔庚旭(ミン・ギョンウク)KBSアンカーが青瓦台報道官になったのは象徴的だ。 キム・チャンニョン教授は「公営放送のアンカーや政治部長、解説委員などは政界と連結している」とし 「社長だけが問題なのではなく、政界が呼べば駆けつける幹部が並んでいる」と話した。

忠南大のキム・ジェヨン教授(新聞放送学)は 「結局、内部の従事者らが自らの役割を守らなければならない」とし 「今はジャーナリストという意識より職業人という認識が社会的に広がり、 天命意識が少なくなった」と話した。

キム教授は「重要なことは制度ではなく、公営放送で稼動させるべきシステムが稼動していないこと」とし 「いくら外部の人にその意志があっても直接介入はできないので、 主導権を取って進めるのは内部の従事者たち」と話した。

こうした意味で吉桓永社長についてすべての構成員が同じ声をあげているのは鼓舞的だ。 KBSの幹部級の人物は「以前は本部労組だけがストライキをして、終わって戻れば同じ事が繰り返されたが、 今度は第1労組のストライキ決議でこれまでとは違うようだ」とし 「吉社長が辞任すれば過去のストライキと違って勝利して戻るわけなので、 記者やPDも気遅れせずにKBSを新しく組織していく可能性があるので、期待している」と話した。

彼は「セウォル号惨事がKBSのジャーナリストに与えた影響はとても大きい」とし 「これから現場でもっと抵抗できる余地も大きくなる」と付け加えた。

問題は「人」

KBSの支配構造を変えるのは容易ではない。 支配構造が変わっても、副作用がないとは限らない。 内部構成員らが報道や編成にさらに深く介入することも重要だが、 これを貫徹させるのも容易ではない。 公正な支配構造改善を実現することも重要だが、 結局はこれをどう運用するのかも問題だ。運用は結局、「人」の問題だ。

忠南大のキム・ジェヨン教授は 「KBSの本質的な問題は制度ではないだろう」とし 「それは一番簡単に思える代案だが、 それが実現しても変わるとは思わない」と話した。 キム教授は「支配構造改善の核心は、政界とのつながりを切ることだが、 そのためにはどうすればいいのかについては答がない」と話した。

キム教授は「キム・ジュンベ元MBC社長が 『手順を踏んだ民主主義は備えた。これからの重要な課題は資本からの独立』と話したが、 現在、政界の放送介入は第5共和国のようだ」とし 「結局、放送の公的領域はしっかり固めて行かなければならない」と話した。 続いて「公営放送の価値についての根本的な省察が必要だ」とし 「社会的共感があれば、政界もみだりに無視できないだろう」と話した。

聖公会大のキム・ソジュン教授は 「今、KBSの幹部らが見せている態度は、保守・進歩の問題ではなく、 政派的・政治的だ」とし 「今問題提起している若い層の人々も、 進歩的というよりも言論としての価値を備えられなかったことについての反省から始まった」と話した。

キム教授は「だから若い層への期待がある」とし 「KBS内の若い記者、若年層に機会を与える制度的変化が答ではないか」と話した。 続いて「何よりも慣行を作ることが重要だ」とし 「もし吉桓永が退出すれば、新社長がそれに劣らないかもしれないが、 問題があれば追い出せるという先例を残せる」と話した。

キム教授は「BBCは制度的に私たちにない伝統と経験がある」とし 「私たちはそうした経験を縮尺することが重要だ」と話した。 続いて「幹部陣を完璧に改編するのは不可能だ」とし 「だがすべての幹部がそうではない。 考え方は保守的でも、言論としての役割を知って、守ろうとする人は十分にいるだろう。 彼らが前面に出れば良い」と話した。

KBSのある中堅級記者は 「今回役職を返上した幹部らは、 吉桓永の辞任とは無関係に役職返上を翻意してはいけない」とし 「大々的な世代交代と人的清算が必要だ」と話した。

原文(メディア・オヌル)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作権:この記事の原著作権は、韓国のインターネット新聞メディアオヌルが保有しています。この記事はメディアオヌルの許可を得て翻訳・掲載したものです。本記事および文中の写真・図表の利用や転載などについてのお問い合わせはメディアオヌル宛にご連絡ください。


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