韓国:ナウコム社長拘束事態から見た著作権に対する2つの観点 | |||||||
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ナウコム社長拘束事態から見た著作権に対する2つの観点[コラム]政府に批判的な声を弾圧するために利用される著作権法
オ・ビョンイル(情報共有連帯IPLeft)/ 2008年06月19日11時54分
6月16日、利用者による映画ファイルの不法流通を助長、放置した疑いで、ナウ コム(ディレクターボックス、クラブボックス)、メディアネットワークス(Mファ イル)、アイソブ(ポルドプロス)、韓国ユビキタス技術センター(ウォンディスク)、 イ・ジウォン(ウィディスク)代表の5人が拘束されたという。特に(株)ナウコ ムのムン・ヨンシク社長が含まれているのは、最近ナウコムが韓米牛肉交渉に 反対するキャンドルデモの現場中継で人気を集めている「afreeca」の運営者 だという点で「政治目的の世論弾圧」ではないかという疑いが起きている。 検察は3月、「不法複製防止のための映画人協議会」から今回代表が拘束された 6つの業者を含む8つの業者への告訴を受け付け、捜査してきた。ナウコムの afreecaは捜査の対象でもなかったという。しかし多くのネチズンとマスコミが 指摘しているように、afreeca運営会社であるナウコムのムン・ヨンシク社長を 拘束したのは、インターネットでのキャンドルデモの拡散を防ごうとする幼稚 な政治弾圧である可能性が濃い。 著作権保護のための技術的な保護措置を取ってきたし、不法を助長する措置や 機能は提供していないというナウコムの釈明は別としても、オンライン著作権 問題の代表的な事例であるソリバダのケースでも拘束捜査はしなかった。逃走 や証拠隠滅の可能性も高くない人物にまで、あえて拘束捜査の必要があるのか という点で、過剰対応という非難は避け難い。 表現の自由を抑圧するために著作権法が利用された例は単に今回だけではない。 2000年には三美特殊鋼労働組合が浦項製鉄ホームページをパロディにした「ア ンチポスコ」サイトを製作したことに対し、浦項製鉄側が著作権違反で訴訟を 提起した(三美特殊鋼労働組合が「アンチポスコ」サイトを作ったのは、せいぜ い他人(浦項製鉄)の著作物を無断に利用して自身の経済的利益を得るためにだ というのか? ひどい訴訟であり、結局2001年に法院は「アンチポスコ」への 仮処分決定を取り消した。つまり、著作権違反ではないと判断した)。 海外でも似た事例は多い。コンピュータチップ製造会社のインテル(Intel)は、 自社のコンピュータチップのバグを暴いたサイトに文句をつけるために著作権 を利用した。intelのロゴをパロディにしたロゴをホームページで使ったという のだ。また、1999年にフォード自動車のある労働者が、会社は利用者にとって 非常に危険な不良を知っているのに、フォード自動車は措置しなかったという 内容の機密文書を入手し、ウェブサイトに掲載した。フォード自動車はISP(イ ンターネットサービス提供者)に著作権違反疑惑で抗議し、ISPはサイトを閉鎖 したという。 ところが、ナウコム社長の拘束は、たとえ政治的弾圧の側面があるということ とは別に、ナウコムをはじめとする企業が映画著作権侵害の疑いで告訴された のは「デジタル環境における文化創作物の著作権問題」から見ていることは明 らかだ。そして、こうした面でも私たちが考える地点が存在する。 著作物利用の活性化ための法的・公共政策的な装置は考量の対象ではない現実 2000年にソリバダをめぐり、デジタル環境における著作権が問題になった後、 オンラインでの著作権を保護する法制度的装置は継続的に強化されてきた。特 に最近では、著作物流通の責任のあるサービス提供者に著作権保護の責任を強 化したり、行政や司法制度による著作権保護の「執行」を強化する傾向を見せ ている。2006年にはすでにP2P、ウェブハードなど、特殊な類型のオンライン サービス提供者にフィルタリングなどの技術的な措置を取らせる著作権法改正 案が通過され、5月末の臨時国会では文化部の公務員に特別司法警察権を付与す る方案が通過、本格的に施行される9月からは著作権摘発がさらに強化される予 定だ。韓米FTA協定の知的財産権領域では、米国の主な要求事項である「効果的 かつ強力な執行規定」がほとんど受け入れられた。 このような現在の傾向は、著作権保護を重大な公益だと前提し、そのために第 三者のISPと公的機関も絶対的に服務しなければならないのと同じ様相だ。しか し著作権者の利益は一つの私益でしかなく、社会文化の発展という公益のため には、著作物の利用との均衡を図らなければならないという点で、現在の傾向 は明らかに偏向している。 OECD長官会議の事前行事として6月16日にCOEXで開催された市民社会-労働者 フォーラムでも、フィルタリングのような技術的措置を強制したり、利用者へ のモニターを要求するなど、著作権保護のためのISPの責任が日ごとに強化され ることに対し、国内外の市民社会活動家から多くの憂慮が提起された。著作権 保護に対する法的負担をISPに負わせることになると、ISPは利用者のインター ネット利用行為のモニターを恒常的に強化することになる。これは利用者のイ ンターネット利用を萎縮させたりプライバシーを侵害する可能性が高い。反復 的に著作権を侵害したと主張されれば、その利用者のインターネットアカウン トを削除しなければならないという権利者からの要求に対しても、「せいぜい」 著作権の違反に対し、オンライン空間での生命を剥奪するのは過度だという批 判が提起された。著作権保護がプライバシー権や接近権のような利用者の権利 を侵害する形で作動すべきではないということだ。また、ISPにフィルタリング などの過度な措置を要求することは、インターネットでの新しい技術とサービ スの革新を阻害しかねないという憂慮も提起された。例えば、P2Pファイル共有 が著作権侵害の憂慮が高いからといって、こうした技術の利用を制約すれば、 P2P技術に基づく新しいサービスの革新は不可能になるだろう。 商業的な目的で他人の著作物を悪意的に利用する人や業者を擁護したり、著作 権保護が不必要だと主張するのではない。ただし、著作権保護だけが絶対視さ れ、不法複製はまるで「破廉恥罪」であるかのように扱われていることに反し、 著作権規制の過程で侵害される他の価値(例えば、利用者の人権や技術革新な ど)や、著作物の利用を活性化する法的・公共政策的な装置は適切に考慮され ていないという点を指摘するのだ。 他人の著作物を許諾なく利用することが、無条件に破廉恥罪ではなく、社会的 な損失でもない。また、不法複製による権利者の被害だけが強調されているが、 過度な保護期間(例えば、50年といえば山川が五回変わる期間だ)、公的資源が 投入された著作物への利用制限(例えば、公営放送であるKBSのドラマを自由に 利用することができるだろうか?)、公正利用(Fair Use)の縮小(例えば、非営利 インターネット放送はもはや不可能だ)等、利用者の権利の侵害は努めて無視さ れている。事実、数千億に登る不法映画市場の規模と言っても、虚構的だ。不 法な映画のダウンロードを禁止すれば、すべての人が有料で映画を見ると仮定 する根拠がどこにあるのか。むしろ社会的に映画を享有する範囲が大幅に縮小 する結果を招くだけだろう。 韓国映画界は、スクリーンクォーター縮小に抗議して韓米FTA協定締結に反対す る闘争に連帯した。しかし、その韓米FTA協定は今、韓国映画界が大喜びするよ うな著作権強化規定を大幅に含んでいる。その著作権強化の規定が果たして誰 の利益のためにかも考えなければならないだろう。 著作権法が「権利者」と呼ばれる、事実上、文化企業の利益に服務していると いう点、そして企業偏向的な政府に批判的な声を弾圧するために著作権法が利 用されているという点が、今回の事例で同時に現れているのは偶然ではない。 翻訳/文責:安田(ゆ)
Created byStaff. Created on 2008-06-21 04:57:58 / Last modified on 2008-06-21 04:58:01 Copyright: Default このフォルダのファイル一覧 | 上の階層へ |