韓国:世界経済危機、WTOは必要か? | |||||||
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世界経済危機、WTOは必要か?[論説]自国産業保護、生存のためのチキンゲームが始まった
ホン・ソンマン(論説委員)/ 2008年12月15日20時54分
自由貿易、退潮? 多国間自由貿易の規範を議論するWTO(世界貿易機構)ドーハ開発アジェンダ (DDA)交渉がまた失敗に終わった。12月14日、WTO事務総長は最終的に今年の交 渉の決裂と終了を宣言した。もちろんこうした形の交渉決裂は初めての出来事 ではないが、最近の世界経済危機の拡散の中で、この出来事は異なる文脈で解 釈されている。いわゆる自由貿易の退潮だ。 グローバル経済危機の拡散以後、G7首脳会談、G20金融首脳会談、APEC首脳会議、 最近の韓中日3国首脳会談に至るまで、各国の首脳が集まる会議のたびにWTOの 早急な妥結を約束していた。たった1年間だけでも保護貿易措置を取らないとい う主要国首脳の宣言もあった。だが、結論は見てのとおりだ。ここに二国間自 由貿易協定(FTA)も各国別に弱まり、金融モデルの寵児と呼ばれたドバイの誠意 がこもった塔は崩れている。明白な自由貿易の退潮と見られる。 米国発、自動車産業保護 当初、米国の自動車3社に対する救済支援から保護貿易主義の憂慮が広がり始め た。GMなどの米国自動車業界に不況が訪れ、オバマ当選者と民主党は機会があ るたびに緊急救済をするべきという立場だった。先週末、米国の上院は140億ド ル規模の自動車救済案を否決した。だが米行政府は即刻金融圏に投入する7千億 ドルの一部を使う方案を検討すると明らかにした。問題は米政府当局の自動車 3社に対する支援がWTO補助金協定違反ということだ。 WTOの補助金協定によれば、補助金の類型は禁止補助金(Prohibited Subsidies)、措置可能補助金(Actionable Subsidies)、許容補助金 (Non-actinable Subsidies)の三つに分れている。輸出入のための政府補助金は すべて禁止補助金と規定されている。許容補助金は研究開発費や環境改善費な どが存在するが、これも1999年末に廃止された。現在、WTO補助金協定に違反 せず使えるのは措置可能補助金しかない。 措置可能補助金の場合、政府や公共機関が財政的な寄与をしてはならず、補助 金受給者に恩恵が与えられてはならず、特定の産業や企業を支援してはならな いという難しい条件が付いている。これを守っても、措置可能な補助金によっ て相手国が被害をこうむれば、制裁関税を賦課することができる。ヨーロッパ 連合のバロス執行委員長が、米国政府が自動車産業を支援すれば米国をWTOに提 訴すると警告したのもこうした理由だ。 世界経済危機とWTO だが、これは米国だけのことでないということに問題の深刻性がある。実物経 済が凍りつき、ヨーロッパとアジア、ロシアと各国で、政府補助金の形で特定 の産業への支援方案があふれ出ている。 ドイツ自動車産業協会会長は、米国に生産工場があるすべての業者への資金の 支援を主張し始め、EUに200億〜400億ユーロ(約72兆ウォン)規模の資金支援ま で要求した。フォルクスワーゲンは、ドイツ政府に5000億ユーロ規模の貸し出 し保証プログラムで自動車金融を支援するよう要請した。スウェーデン政府も 自国の自動車企業等を救済するために35億ドルの緊急支援方案を発表した。 半導体市場の不況が広がり、日本と台湾も政府支援を検討している。特に台湾 政府はメモリー半導体会社のために24兆ウォンを支援することにした。韓国で は、先日知識経済部のイ・ユノ長官がハイニックス半導体への政府支援を語り、 ハイニックス側の抗議でこれを訂正した(ハイニックスは2002年政府の公的資金 投入でWTOに提訴され、日本、ヨーロッパなどで制裁関税を受けた)。 WTO補助金協定の第11条は、(補助金協定違反の)政府または公共機関の財政的な 寄与を次のように規定している。無償貸し出しや株式参加と共に、政府が直接 資金支援をする場合、貸し出し保証などで資金または債務負担の潜在的な直接 移転、税額控除と共に、政府に支払われるべき歳入を放棄する場合、政府が商 品を直接提供または購入した場合と、政府の代わりに民間機関が上のような措 置を取る場合まで規定している。換言すれば、どんな形式でも特定の企業に対 して政府が財政的寄与をするのは補助金だということだ。 WTOはどこに? 問題はこれからだ。(輸出)商品を生産する企業と、産業に対する救済はすべて WTO協定違反になりうる。代表的に造船業種、石油化学企業、為替被害を受けた (輸出)中小企業への支援はすべてWTO協定違反になりかねない。今後経済危機が 広がるほど、特定の産業や企業への支援が増えるだろうが、同じ問題に直面す ることになる。韓国だけでなく、世界各国がこうした傾向に入り込む公算が高 い。 経済危機が広がっているのに自国産業の没落を見守ってばかりはいられないだ ろう。各国が数年以内に互いにWTOに提訴し、補助金協定違反が表面化すれば、 相互の間で補助金を禁止したり制裁関税を払わせることになる。もし相手国の こうした行為でまた報復関税をかけることになれば、1930年代に発生した関税 戦争も再発しかねない。それではWTO体制はこわれる。あれこれ考えてみると、 WTOは分裂の種だ。 生存のためのチキンゲーム 事実、自由貿易か保護貿易かは、虚構に近い議論だ。自由貿易機構であるWTO は、貿易関連の知的財産権協定(TRIPs)を扱いながら、特許や知的財産権を強化 するという新しい障壁を積み重ねた。多国間、両国間の貿易開放は、各国の大 企業と大資本がさらに自由に利益を追求するための貿易条件の変形だった。厳 密に言えば、これは一般的な自由貿易ではなく、企業自由貿易と呼ぶべきだ。 このように、自由貿易論者にも重要なことは『企業』だ。現在のような危機状 況で、自国産業保護論が提起されるのも、限界企業の清算に対する国家別の防 御のためだ。つまり、自国企業は清算できないという苦闘であり、行くところ まで行こうという意志の表現だ。 現在、先進国さえ、国内に海外資本誘致の試みが続いている。特に超国籍企業 の母国への生産が伸びている。最近、日本のソニーが中国から撤収した後、日 本国内での生産を増やしたのは、日本政府の支援のためだという。このような 形の生産が広がるほど、技術力やインフラが劣る国々では人件費を減らしたり 労働時間を延ばす形で労働費用を縮小するほかはない。 来年度の世界自動車生産量の3分の1に当たる3000万台が過剰だという。過剰生 産と過剰資本清算をめぐるチキンゲームは今始まった。しかし、さらに大きな 問題はこうした清算過程がどの程度になるのか、誰もわからないという事実だ。 翻訳/文責:安田(ゆ)
Created byStaff. Created on 2008-12-27 17:20:20 / Last modified on 2008-12-27 17:20:22 Copyright: Default このフォルダのファイル一覧 | 上の階層へ |