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News Item 20040803nowto
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  1. 08.03

国民行動事務局

8月1日、WTOドーハ開発議題交渉の基本骨格に合意

-全世界の民衆に対する攻撃、また本格化

8月1日未明(韓国時間)、スイスのジュネーブでWTO一般理事会が合意、閉幕した。 これでWTOは昨年、カンクンで開発途上国等の集団的反発と 全世界民衆の抵抗で合意に失敗したドーハ開発議題(DDA)の基本骨格を 用意することに成功して、今後の交渉に加速度を付けるようになった。

自由貿易協定と共に、WTOの本質は開発途上国経済の発展でもなく、 国民の生の向上でもない。 ‘自由貿易’は万人の自由ではなく、ひたすら少数の自由でしかない。 その少数のために、超国籍資本のために、多数を犠牲にすることが、 まさに新自由主義‘自由貿易’体制の原理である。 このような原理は今回の一般理事会で再度確認された。 ‘ドーハ開発議題基本骨格合意’は、 WTOを始めとする新自由主義的自由貿易体制が一歩前進する踏み台であり、 全世界民衆にとっては今後の危機と生の破壊を予告するものだ。

今回合意されたドーハ開発議題交渉の基本骨格 ─ 資本強大国の勝利

‘ドーハ開発議題’は、去る2001年にカタールのドーハで開催された閣僚会議で 発足したWTOの新しい交渉ラウンドの名称で、 WTOが社会的、経済的な‘開発’を重要視することを要求した 開発途上国の利害関係を反映するということでそう呼ばれる。 しかし、それ以後、開発途上国と最貧国の集団的反発と さらに強まる民衆の抵抗で確認されたように、 WTOは超国籍資本を背負ったまま開発途上国の関心事項を度外視してきた。 今回の合意文は、開発途上国の立場を大幅に反映したというが、 事実上、米国とヨーロッパ連合など、資本強大国の‘勝利’だと分析されている。 今年の下半期には米国貿易代表ロバート・ゼーリックと ヨーロッパ連合通商担当執行委員パスカル・ラミーの任期がどちらも終わるが、 米国とヨーロッパ連合は利害関係を譲歩するはずがない。

8月1日未明に合意された「ドーハ作業計画(Doha Work Programme)」は、 総括的な原則を扱う本文と事案別に具体化された四つの付属書で構成されている。 付属書Aは“農業細部原則を建てるための基本骨格”、 付属書Bは“非農産物市場接近細部原則を建てるための基本骨格”、 付属書Cは“サービス貿易特別理事会勧告事項”、 そして付属書Dは“貿易円滑化交渉のための細部原則”だ。

開発途上国がこの数年間、提起してきた特別優待措置(SDT)や履行などの ‘開発’関連の議題は合意文本文で相当な分量を占めているが、 実質的内容はドーハ閣僚会議合意事項を再確認したり、 もっと熱心にやろうという意志表明、または交渉時に考慮しようという提案など、 相変らず曖昧な状態に残されており、事実上リップサービスにすぎない。 その上、農業、非農産物市場接近(NAMA)、サービスなど、 合意事項の実質的な内容が開発途上国にとってむしろ不利だという点を勘案すると、 ドーハ「開発」議題の「開発」は無内容なものでしかない。

農業交渉の基本骨格は特に憂慮される。 国家別に敏感品目、または特別品目を設定できるようにしたことで、 開発途上国にわずかなモチと水を与えているように見えるが、 関税が高ければ高いほど大幅な引下げ(‘区間対方式’)、 特別品目に対する低率関税義務輸入物量(TRQ)免除恩恵の削除、 関税上限線の導入提起などの内容を含んでいる。 これは関税が高い開発途上国を攻略するものだ。 100%以上の品目が142、300%以上の品目は94に達する韓国の農業の場合、 深刻な打撃を受けるものと予想される。 また、合意文は施行された年に国内補助金をすべて貿易歪曲補助金と規定し、 総額20%削減するという内容を含んでいる。 韓国政府はこのような内容の合意文が出て二日後に、 果して国内補助金縮小条項が秋穀買上げ制廃止につながるかどうかさえ 不透明な状態で、秋穀買上げ制を来年から廃止するという内容の 糧穀管理法改正案を出した。WTOと模範生韓国政府の 「農業失脚」政策が改めて明確になった。 さらに合意文は、こうした補助金削減規定から米国とヨーロッパ連合が 抜け出す穴を用意している。 合意文は「会員国が貿易歪曲補助金の相当に大きな(exceptionally large)比率を ブルーボックス[生産制限直接支払補助金]に移転すれば、 全体的に不均衡的(disproportionate)な削減をしなくてもいいように 一定のの弾力性を付与する」と明示している。 これは米国とヨーロッパ連合の要求が露骨に文案に含まれたのである。 これで開発途上国の主な批判対象だったブルーボックスは、 米国とヨーロッパ連合の都合に合わせて変更され、 3200億ドル相当の貿易歪曲的補助金を維持し続けることができる恐れがある。 DDA農業交渉は、基本的に‘農産物関税完全撤廃’、 特に‘関税が高い開発途上国から攻撃’という目標に向かって走っている。 韓国の連合ニュースが報道したように、 今回の交渉は“開発途上国側に少しずつ譲歩した側面があるが、 全般的にはこれら双方(米国とヨーロッパ連合)に有利に展開したという分析が支配的”だ。 このように、DDA農業交渉は米国とヨーロッパ連合が 自国企業農を保護する余地を残しながら第三世界の小農と特別品目に対する 最小限の保護措置を‘不法化’している。 第三世界の農業と農民の生、そして韓国の食糧を 市場の原理、資本の論理にすっかり任せている。

非農産物市場接近(NAMA)、すなわち工産品関税について、 今回の一般理事会合意文は開発途上国の反発で、昨年 カンクンで合意に失敗したデルベズ案を基本枠組としている。 合意文によれば、やはり関税が高ければ高いほど引下げ幅を 大きくしなければならないという原則を闡明しており、 特にアフリカ政府は脱産業化と失業を非常に憂慮している。 一方、NAMAに対し“先進国と歩調を合わせた”という韓国政府は、 これらの措置が韓国工産品輸出を拡大したものだと自賛しながら 今回の交渉の大きな‘成果’と評価している。 しかしこれはあくまでも少数財閥のための成果でしかない。 農産物と工産品を‘対等交換をした’韓チリFTAでむしろ貿易赤字が深刻化した という事実を見てもわかるように、 第三世界に対する工産品輸出が増大するという証拠は何もなく、 もしそうだったとしても輸出増大による収益は絶対に労働者民衆に 返ってこないのが私たちの厳然な現実だ。 輸出物量と関係なく、製造業労働者たちの下請け化、 非正規職化が進められているではないか? また、韓国の工産品市場もまた大幅に開放しなければならないという点に対しては、 政府もマスコミも沈黙を守っている。

4つのシンガポール・イシューのうち、 輸出入手続きの簡素化を骨子とする‘貿易円滑化’についてのみ 交渉が行われるということは、この数年間、開発途上国が反対して 全世界の市民社会団体が闘争してきた結果だが、 貿易円滑化についても交渉することになったのは、 強大国の懐柔と脅迫によるものだったという点を記憶しなければならない。 そして合意文は残りの3議題(投資自由化、競争政策と政府調達透明性)に対し “ドーハラウンドの間は交渉しない”と明示することで 今後また再開する余地を残しておいている。

サービス交渉は、農業とNAMA、シンガポール・イシューの中で 特に注目されない中で少しずつ進展してきた。 現在譲歩要請案を提出した国家は66か国、第一次譲歩案を提出した国家は45か国で、 合意文は“第一次譲歩案を提出しない会員国は 可能な限り早期に提出する”と促す一方、 既に譲歩案を提出した国家に対しては “修正された譲歩案を2005年5月までに提出しなければならない”と明示している。 DDA交渉が今回の一般理事会を契機に弾みをつけ、 特に先進国資本の多大な関心事でもあるため、 譲歩案を巡って国家別に一対一の交渉を行う段階に来ている サービス交渉に加速度がつくものと予想される。 これはすなわち医療、教育、基幹産業、文化、水、生態など、 人間の基本的権利に対して深刻な攻撃が再開されることを意味する。 特に、これまで韓国政府が自主的に教育や医療開放を促進する 各種の法律を制定して、基幹産業私有化計画を提出している。 WTOが‘自発的自由化措置’を対価に付与する恩恵を期待して、 第二次譲歩案を提出すれば、 公共サービスに対する民衆の権利の抹殺は‘超国籍憲法’である WTOによって不可逆になる。

米国貿易代表のロバート・ゼーリックは8月1日付の報道資料のなかで、 「今日の決定は、地球的貿易における重大な進展だ。 カンクンで迂回があった後、われわれはWTO交渉をまた再開した。(…)次に われわれは貿易障壁をどれほど遠く、そしてどれほど早く撤廃するかについて、 制限速度を交渉する」と展望し、今回の合意文の本質を要約する。 「われわれは、地球的農産物貿易における歴史的改革に合意した。 工産品市場開放のための通路を用意した。 サービス市場を開放するための交渉を強化することに合意した。」

このように、‘開発’と何の関連もないドーハ開発議題を開発途上国は 何故受け入れたのだろうか? WTO内の強大国の脅迫と懐柔、非民主性と密室野合は広く知られている。 ドーハ閣僚会議では、米国がWTOに反発をする国家は‘テロリスト’と呼び脅迫して、 最近、英国政府は開発途上国に対して「影響力を発揮する」と脅した。 最初に会議場の席を蹴ったことでカンクン閣僚会議の崩壊を招いたケニアに対して、 7月21日、ヨーロッパ連合は6千万ドル相当の援助を撤回した。 「自由貿易が開発を持たらす」という虚しい幻想をいだいている 開発途上国政府を‘開発’というお世辞を通して交渉に応じるように強制し、 超国籍資本の利害関係に服務することを開発途上国に飲ませた。 そしてWTOを‘危機’から救出して政治的正当性を付与しのだ。 これに対する代価はそっくり民衆が追うことになる。 生存権を脅かされ、食糧と基本サービスに対する権利を剥奪され、 生態破壊による苦痛に耐えるのは、全世界の民衆だ。

韓国政府の‘二匹のウサギ’?

WTOは9月から細部原則交渉を始め、 交渉期限を1年延長して来年まで進めて、 2005年12月に香港で6次閣僚会議を開催して交渉を完了させる予定だ。

こういう日程の前に韓国政府は今後‘交渉戦略’に苦心している。 農業分野では‘開発途上国地位認定’を勝ち取るために、 そして第三世界工産品市場進出のための戦略に悩みながら 交渉に忠実に臨むものと見られる。そしてこれが「自由貿易」という大勢の中で 「国益」のためだと主張するだろう。 しかし政府が少し時間を稼ぐと言って、結局農業構造調整を進展させる限り、 経済成長の動力である輸出を拡大すると言って、 結局財閥の財布を篤実に満たしてやる限り、「国益」から「国民」が抜けている限り、 私たちの生を韓国政府の交渉には任せれられない有様だ。 結局WTOが根本的に阻止できない以上、 「底辺に向けた疾走」は止まないだろう。 もしWTOが今日明日にも解体できないとすれば、 百歩譲歩して真の「国益」のために交渉に臨むべきだとすれば、 最小限、国民の食べ物と公共サービス、国家基幹産業、生命体に対する 交易中断を要求しなければならず、 これらの分野がWTOから除外されるように交渉しなければなるまい。

今回の一般理事会はWTOの勝利に終わったが、決して闘いが終わったわけではない。 全世界の民衆は、ドーハ開発議題の基本骨格合意に驚きを禁じえず、 広範囲な対応を計画している。 特に、韓国をはじめとするアジアの市民社会団体、農民団体と労組は、 去る6月15日、ソウルで開催された‘アジア民衆社会運動会議’で WTOに対する持続的な対応と来年に予定された閣僚会議に対応するための 国際的な闘争を展開することを香港現地の団体と共に決意した。 韓国ではすぐにイギョンヘ烈士の自決1周年である来る9月10日に、 労働者・農民の大規模デモが予告されている。 この日は国際的な農民の連帯体であるビアカンペシナにより ‘国際闘争の日’として宣布された状態だ。 またサービス自由化に抵抗する公共部門の闘争も予定されている。 合わせて、WTOより“深く包括的な”自由化を試みる 二国間自由貿易・投資協定、そして経済自由区域を口実として 教育と医療を自由化しようとする試みに対抗するはずだ。 このように、今残されていることは、 全世界の民衆が団結してWTOに対するさらに強い闘争を展開し、 一般国民と民衆が中心に立つ代案を作りだすことだ。

原文

関連記事: ドーハ開発議題交渉中断!WTO一般理事会糾弾!

翻訳/文責:安田(ゆ)


Created byStaff. Created on 2004-08-06 18:51:21 / Last modified on 2005-09-05 05:17:28 Copyright: Default

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