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〔週刊 本の発見〕『シン・中国人―激変する社会と悩める若者たち』 | ||||||
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大国中国の苦悩する若者たち『シン・中国人―激変する社会と悩める若者たち』(斎藤淳子 著、ちくま新書、2023年)評者:内藤洋子
少子高齢化が一気に進んでいる。2016年に一人っ子政策を廃止し、180度転換して出産奨励策に舵を切ったが、その後も出生率は最低を記録し、結婚率は激減、離婚率も日本の倍に及ぶと聞くと、驚きを禁じ得ない。いったい中国の若者は今、どんな現実に直面し、どんな感情生活を送っているのか。ここに焦点を当てた現地ルポが本書である。著者は、北京在住28年。北京日本大使館に勤務して主に農村問題などの研究をした後、フリーライターとして現地の事情を様々なメディアに寄稿している。 1978年に改革開放路線に大転換した後、一気に高度経済成長の時代に突入し、180度世界観も変わる。文革世代の親のヒーローは毛沢東だったが、80年代後半から90年代生まれの若い世代は、外国文化にも触れ、全く違う価値観をもつ。農村にも市場経済の波は押し寄せ、都市部との発展の不均衡や経済格差、ジェネレーションギャップは、結婚事情に顕著に見られるようだ。
競争に乗り遅れまいと焦る世相を表す言葉「焦慮」が近年の流行語になった。他方、そんな画一的な競争人生にノーを言う若者たちも出てきて、「寝そべり族」も流行り言葉だという。 コロナ騒動の際には、全市民PCR検査、強制集団移送による隔離、店の強制閉鎖など水も漏らさぬ徹底した「ゼロコロナ」政策を敷いたが、遂に市民と経済が悲鳴を上げ、抗議デモも起こると、一夜にして政策転換、今度は「全員コロナ」の海に投げ出された、という。こうした突然の方向転換はしばしば起こるようだ。先の見えない不確実性に対応する中国人の知恵、逞しさ、したたかさは注目すべきところだ。 日本人の中国への好感度調査によると、8割強がマイナス評価だが、このルポを読み、視点を変えると、中国の悩める若者たちに親近感を覚える。この若い世代が今後、中国をどう動かしていくのかを、注視していきたい。 Created by staff01. Last modified on 2024-10-10 00:56:39 Copyright: Default |