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憎しみの連鎖を断ち切ろう!〜「九条」を世界に贈るプロジェクトが報告交流会

竪場勝司

 日本国憲法第九条の意義を世界に広め、条文を各国語で刻んだプレートを贈る活動に取り組んでいる、「九条」を世界に贈るプロジェクトが9月29日、東京都足立区内で報告交流会を開いた。世界各国の団体にプレートを贈呈してきた活動の報告があり、約50人が参加した。

「九条の碑」建立から「九条プレート」を世界に贈る運動へ

 プロジェクトのきっかけは、足立区の住民らでつくる「千住九条の会」が、2020年1月に国際ジャーナリストの伊藤千尋さんの講演会を開いたことだった。講演で「九条の碑」が国内外にいくつもあることと、東京にはまだ碑がないことを知った千住九条の会の人々は、同年11月に「『九条の碑』を建立する会」を結成。記者会見を開いて運動への協力を呼び掛けたところ、全国から計約600万円を超える寄付が集まった。これを基に22年6月、足立区柳原に球体をした「九条の碑」が設置された。

 碑の建立の運動では、九条の条文を刻んだ「九条プレート」も制作した。メンバーの話し合いの中で、プレートを海外にも贈ろうというプランが出て、「建立する会」の有志が23年4月、プロジェクトを立ち上げた。「九条プレート」は45センチ×45センチの大きさで、朝鮮語・中国語・英語・フランス語・スペイン語の各国語版も作った。これまでに世界20カ国、計40の平和団体などにプレートを贈ってきた。

九条を世界に広げ、憎しみの連鎖を断ち切ろう

 報告交流会では、伊藤千尋さん(写真)が「憎しみの連鎖を断つ〜今、九条を世界に広める意義」のテーマで講演した。伊藤さんは「イスラエルは世界でも珍しい軍事国家。高校を卒業すると女の子も含めて全員徴兵される。18歳から20歳という人生の一番多感な時期に、現に人殺しをやる。それが一生トラウマになる。イスラエルの攻撃で、今、『憎しみの連鎖』が続いている。攻撃するイスラエル、攻撃されて死者を出すパレスチナの人々、双方に深い憎しみがこびりついている」と指摘したうえで、「イスラエルでつい先日、50万人が反戦デモをした。軍事国家の中で50万人が『もう戦争をやめよう』と言う。これはすごいことだ。なぜこういうことが起きているのか。それは世界中の動きの一つの現れだ。今、ロシアとイスラエルに対して、世界で抗議デモが起きている。21世紀というのは、誰もが平和に生きる権利を持つ、そういう時代になったのだ。こんな殺し合いをしている場合ではない。イスラエルの人も、パレスチナの人も、そしてウクライナの人も、ロシアの人も、みんな平和に生きる権利があるのだ。これが世界の合意事項、今の世界の常識だ」と力を込めた。

 さらに1928年のパリ不戦条約から、45年の国連憲章、75年の生物兵器禁止条約、99年の対人地雷禁止条約、2021年の核兵器禁止条約までの歴史を振り返り、「こうやって着々と、人類は戦争をこの世からなくすという流れをつくってきた。そこから九条が生まれた。憲法九条がこの世に現れて77年、それは私たちの頭に根付いている。だから私たちは『やられたら、やりかえせ』、そういう発想はしない。戦争そのものをやめよう、そして憎しみの連鎖を断ち切ろう、こういう発想をする。九条を世界に広げれば、世界は平和になる。こういうことを、私たちは自分たちの体験に基づいて言うことができる。世界に九条を広める、それこそ、私たちが今やるべき歴史的使命だ」と語った。伊藤さんは全国各地に「九条の碑」をつくる運動が広がっており、来年5月3日には長崎にも碑ができることを紹介した。

「九条は大きな安全保障」

 報告交流会の後半では、プロジェクト代表の大谷猛夫さん、プロジェクト事務局の中田順子さん、日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会代表理事の吉田万三さん、ピースボートスタッフの橋本舞さんの4人が、各国で行なったプレートの贈呈活動について報告した。(*写真=コスタリカでの贈呈風景、左は伊藤千尋さん)

 吉田さんは23年11月にインドネシアにあるASEANの事務局を訪問して、プレートを贈呈した際、事務局の人から「私たちにとっても、九条は大きな安全保障だ」と言われ、印象に残ったこととして紹介した。

 橋本さんはピースボートの世界一周のクルーズの中で、ニューヨーク、南アフリカ、スペイン、フランス、アイスランド、カナダなどに寄港し、各地の平和団体などにプレートを贈ってきた模様について語った。

 プロジェクトでは今後もアウシュビッツ、ベトナム、ラオスなどへの贈呈を予定している。九条プレートの国内での普及にも取り組んでおり、普及価格6千円(送料、消費税込み)で販売している。

 申し込みは電話・FAX03-3882-3325、メールsinsekai@sage.ocn.ne.jpへ。


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