バス業界の闇に一石を投じたい〜国際興業バス運転士が国を提訴 | |||||||
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堀切さとみ(『バスドライバーにあこがれて』制作者) 8月7日、勤めていたバス会社でパワハラを受け、精神障害を発病した運転士が、労災認定を求めて東京地裁に提訴した。その記者会見が同日、司法記者クラブで行なわれた。 槙野圭さん(50)は2015年に国際興業バスに入社。幼いころからの憧れだった職業に転職した。しかし、入社した当初から指導運転士に胸ぐらをつかまれたり、制服が盗まれたりといった、暴行や嫌がらせが続いていた。
勤務して四年たったころ、「〇〇に手を貸すな。殺すぞ」と書かれた脅迫文を、個人のロッカーに入れられた。パワハラに苦しんでいた同僚運転士が裁判を起こしたのを、槙野さんが手助けしているという誤解によるものだった。引き続き、カッターの刃と共に「運転できなくしてやろうか」という二度目の脅迫文(下写真)が届いた。 生命の危険を感じた槙野さんが上司に報告したが、会社は何の対策もとらないどころか「被害届を出すと、会社にいられなくなるぞ」と脅してきた。槙野さんはバスの運転だけでなく私生活すらまともにできなくなり、2020年5月に鬱病と診断され、休職した。 槙野さんは2022年8月に解雇通告を受けている。仕事が原因で休職を余儀なくされた人を解雇することは出来ないにも関わらずだ。国際興業バスは、身体、生命への危険を槙野さんに味わさせるだけでなく、生計の手段をも奪ったのである。 槙野さんは2020年9月に、さいたま労基署に労災申請を出した。その後、国際興業バス労務課顧問の久保田氏から、槙野さんにLINEが送られてきた。 その内容は「過去の人脈で、労基さんへの根回しは済んでいますので、ご安心ください」というもの。何と驚いたことに久保田氏は、国際興業バスの管理課に送信すべきLINEを、間違えて槙野さんに送ってしまったのだ。 ちなみに久保田氏は元警視庁で、消費者金融「武富士」に個人情報を漏洩して懲戒処分された人物だ。その彼が国際興業バスの顧問になり、労災申請が認められないように働きかけたのは明白だった。 尾林芳匡弁護士は「『殺すぞ』という脅迫文など、これ以上重いストレスはないのに、なぜ不支給処分になったのか。ずっと疑問だったが、警察出身の顧問が根回しをしていたことが、労基署の判断に影響したのは間違いない」と見解を述べた。
槙野さんは「労基署に助けを求めてもダメなのかと思いましたが、そんな悪いことはしないだろう、味方になってくれるだろうと自分に言い聞かせていました」と、その時の心の内を明かす。しかし、最初の面談で、さいたま労基署の審査官は「会社から言われていると思いますが、生きていると労災は通りにくいですよ」と笑いながら言い、あげくに遠くの営業所に異動するように命じてきた。 レイバーネットテレビで、さいたま労基署審査官・三木誠一郎の録音データを槙野さんが公表したことで、埼玉労働局が白神・尾林弁護士の同席の下、槙野さんに直接謝罪をした。しかし「担当審査官の言い方がまずかった」というだけで、労災ではないという労基署の判断に誤りはないと繰り返すだけだ。 どのような準備を踏まえて謝罪が行なわれたのか開示請求したが、黒塗り状態の文書が送られてきた。(右写真)このことについても、合わせて審査請求していく構えだ。 槙野さんはいう。「国際興業バスは、小さなミスをしただけで長時間監禁され、退職届けを書かないと懲戒解雇するぞと迫って来る会社だ。退職に追い込まれた運転士は他にも沢山いるが『うちの会社は負ける勝負はしねえからな』と管理職が言っているんです」 バスの運転士にあこがれて入社し、一生懸命働いてきた労働者が、会社の暴力や脅迫によって病気にさせられる。そして、労働者が理不尽なめにあったとき、解決してくれる制度が崩壊しているという現実。 Created by staff01. Last modified on 2024-08-13 17:27:55 Copyright: Default |