太田昌国のコラム : 都知事選挙と詩人・川満信一氏の死に思うこと | |||||||
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都知事選挙と詩人・川満信一氏の死に思うこと都知事選挙が告示された6月20日のことだった。日頃から選挙の結果をほぼ的確に見通す知人の話を聞いた。仮にZと名づける。Zは政党政治の中で或る部署に就いているひとで、選挙の見通しについては、自民党が莫大な資金力を駆使して随時行なう世論動向の調査結果も、電通の「読み」などの情報も、ある程度漏れ伝わってくる場所にいるのだと思う。つまり、権力側の冷静な予想を探り当てる回路を持っているということだ。 Zの見立てはこうだった――小池リード、2位争いは、もと広島県安芸高田市長の石丸信二と蓮舫の競り合いだが、現状では石丸が抜け出ている。繰り返すが、これが告示日当日の予想だったのだ。 7月7日の選挙結果はこの通りになった。 小池/280万票、石丸/160万票、蓮舫/120万票である。選挙後に、まだZと会ってはいない。会えば、もっとリアルな話が聞けようが、ここでは、選挙予想では素人の私個人の思いしか書けない。 選挙運動も終盤に差し掛かって以降、ユーチューブには連日、蓮舫候補の街頭演説に大勢の人が集まっている様子が映し出された。もちろん、それらは、彼女を推すひとたちが懸命になって行なっている宣伝活動の一環だった。蓮舫候補の演説は、日を追って巧みになっているようにも思えた。それらを見ながら、私はふたつのことを感じた。 一つ目。聴衆の少なからぬ部分がペンライトを持ち、彼女の演説が終わると「蓮舫」コールを行ない、ペンライトを掲げる。さながらスターのコンサート会場のような雰囲気がつくられている。これでは、いくら大勢の人びとが集まっているとはいっても仲間内の集まりのようではないか。誰に投票するか、まだ心が定まらないままにとにかく候補者の演説を聞きたいだけのひとがそこにいたなら、そのひとはどんな思いを抱いたろうか。この傾向は、日々昂じていったように見えた。蓮舫候補自身も、現職が圧倒的な強さを示してきた過去の都知事選を思えば立候補を決断した時には不安だらけだったが、「ここへ来てようやく、相手の背中が見えてきた」と語り、大いに肉薄しつつあるとの実感を語っていた。立憲民主党には、Zのような、権力側が見立てている予測にアクセスできるような人物すら、いなかったのか。告示日にあの厳しい状況分析をなし得ていたなら、2週間有余の選挙運動の在り方を大いに工夫する余地があっただろう。 二つ目。応援弁士の顔ぶれには絶句した。野田、枝野、安住、志位、小池……立憲民主党と共産党の、古色蒼然たる男性国会議員の姿が目立った。 言うべきことばもない。 私は6月に或る所で行なった講演で「世界と日本の現在地」について語ったが、「憲法9条の77年」という年表を作ってみた。その年表は、無念なことに、9条の真髄が次第に骨抜きにされていきながら私たちがその流れを阻止できないという意味で、悔しくも哀しい事実の羅列になった。この流れは、2012年の第2次安倍政権の成立以降加速化されるのだが、今年2024年に起きている事項を書き連ねると、その異常さに改めて驚く。次期戦闘機共同開発条約承認案、自衛隊の「統合作戦司令部」創設のための関連法案、重要経済安保情報保護法案、共同親権を選べるようにする民法改正案など、「戦争か平和か」「人権」に関わる政府提出の重要法案に立憲民主党が次々に賛成した先の国会を思い起こせば、野田、枝野、安住……などの顔が、岸田、萩生田、小池……などの面々と重なって見えて、そこに何の違いがあるかとの思いがこみ上げてくる。わかりやすく、追及しやすい自民党議員の裏金問題に絞り込んで政府・自民党を批判したところで、そこには何らの「革新性」もないことが見透かされていたのではないか。国会が翼賛体制化している中での選挙は、地方選挙でも、争点の絞り方が難しいのだ。 話を変える。都知事選の10日ほど前、沖縄の詩人、川満信一氏が亡くなった。92歳だった。沖縄の「本土復帰」から10年足らずの1981年、川満氏は「琉球共和社会憲法C私(試)案」を発表した(「新沖縄文学」1981年6月号)。その前文で、氏は書いた――「九死に一生を得て廃墟に立ったとき、われわれは戦争が国内の民を殺りくするからくりであることを知らされた。だが、米軍はその廃墟にまたしても巨大な軍事基地をつくった。われわれは非武装の抵抗を続け、そして、ひとしく 国民的反省に立って「戦争放棄」「非戦、非軍備」を冒頭に掲げた「日本国憲法」と、それを遵守する国民に連帯を求め、最後の期待をかけた。結果は無残な裏切りとなって返ってきた。日本国民の反省はあまりにも底浅く淡雪となって消えた。われわれはもうホトホトに愛想がつきた。好戦国日本よ、好戦的日本国民と権力者共よ、好むところの道を行くがよい。もはやわれわれは人類廃滅への無理心中の道行きをこれ以上共にはできない。」 氏の訃報を聞いて、この憲法私案を読み返した。第一章で「国家を廃絶することを高らかに宣言する」この憲法私案は、選挙の次元に留まることのない、政治・社会像をめぐる〈未来からの問いかけ〉である。今回の選挙で蓮舫候補に投票した人びとこそが、ここに溢れるユートピア精神に触れて、政治や社会の在り方を根源的に捉え返すこと。ヤマトに対する、沖縄からの離縁状にひとしいこの「共和社会憲法C私(試)案」を深く読み込むこと。そこから感受できること、そして生まれるものが、今後のために深い意味を持つと私は思う。 【参考資料】 Created by staff01. Last modified on 2024-07-10 19:56:19 Copyright: Default |