〔週刊 本の発見〕『あなたはどこで死にたいですか?−認知症でも自分らしく生きられる社会へ』 | |||||||
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毎木曜掲載・第292回(2023/3/23) このままでは「介護難民」になる『あなたはどこで死にたいですか?−認知症でも自分らしく生きられる社会へ』(小島美里 岩波書店 2022年 2100円)評者:佐々木有美タイトルの「あなたはどこで死にたいですか?」は、重い問いである。まず死にたくはないのである。どうしても死ななくてはならないとしたら、それはどこか。考えをめぐらすと、この問いは、死に場所だけでなく、死へと至る道、つまり死ぬまでどう生きるか、生きたいかを問うていることに気づく。「健康寿命」ということばがある。元気でいられる年齢のことだ。統計によれば、この健康寿命と平均寿命の差は約10年。この10年間、わたしたちは体力の衰えや病気を抱えて生きなければならない。「ピンピンコロリ」と都合よく逝く人は稀だろう。介護保険法が施行されたのは2000年。「これで老後は安心」と政府はふれまわったが、それから20年余りたった今、現実はどうなったのか。それに答えたのが本書である。 著者の小島美里さん(写真下)は、私の住む埼玉県新座市議を経て、約30年間、地元で介護事業にかかわってきた。2003年に介護グループホーム「暮らしネット・えん」を設立。自宅が近いせいもあり、朝、自転車で出勤する小島さんの姿を見かけることもある。本書のカバーのことばは印象的だ。「85歳を過ぎると4割、90歳を過ぎると6割の人が認知症になると言われます。超高齢化社会を生きる私たちは、認知症になることを前提に、どこでなら安心して最後を迎えられるかを見極めなくてはなりません」。本書で小島さんは、現行の介護保険の矛盾を数々上げているが、その中の柱の一つが、この認知症の問題である。 現行の介護保険制度は、身体機能を中心に介護度が決められる。認知症のようにまだ自由に動ける時に「徘徊」や行動の混乱が起こる人たちは、介護度が低くなり、十分なサービスが受けられない。さらに、著者が繰り返し述べているのは、介護保険は黒字なのに、国は、介護サービスを切り下げ続けて来たということだ。たとえば、買い物・掃除・洗濯などの生活援助は1日1回45分。洗濯はできても干す時間がない。1日1回の食事介助では生きていけない。しかも同居家族がいれば、たとえ働いていても生活援助は受けられない。2021年には、身体介護にもサービス抑制が始まった。オムツ交換が1日2回になった。あとは自費でやれというのが国の態度だ。こうした状況で、料金が高くてサービスを受けられなくなる人も出てきている。何のための保険だろう。 介護ヘルパーの不足も大きな問題だ。2020年の求人倍率は約15倍。人が集まらないのは、ひとえに低賃金が理由だ。ヘルパーの月収は全産業の平均より59000円も低い。岸田内閣になって一律9000円の賃上げがあったが、それも一時しのぎにすぎない。さらに、連続する介護報酬の引き下げとコロナ禍が重なり、2020年介護事業所の倒産件数は過去最高にのぼった。知らないのは怖いことだ。介護をめぐる現状は驚くほどひどいことになっていた。このままでは、私たちは介護難民になるしかない。しかし、保険金を払ってきた私たちは、認知症になってもお金がなくても、まっとうな人間らしい介護サービスを受ける権利がある。43兆円の軍事費に比べれば何とささやかな望みだろう。 小島さんは、本書の最後を「政治をあきらめない」という言葉で結んでいる。私たちの老後を、介護を、まっとうなものとするのは、私たち自身であることに改めて気づかされた。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人、志水博子、志真秀弘、菊池恵介、佐々木有美、根岸恵子、黒鉄好、加藤直樹、わたなべ・みおき、ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2023-03-23 09:33:33 Copyright: Default |