〔週刊 本の発見〕『沖縄のことを聞かせてください』(宮沢和史) | |||||||
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毎木曜掲載・第287回(2023/2/9) 対談から沖縄が立体的に見えてくる『沖縄のことを聞かせてください』(宮沢和史 著、双葉社)評者:わたなべ・みおきTHE BOOMのボーカルとして「島唄」を作った著者が、その後関わり続けてきた沖縄との30年間を凝縮してエッセーとし、「復帰」50年を機に行った対談と合わせて収めた書。タイトルには聞かせてください、とあるが、本書を貫いているのは、著者がこれまで「島唄」を軸に音楽家として関わり、学んできた沖縄のことを、もっと多くの人に知ってほしいという強い思いである。 対談相手は、戦争の体験者から「復帰」を知らない1990年代生まれまで幅広い世代の人々で、沖縄本島や離島の人、今は県外に住む沖縄出身者や、県外出身で沖縄に住む人、親が県出身の人等、著者が紡いできた芸能関係を軸とした10人。 『あくまで僕という人間を媒介に、少しでも多くの人がこの島々の芸能に触れ、ただ明るいだけの歴史から生まれたわけではない文化の奥行きと、そこに営々と託されてきた人々の思い、島で言うところの「情け」の美しさを知ってほしい。』 唄三線(うたさんしん:琉球民謡)を習っている評者にとり、強く共感する思いだ。 対談は、「沖縄人お断り」と張り紙がされるなど、あからさまな差別があった「復帰」前後に、ボクシング世界チャンピオンになることで県出身者に勇気を与えた具志堅用高氏を皮切りに、民謡のこと(八重山民謡歌手:大工哲弘氏)や、芸能と地域のこと(演出家:平田大一氏、映画監督:中江裕司氏)、戦争を伝えることについて(元ひめゆり学徒隊:島袋淑子氏、ひめゆり平和祈念館館長:普天間朝佳氏)等と続き、そして最後に、若い世代が語る沖縄について(「あなたの沖縄コラムプロジェクト」主宰:西由良氏)で締められており、順番もよく考えられているし、どれも読み応えがある。 本書ではエッセー、対談とも普天間基地の「移設」問題は直接語られてはいない。だが、沖縄の、特に「復帰」後を生きてきた人にとって、相次ぐ米軍基地を巡る事件、繰り返される県民投票や全国から注目される選挙は、無きものとは出来ないのだと思う。 だから、さらりと語られるこれらの事柄についても歴史や祭祀、芸能の言葉と同様に「注」が付けられており、そのおかげで、「知らなかった」ヤマトンチュ(沖縄県外に住む日本人)や若い人も、読めば知ることができるようになっている。えてして、これらの事柄は、前提のように話されがちなので、こうした注を付けることは純粋に「知らなかった」人に「知ってもらう」上で、大切な工夫だと思う。 一方で、本文だけを読みこれらの注を読み飛ばすことも可能で、沖縄は観光地として大好きだが見たくない面は見ないという姿勢や、私はよく知っているから読む必要がない、という傲慢さに通ずるような気がしてちょっとゾッとしたのだが、書き記すことは、いつか誰かが読む可能性に希望を託しているわけで、また、記録としても大事なことだろう。 「島唄」発表後の30年間が、沖縄とヤマトの関係にとって大きな変化の時であったことが立体的に見えてくる力作だ。 一言では言い表せない沖縄の今を知ってほしいときは、本書を推薦しようと思う。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人、志水博子、志真秀弘、菊池恵介、佐々木有美、根岸恵子、黒鉄好、加藤直樹、わたなべ・みおき、ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2023-02-09 09:31:15 Copyright: Default |